諸角 崇順
【編集部から】
会計人コースWebの記事を解析すると、税理士試験・会計士試験ともに独学での学習法についてPV(ページビュー)が非常に多いです。でも、独学の場合「いつ・何を・どう勉強していけばよいか」を自分自身で考えて実行しなければならず、この点が受験生の大きな悩みどころではないでしょうか。
そこで、本連載では、敏腕講師のかえる先生(諸角崇順先生)に、主に独学で税理士試験の簿記論・財務諸表論の学習をスタートする方、もしくは前回の試験までは専門学校を受講していたものの次回は独学で再チャレンジしようという方に向けて、毎月1回、その時々で実践すべき学習内容を提示して合格をナビゲートしていただきます(毎月1日更新予定・23年8月1日まで全11回予定)。
独学の方はもちろん、専門学校の講義を受講している方も是非参考にしていただければと思います。
それでは今月の学習ナビゲーション、スタート!
全国模試を積極的に受験して、本試験までの時間を有効活用しよう!
みなさん、こんにちは! すでに受験申込みも終わり、本試験日をイメージさせるような暑さになってきました。
この時期は体調を崩される方が増えてきます。屋外と屋内の温度差に対応できるよう、いつも上に羽織れるものを持ち歩き、エアコンで身体を冷やしすぎないようにするとともに、しっかり食べて(梅雨時なので賞味期限には要注意!)、しっかりと睡眠をとるようにしておきましょう(まだ睡眠時間を削ってまで追い込む時期ではありません)。
受験申込みが終わると、あとは受験票が届くのを待つことになりますが、『税理士受験案内』の記載によると、発送は6月30日から順次行われることになるようです。お住まいの地域の関係やゆったりとした気持ちで本試験当日の朝を迎えたい方は、試験会場近くでの前泊を考えられると思います。その際は、以前の記事で書いたホテル選びの基準を参考に、早めに部屋をおさえるようにしてください(環境のよいホテルはすぐに満室となってしまいます)。
また、6月は大手資格学校で全国模試が実施されます。独学の方は、今、自分が全国の受験生全体の中でどの位置にいるのかがつかめていないと思います。この全国模試を受験することで、「自分が上位何パーセントのところにいるのか」を把握し、本試験までの時間を有効に活用するようにしましょう。
そして、模試を受験する際は、なるべく自分が受験する科目の時間帯と近い時間帯で受験しましょう。そうすることで本試験当日の予行演習ができると思います。
申込み締切日の近い資格学校もありますが、ぜひ複数の資格学校で全国模試を積極的に受験してみてくださいね。
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それでは、科目別のお話しをします。
簿記論・財務諸表論共通ー手元の教材を完璧に仕上げよう!
上述のとおり、6月には大手の資格学校で全国模試が実施されます。その全国模試が終わったら、模擬試験問題集以外は新しい教材に手を出さず、今まで苦楽をともにしてきた慣れ親しんだ教材の完成度を高めていってください。
いくつものテキストや問題集に手を出し、どれも完璧に仕上げていない状況で本試験に臨むと、本試験の2時間の中で不安な気持ちにおそわれたとき、その不安な気持ちを拭い去れないまま試験時間終了を迎えてしまうことになるからです。
本試験の2時間、誰にも質問できない、ネットで調べることもできない、そんな孤独な状況の中、解けない問題が現れ不安な気持ちにおそわれたとき、立ち直るきっかけを与えてくれるのが「あのテキストと問題集は完璧に仕上げた! つまり、試験に必要な知識は全て手に入れたんだ! だから、この解けない問題は誰も解けないはずだ!」という自信です。
いくつものテキストや問題集に手を出したけど、どれも完璧に仕上げてなかったら「この問題解けないけど、ひょっとしたら、あのテキストのあそこに書いてあったのかもな…。どうしよう、他の受験生は解けてしまうかも…」ということになり、よほどメンタルの強い受験生でもない限り、たった2時間で不安におそわれたその気持ちを立て直すことは不可能です。
そうならずに済むよう、今、お使いのテキスト・問題集を完璧に仕上げてください。本試験中、不安なあなたを支えてくれるのは、使い込まれたテキスト・問題集と「これだけやったんだ」という自信です。
簿記論ーテキストを精読し、簿記一巡を理解しよう!
簿記論だからこそ重要なのですが、このタイミングでお使いのテキストを精読してほしい、ということです。「は? なに言っているの?」と思われるかもしれませんが、この直前期になっても、簿記一巡の流れを知らない受験生が本当にたくさんいます。
テキストの最初に書いてあることの多い簿記一巡ですが、最初に書いてあるが故に、簿記に関する知識が浅い時期に学習することとなり、消化不良のままにしている受験生が多いのです。ですが、簿記論に合格するためには、この「簿記一巡の理解」が必要です。今のみなさんの実力なら、きっと理解できるはずです。
その仕訳が1年という会計期間のどのタイミングで行われるのか、そして、主要簿や補助簿にどのような影響を与えるのか、それを再確認してほしいと思います。
1週間あたりの勉強時間の目安:18時間前後
財務諸表論(計算)ー6月の全国模試までに全範囲を復習しよう!
簿記論でも言えることですが、計算に関しては、6月の全国模試を本試験と想定して、その全国模試の日までにいったん全範囲の復習を終えてしまいましょう。それぐらいのペースで前倒ししていかないと、とても本試験の日に間に合いません。
計算に関しては(簿記論も計算なので)、全国模試までに完成させることを目標にガンガン問題を解きまくってください。
1週間あたりの勉強時間の目安:10時間前後
財務諸表論(理論)ー自分が使っているテキストを信じよう!
この時期、SNS等で試験委員の話題を目にすることもあるかと思います。ただ、試験委員の学説を追いかける必要は以前ほどありません。
令和3年度の本試験から試験委員が大幅に増員されましたが、おそらく、作問担当の試験委員が作成した問題のチェックなどを他の試験委員がされているか、もしくは、最初から複数名で協議しながら作成されているのだと思います。このような体制となったことで(国税庁のホームページで最近の本試験問題を見ていただければおわかりになると思いますが)、試験委員の学説に偏った奇問が減っている印象です。
なので、試験委員の著書を購入し、読み込んだりする必要はありません。お使いのテキストに載っている一般的な多数説で解答すれば大丈夫です。根拠のない噂で不安になったりしないよう、自分が使っているテキストを信じてがんばってくださいね!
1週間あたりの勉強時間の目安:15時間前後
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第10回は7月1日(土)にUP予定です。
ご期待ください!
<執筆者紹介>
諸角 崇順(もろずみ・たかのぶ)
大学3年生の9月から税理士試験の学習を始め、23歳で大手資格学校にて財務諸表論の講師として教壇に立つ。その後、法人税法の講師も兼任。大手資格学校に17年間勤めた後、関西から福岡県へ。さらに、佐賀県唐津市に移住してセミリタイア生活をしていたが、さまざまなご縁に恵まれ、2020年から税理士試験の教育現場に復帰。現在は、質問・採点・添削も基本的に24時間以内の対応を心がける資格学校を個人で運営している。
ホームページ:「かえるの簿記論・財務諸表論」
【連載バックナンバー】
第1回(10月の学習ナビ)
第2回(11月の学習ナビ)
第3回(12月の学習ナビ)
第4回(1月の学習ナビ)
第5回(2月の学習ナビ)
第6回(3月の学習ナビ)
第7回(4月の学習ナビ)
第8回(5月の学習ナビ)
第9回(6月の学習ナビ)
第10回(7月の学習ナビ)
第11回(8月の学習ナビ)
【書籍紹介】