日商簿記検定合格者の転職市場価値


【編集部より】
日商簿記検定の統一試験がさる11月17日に実施されました。取得した資格を武器に、キャリアチェンジを考える方も多いのではないでしょうか? 転職市場について、プロに聞いてみました。

会計職へのエントリーとして最適な日商簿記3級

Q CPAジョブズでは、日商簿記3級から応募できる求人を紹介されています。日商簿記3級は転職市場でどのくらい価値があるものでしょうか?

日商簿記3級は、取得しやすいですし、「会計職に就きたい」ということを端的に示せるいい資格です。やる気があることを示せますし、仕訳についてもある程度知っているということの裏付けにもなるので、仮に似たような年齢・能力の人材が採用時に並んだとしたら、日商簿記3級を持っている人のほうが評価されるでしょう。

未経験から会計職に就きたいのであれば、エントリーとして最適な資格だと思っています。もちろん、20代など若い方で、やる気があって元気な方であれば、資格は問われないでしょうが、「会計職に就きたい」というアピールは強いに越したことはありません。

「20代より上でも、簿記3級を取得して、未経験で会計職になれますか」と聞かれますが、お住まいの地域によっても違うので、一概には言えないのが実情です。東京は人が多い分、競争も厳しいです。未経験者が、最初から正社員で採用されるのは難しいかもしれません。

一方で、地方都市であれば、若い人が少ないので年齢が上がっても採用される可能性が高くなります。経理経験のない主婦の方や、30代の方でも会計事務所で正社員採用されるようなこともあります。

評価が高く、資格として「コスパ・タイパ」がいい日商簿記2級

Q 日商簿記2級は転職市場でどれくらいの価値がありますか?

「日商簿記2級以上」を条件としている会社はよくあります。日商簿記3級はあくまでもエントリーであり、ちゃんと評価されるのは2級以上でしょう。

転職者に人気があるのが、給料が高い事業会社の経理です。

事業会社にも上場企業・スタートアップ・外資系・金融などいろいろありますが、圧倒的に数が多いのが中小企業です。ただし、中小企業はどうしても人数が少ない中で経理を回すので、即戦力人材が求められがちです。日商簿記2級を取得したというだけでは、なかなか採用にたどり着くのは難しいのが正直なところです。

一方、人気の事業会社の経理にこだわらず、会計事務所や税理士法人に目を向ければ、採用可能性はグッと高くなります。

税理士試験の受験者数がピーク時より半減していたり(最近は上昇していますが)、業界の高齢化が進んでいたりしていることから、「可能性がある人」を採用する傾向にあります。

家庭や金銭的事情が許すのであれば、パートやアルバイトでもよいので会計事務所や税理士法人で1~2年経験を積むと、その次の転職時に事業会社の経理に正社員として採用されやすくなります。

実務経験を求められがちな日商簿記1級

Q 日商簿記1級はどうでしょうか?

日商簿記1級は非常に難しい試験です。持っていれば「おっ」となりますね。

学歴や転職回数など、履歴書の形式的なことを気にするような風土の会社であれば評価されるでしょう。ただ、どうしても世の中的には「日商簿記2級以上」という求人が多く、日商簿記2級にプラスして、経理の実務経験がある方と、日商簿記1級を持っているだけの未経験者では、圧倒的に前者が勝ちます。

「どうしても未経験から経理をやりたい!」というのであれば、日商簿記1級を振りかざすのではなく、「パートやアルバイトからのスタートでもいい」という覚悟で、会計事務所や税理士法人で、会計ソフトに仕訳を入力するところから何でもやって、ある程度の期間、しっかり業務経験を積んでいくのが良いと思います。そうすれば、日商簿記1級を取得できるくらい能力の高い人材なのですから、上手くキャリアアップ転職をして、給料も待遇もグレードアップさせていくことができる可能性があります。

また、日商簿記1級に加えて、Excelを使いこなせると、評価は高くなりますね。

日商簿記に+αするとよい能力

Q 会計職に就くのに、日商簿記にプラスしてどんな能力があれば評価されますか?

会計ソフトに強いといいですね。freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトはスタートアップでよく使われます。個人事業主を除くと、なかなか個人で触る機会は少ないでしょうから、CPAラーニングなどを利用していただければと思います。

URL:https://www.cpa-learning.com/

上記以外だと、弥生会計や勘定奉行などもよく使われていますね。このあたりもフォローしています。また、中小企業だと「経理」といっても、バックオフィス全般を担当することが多いです。労務管理や採用管理システムに強いのもいいと思います。

Q システムに強い方が好まれるのですね。

例えば、アパレル店員から経理になりたいという方よりも、システムエンジニアから経理職に転身したいという方のほうが採用されやすいと思います。どこの会社でもITリテラシーが高いことは評価される傾向にあります。

Google Workspaceの、ドキュメント、スプレッドシート、スライドなど、Googleの仕組みとか、その他の業務システムについてよくわかっているといいですね。

Q 英語とかは?

外資系企業の経理であれば、英語は必須です。逆に、高い英語力があれば、経理としての経験が浅くても採用される可能性があります。外資系の中小企業などであれば、難しいことは顧問の会計事務所や税理士法人が担当します。求められるのは、社内公用語である英語ができて、本国とのやりとりがスムーズな人です。英語は相当な武器になるでしょう。外資系企業を中心に扱う会計事務所やアウトソーサーなどもありますから、英語力は評価されます。

おわりに――日商簿記の勉強経験を実務に活かすために

Q 未経験でも会計職に就きたい!という方にアドバイスをお願いします。

日商簿記を勉強するだけでは、実務はできるようになりません。机上の勉強ももちろん大事なのですが、知識を実務に落とし込むことが必要です。

仕訳の記帳から帳票作成まで、「実際にどういうことが起きるのか」がイメージできるようになるといいと思います。CPAラーニングでは、無料でご利用いただける経理実務Virtual OJTという実務疑似体験型のコンテンツがありますから、ぜひそちらを活用していただければと思います。

Q 無料なのはすごいですね。

私たちCPAエクセレントパートナーズグループが目指すのは、勉強を起点とした生涯支援です。会計ファイナンス人材を増やすため、日商簿記や実務に関する動画や教材をすべて無料で提供しています。

そして、それに紐づく求人媒体であるCPA ジョブズでは、「未経験でもやる気のある人材を採用して育ててみませんか?」と採用側と交渉し、未経験でもできるだけ条件の良い質の高い求人を集める努力をしています。

そこで就職できた方は、経験を積むことで、会計ファイナンス人材特化型転職エージェント(CPASSキャリア)を利用して、キャリアアップしていけるでしょう。

このように、会計ファイナンス人材が『価値のある人財』となれるよう、一気通貫してサポートしています。

――ありがとうございました。

<お話を聞いた人>

中園隼人(なかぞの・はやと)
CPAキャリアサポート株式会社代表取締役
早稲田大学大学院卒業後、2003年に株式会社日本MSセンター(現株式会社MS-Japan:6539)に新卒で入社。2013年に取締役就任。士業の人材紹介事業の統括者として株式上場にも貢献。2020年にフリーランスとして独立。2021年よりCPAキャリアサポート株式会社に参画し、2022年に代表取締役就任。現在に至る。


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