会計人材の就活・転職トレンド2023 ~税理士法人編


【編集部より】
会計人材としてのキャリアをどう積んでいくか。「試験合格」を目標に日々、勉強に励む受験生にとって、ゆっくり振り返る時間はそう多くありません。
そこで、このたび重版することになった『会計人材のキャリア名鑑』(中央経済社)の筆頭執筆者であるCPAキャリアサポート株式会社代表取締役の中園隼人氏に、今年の採用活動の動きなどについて、監査法人編・税理士法人編・一般事業会社編の3パートにわけてお聞きします。

一般的な採用スケジュールと最近の傾向は?

Q 税理士法人や会計事務所における一般的な採用の流れはありますか。

基本的に通年で募集をしていることが多いですが、税理士試験後の8~9月、合格発表後の12月~翌年1月に大きな波があります。大手法人等では6~7月に採用イベントを実施していることもありますが、税理士試験の受験者数が減少しており、なかなか集客が難しいようです。

以前は、Big4系税理士法人への入所はハードルが高く、税理士試験2科目・3科目合格でも難しい場合がありましたが、今は、11月末の合格発表をうけて2科目合格程度になっていれば入所できるようになりました。また、高い英語力があれば、1科目合格でも入所できる可能性があります。

公認会計士合格者のうち大半は監査法人に入所しますが、中には、税理士法人に興味を示す人もいます。

Q 最近の特徴としてどのような傾向がありますか。

税理士試験の受験者数は2005年にピークを迎え、現在は半分程度になっています。今年度の税理士試験から受験資格が緩和され、その影響を受けて、簿記論・財務諸表論の受験者数は増えました。しかし、これまでの全体的な傾向としては、20代、30代の若年層の受験者は増えておらず、税理士の資格を取る最後の科目リーチをかけて40代以上が若干伸びているような状況です。

これまで、税理士法人や会計事務所が「若手を採用したい」と思った時の条件は、税理士試験の簿記論・財務諸表論に合格している人でした。ただ、若年層の受験者が減少しているので採用が困難になり、日商簿記2級合格者を採用しようという動きが起こりました。

そこに対して、私たちは今、さらなるポテンシャル人材として公認会計士試験の勉強をしていた人を据え、ここ2年程で会計事務所、税理士法人に伝え始めています。

会計人材として活躍したいというニーズは潜在的にも高い

Q 公認会計士試験から撤退した後のサポートとして、キャリア相談のときにそのようなご提案をされているのですか。

そうですね。合格後にはこんな道があるよと伝えることは当然として、不合格で失意のどん底にいるかもしれないけど、もし「資格」にこだわりたいのであれば、税理士を目指すこともできるし、とにかく働きたいのであれば会計コンサルファームでも上場企業でも可能性はあるよ、と。

さらにいえば、これからの世の中が変わっていくダイナミズムを感じたいのであれば、スタートアップ企業も視野に入ってくると思います。

現時点では、会計事務所や税理士法人のほうが受験生にとっても馴染みやすいでしょう。スタートアップに対しては、派手なイメージもあり、少しハードルが高いと捉えられる印象があることも感じています。ただ、そのギャップを埋められれば、もう少し会計人材の流動性が高まるだろうなとも考えています。

Q 比較するものではないかもしれませんが、税理士法人側から見た場合、税理士受験生と会計士受験生のどちらを採用したいという要望はあるのでしょうか。

基本的にはやはり税理士受験生を採用したいというのが本音です。ただ、Big4のように、国際税務の難しい案件があるところだと、地頭が良い人を採りたいはずです。公認会計士は要件を満たせば税理士登録もできるので、Big4系税理士法人は一定数、公認会計士を採用したいという要望があるとも思いますが、少数派ですね。

公認会計士は監査法人、税理士は税理士法人という棲み分けでしたが、税理士や税理士受験生、特に若年層を採用したくてもできないので、公認会計士に合格できなかったけど会計人材として活躍したいと考えている人の採用にも視野を広げてはいかがでしょう、というのが私たちからの提案です。

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Q 『会計人材のキャリア名鑑』には指標の1つとして、給与水準も示されていますが、公認会計士試験や税理士試験の受験生の場合は、どんな水準が目安でしょうか。

監査法人の場合は約500万円+残業手当が相場です。大きい会計事務所は350万円~、会計コンサルファームが450万円~ですが、町の会計事務所は採用自体がそもそもあまりなく、あっても300万円~という印象です。

給与水準というのは、その業界で出せる金額がほぼ決まっているので、そもそも水準の高くない業界に入ってしまうと、それ以上は出せないのですよね。

「自分は公認会計士だから700~800万円出してください」といっても、町の会計事務所では350万円だったら採用するよという世界。だから、就職先に給料以外の他の価値を見出せなければ、転職に失敗する場合が高くなってしまうので注意しましょう。

(「一般事業会社編」へつづく)

<お話を聞いた人>

中園隼人(なかぞの・はやと)

CPAキャリアサポート株式会社代表取締役
早稲田大学大学院卒業後、2003年に株式会社日本MSセンター(現株式会社MS-Japan:6539)に新卒で入社。2013年に取締役就任。士業の人材紹介事業の統括者として株式上場にも貢献。2020年にフリーランスとして独立。2021年よりCPAキャリアサポート株式会社に参画し、2022年に代表取締役就任。現在に至る。


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