長島 正浩(茨城キリスト教大学教授)
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Q1 概念フレームワークでは,投資のポジションと成果を表すため,貸借対照表及び損益計算書に関するどのような構成要素を定義しているか。
A
資産や負債,純資産,株主資本,包括利益,純利益,収益,費用が定義される。
*概念フレームワーク3章2項
『「投資のポジション」→「財政状態」 「投資の成果」→「経営成績」』(桜井23版,40頁,42頁)
Q2(空欄補充)
概念フレームワークでは,構成要素の定義を確定する作業を容易にするため,かつ( ① ) を尊重して,まず資産と( ② )を定義している。資産総額のうち負債に該当しない部分は,すべて( ③ )に分類される。これと同時に,純利益を重視して,これを生み出す投資の正味ストックとしての( ④ )を,( ③ )の内訳として定義している。その結果, ( ③ )には( ④ )に属さない部分が含まれることになる。
A
① 国際的な動向
② 負債
③ 純資産
④ 株主資本
*概念フレームワーク3章18項
『純資産のうち株主資本に属さない部分として株式引受権や新株予約権がある』(桜井23版,251頁)
Q3(空欄補充)
投資の成果を表す利益の情報は,( ① )を評価する際の基礎となる将来キャッシュ・フローの予測に広く用いられている。利益情報の主要な利用者であり受益者であるのは,報告主体の( ① )に関心を持つ当該報告主体の(現在及び将来の)所有者である。そのような理解に基づいて,純利益に対応する( ② )を,報告主体の所有者に帰属するものと位置付けている。
A
① 企業価値
② 株主資本
*概念フレームワーク3章19項
『株主資本=純利益を生み出す投資の正味ストック』
Q4(空欄補充)
( ① )のうち,( ② )以外の部分には,子会社の非支配株主との直接的な取引で発生した部分や投資のリスクから( ③ )された部分のうち子会社の非支配株主に割り当てられた部分,報告主体の将来の所有者となり得るオプションの所有者との直接的な取引で発生した部分,投資のリスクから( ③ )されていない部分が含まれる。
A
① 純資産
② 株主資本
③ 解放
*概念フレームワーク3章20項
『「投資のリスクからの解放」→「実現原則や実現可能性原則」』(桜井23版,79頁)
Q5 資産,負債,純資産とは何か?
A
資産とは,過去の取引または事象の結果として,報告主体が支配している経済的資源をいう。
負債とは,過去の取引または事象の結果として,報告主体が支配している経済的資源を放棄もしくは引き渡す義務,またはその同等物をいう。
純資産とは,資産と負債の差額をいう。
*概念フレームワーク3章4項,5項,6項
『「経済的資源」→「用役潜在力(service potentials)」』(桜井23版,84頁)
Q6 収益,費用とは何か?
A
収益とは,純利益または非支配株主損益を増加させる項目であり,特定期間の期末までに生じた資産の増加や負債の減少に見合う額のうち,投資のリスクから解放された部分である。
費用とは,純利益または非支配株主損益を減少させる項目であり,特定期間の期末までに生じた資産の減少や負債の増加に見合う額のうち,投資のリスクから解放された部分である。
*概念フレームワーク3章13項,14項
『収益は経済活動によって企業に流入した価値であり,費用はその過程で消費されて企業から流出した価値である!』(桜井23版,72頁)
Q7 包括利益,純利益とは何か?
A
包括利益とは,特定期間における純資産の変動額のうち,報告主体の所有者である株主,子会社の非支配株主,及び将来それらになり得るオプションの所有者との直接的な取引によらない部分をいう。
純利益とは,特定期間の期末までに生じた純資産の変動額のうち,その期間中にリスクから解放された投資の成果であって,報告主体の所有者に帰属する部分をいう。純利益は,純資産のうちもっぱら株主資本だけを増減させる。
*概念フレームワーク3章8項,9項
『株主資本の期中変化をもたらすのが当期純利益であるのと同様に,純資産額の期中変化をもたらす利益こそが包括利益(comprehensive income)である』(桜井23版,300頁)
Q8 包括利益と純利益との関係を説明しなさい。
A
包括利益のうち,(1)投資のリスクから解放されていない部分を除き,(2)過年度に計上された包括利益のうち期中に投資のリスクから解放された部分を加え,(3)非支配株主損益を控除すると,純利益が求められる。
*概念フレームワーク3章12項
『当期純利益+その他の包括利益=包括利益』(桜井23版,46頁)
◎復習しましょう!
1.CF計算書
2.一株当たり当期純利益
3₋1.金融商品会計①‐⑦
3₋2.金融商品会計⑧‐⑭
3‐3.金融商品会計⑮‐⑳
4-1.棚卸資産会計①‐⑥
4-2. 棚卸資産会計⑦‐⑫
5‐1.収益認識会計①‐⑦
5₋2.収益認識会計⑧-⑫
6.リース会計①‐⑥
7.固定資産の減損①‐⑩
8.ソフトウェア会計①‐⑥
9.研究開発費会計①‐⑦
10.繰延資産①‐⑦
11.退職給付会計①‐⑥
12.資産除去債務①‐⑥
13.税効果会計①‐⑥
14.ストック・オプション会計と役員賞与(報酬)会計①‐⑧
15.自己株式①‐⑦
16.準備金の減少①‐⑥
17.純資産の部の表示①‐⑦
18.株主資本等変動計算書①‐⑤
19-1.企業結合会計①‐⑦
19-2.企業結合会計⑧‐⑫
20.事業分離会計①‐⑤
21.連結会計①‐⑥
22.外貨換算会計①‐⑤
23.過年度遡及会計①‐⑥
24.包括利益①‐⑤
〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師,会計事務所(監査法人),証券会社勤務を経て,専門学校,短大,大学,大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後,松本大学松商短期大学部准教授を経て,現在に至る。この間35年以上にわたり,簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。
*本連載は,『会計人コース』2020年1月号付録『まいにち1問ポケット財表理論』に加筆修正したものです。