諸角 崇順
【編集部から】
会計人コースWebの記事を解析すると、税理士試験・会計士試験ともに独学での学習法についてPV(ページビュー)が非常に多いです。でも、独学の場合「いつ・何を・どう勉強していけばよいか」を自分自身で考えて実行しなければならず、この点が受験生の大きな悩みどころではないでしょうか。
そこで、本連載では、敏腕講師のかえる先生(諸角崇順先生)に、主に独学で税理士試験の簿記論・財務諸表論の学習をスタートする方、もしくは前回の試験までは専門学校を受講していたものの次回は独学で再チャレンジしようという方に向けて、毎月1回、その時々で実践すべき学習内容を提示して合格をナビゲートしていただきます(毎月1日更新予定・23年8月1日まで全11回予定)。
独学の方はもちろん、専門学校の講義を受講している方も是非参考にしていただければと思います。
それでは今月の学習ナビゲーション、スタート!
ラスト1ヵ月で得点力は上がる!
みなさん、こんにちは! そろそろ受験票がみなさまの手許に届く頃でしょうか。受験票が届けば、今まで以上に「やるぞ!」という気持ちになると思います。
本試験まで約1ヵ月。ここまでくれば、模試以外は、新しい教材(テキスト、問題集など)には手を出さず、今まで使ってきた教材に対する完成度を高めていってください。
そして、第4回の記事でも書きましたが、試験会場近くでの前泊を考えている方は、早めに部屋を押さえるようにしてください(環境のよいホテルはすぐに満室となってしまいます)。
今年はコロナ禍が明け移動制限も解除されていますので、ホテルの価格もかなり上がってきています。早期予約だと多少ですが割引されるホテルもあるので、とにかく早めに動きましょう!
※ 受験票は、6月30日(金)以降、順次郵送されますが、7月12日(水)までに届かなければ、受験を申し込んだ国税局等に問い合わせてみてください。
また、全国模試を受験された方は、そろそろ結果も届き始めるかと思いますが、基本的に、独学の方は合格判定を気にする必要はありません。
この大手資格学校が実施する全国模試は自校の生徒が有利となります。大手資格学校では4月~5月から直前期に入り、答練(今年の本試験を想定した自校内模試)が毎週実施されるのが一般的です。
もちろんですが、この答練は、本試験に出題されそうな項目を予想して作成されます。全国模試が実施される6月中旬までに、5、6回は自校内で答練が実施されるわけですが、その自校内で実施された答練に出題された内容を考えると「あれ? どう考えても、今年に出題される可能性が高いあの論点まだ答練で出てないやん。さては、全国模試で出すんやな」と、ある程度、全国模試で出題される内容が予想できてしまうからです(特に理論のある科目)。
私も受験生の頃、通っていた資格学校でAランクとされている理論なのに「なんで答練で出さないのだろう?」と不思議に思っていました。そして、全国模試の問題を見て気付きました。「あっ!! 全国模試のためにとってあったんだ!!」と。
ということで、独学の方は、そういった事前情報がないわけですから、最初から不利な状況となっています。それに、初学者は、全国模試後の1ヵ月でめちゃくちゃ得点力が上がります。実際に私は受験生のとき、6月中旬に行われた大手資格学校の全国模試でC判定(当時はA~D判定しかなかったので、下から数えたほうが早かった)でしたが、本試験では資格学校の発表するボーダーを30点以上上回る点で合格できました。ここからが勝負です! 一気に追い込みをかけていきましょう!!!
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それでは、科目別のお話しをします。
簿記論・財務諸表論共通―1つだけ上のレベルの問題を復習する
本当の直前期となりましたので、今後は、模試や今まで使ってきた問題集等であっても、間違った問題に対する解答解説を見ても理解できない論点は復習しないようにしましょう。
「え? 復習しないの?」と思われるかもしれませんが、著者や資格学校の講師が懇切丁寧に作った解答解説を読んでも理解できない、ということは、その問題は、今のあなたの3つも4つも上のレベルの問題ということになります。
当然、そのレベルの問題は、本試験で「とばす」ことになる問題です。本試験で「とばす」ことになる問題、直前期の貴重な時間を割いてまで復習する必要性がどれほどあるでしょうか。それよりも、間違った問題の解答解説を見て、一瞬で「あっ! こう解けば良かったのか!」と思えた、今のあなたの1つだけ上のレベルの問題の復習に時間を割きましょう。
そのレベルの問題は、本試験でも確実に点を取りに行く問題です。必ず、自分のものにしましょう!
簿記論―全体を学習した今だからこそ重点を置くべきポイント
先月の記事で、テキストの精読をオススメしました。直前期になっても、簿記一巡が理解できていなかったり、こだわらなくていいところにこだわりすぎて視野が狭くなったりしている受験生にとっては、目からうろこだったと思います。
そのテキストで初めて学習したときはたいしたことない、と思っていた論点でも、全体を学習した今だからこそ大切さに気付いたところもあったと思います。
逆に、初めて学習したときは、ものすごく重要、と思っていても、全体を学習した今から見たら些細な論点だった、ということも。全体を学習した今、重要と感じたところを重点的にやっていきましょう!
1週間あたりの勉強時間の目安:25時間前後
財務諸表論(計算)―苦手論点を1つでも多くなくす
全国模試までにいったん仕上げたと思いますが、全国模試を受けることによって足りない部分に気付いたと思います。
本試験までの期間、「あそこが出たらイヤだな」と思う論点を集中して復習しましょう。「出たらイヤだな」=苦手論点、だからです。
すでに90%の完成度となっている論点(いわゆる得意論点)の完成度をさらに5%あげるのは至難の業ですが、完成度が40%の苦手論点であれば、ここから完成度をさらに20%あげることもそこまで難しいことではありません。
計算で取りこぼすと合格が遠のきます。とにかく苦手論点を1つでも多くつぶしましょう。
1週間あたりの勉強時間の目安:15時間前後
財務諸表論(理論)―暗記の精度を極限まで高める
本試験まで約1ヵ月。1週間で1回転をメドに理論を回しましょう!
本試験まで2週間となれば、3日で1回転。とにかく、理論に触れる時間を増やします。そして、「意義」など一字一句完璧な暗記が求められる部分の精度を極限まで高めておきましょう。
ここまできたら、各理論のつながりとか理解が重要とか言っているヒマはありません。理解できないなら丸暗記! みなさんは学者になるための選抜試験を受けるのではありません。
とにかく合格するためには、この時期、ある程度の割り切りも大切です。考え込む時間があるなら、その分、丸暗記に費やしてください。がんばって!!
1週間あたりの勉強時間の目安:20時間前後
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第11回は8月1日(火)にUP予定です。
試験に向けて、諸角先生からの応援メッセージをお届けします!
<執筆者紹介>
諸角 崇順(もろずみ・たかのぶ)
大学3年生の9月から税理士試験の学習を始め、23歳で大手資格学校にて財務諸表論の講師として教壇に立つ。その後、法人税法の講師も兼任。大手資格学校に17年間勤めた後、関西から福岡県へ。さらに、佐賀県唐津市に移住してセミリタイア生活をしていたが、さまざまなご縁に恵まれ、2020年から税理士試験の教育現場に復帰。現在は、質問・採点・添削も基本的に24時間以内の対応を心がける資格学校を個人で運営している。
ホームページ:「かえるの簿記論・財務諸表論」
【連載バックナンバー】
第1回(10月の学習ナビ)
第2回(11月の学習ナビ)
第3回(12月の学習ナビ)
第4回(1月の学習ナビ)
第5回(2月の学習ナビ)
第6回(3月の学習ナビ)
第7回(4月の学習ナビ)
第8回(5月の学習ナビ)
第9回(6月の学習ナビ)
第10回(7月の学習ナビ)
第11回(8月の学習ナビ)
【書籍紹介】