加藤大吾
(公認会計士・税理士)
本連載では、税理士試験の簿記論・財務諸表論において、執筆者の指導経験上、誤答が多かった論点を取り上げます。【問い】に対する【解説】のなかに誤りを含む部分があるので、「ここが間違いじゃないかな?」と指摘してください。電卓をたたかなくても、スキマ時間に間違いさがしは可能です。この連載を解くことで、簿記の勉強はもちろん、実務において取引記録を見ながら誤りを発見するという職業体験もすることができます。ぜひチャレンジしてみてください。
【問い】
次の〔資料〕に基づき、当期末(X2年3月31日)の貸借対照表の繰越利益剰余金はいくらか、求めなさい。
〔資料〕
1.当期首(X1年4月1日)に保有する自己株式は100株であり、1株当たりの帳簿価額は200円である。また、その他資本剰余金の当期首残高は1,500円、繰越利益剰余金の当期首残高は20,000円である。
2.X1年7月9日に、保有する自己株式10株を消却した。
3.X1年12月20日に、自己株式70株を1株当たり300円で処分した。
4.当期純利益は5,000円である。
【解説】 ※誤りを含みます!
1.期中仕訳および決算振替仕訳
(1) 自己株式の消却
(借) その他資本剰余金 2,000
(貸) 自己株式 2,000
(借) 繰越利益剰余金 500
(貸) その他資本剰余金 500
(注1)自己株式:
10株×200円(1株当たりの帳簿価額)=2,000円
(注2)繰越利益剰余金:
2,000円(消却損)-1,500円(その他資本剰余金の当期首残高)=500円
(2) 自己株式の処分
(借) 現金預金 21,000
(貸) 自己株式 14,000
その他資本剰余金 7,000
(注1)自己株式:
70株×200円(1株当たりの帳簿価額)=14,000円
(注2)現金預金:
70株×300円(1株当たりの処分価額)=21,000円
(注3)その他資本剰余金:
70株×(300円-200円)=7,000円
(3) 当期純利益の計上
(借) 損益 5,000
(貸) 繰越利益剰余金 5,000
2.B/S繰越利益剰余金(解答の金額)
20,000円(当期首残高)-500円(負のその他資本剰余金の振替)+5,000円(当期純利益)=24,500円