連結会計の仕訳に強くなる超基礎トレーニング【第4回】資本連結:支配獲得後の会計処理①


関口高弘
(公認会計士)

【編集部より】
会計人コースWebの読者アンケートによると、「連結会計」をマスターしたいという声がちらほら。日商簿記2級でも定番論点の一つとなり、会計士・税理士試験など会計系資格の合格を目指す人にとって避けて通ることのできない論点です。
そこで、本連載では、『連結会計の計算に強くなる3ステップ式問題集』の著者である関口高弘先生(公認会計士)に、「連結会計」の仕訳問題を週1回のペースで出題していただきます(毎週金曜日掲載予定)。
本連載で出題する問題は、連結会計に関する日商簿記2級レベルのインプット学習が一通りできた人を対象に、日商簿記1級や税理士試験・公認会計士試験にステップアップを目指す人にとって「土台」となる内容を想定しています。なお、毎回のテーマによって出題数は変動します。
もし本連載でつまずいた問題があれば、もう一度テキストでしっかり復習しましょう!

「本連載のねらい」はコチラをご覧ください。

さらに問題を解きたい方は、『連結会計の計算に強くなる3ステップ式問題集』をチェック!

今回のポイントー資本連結:支配獲得後の会計処理①

今回のテーマ「資本連結:支配獲得後の会計処理①」について、以下のポイントを確認して仕訳問題を解いてください。

Point1.のれんの償却    

のれんは、無形固定資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その  他の合理的な方法により規則的に償却します。ただし、のれんの金額に重要性が乏しい場合には、当該のれんが生じた事業年度の費用として処理することができます。

また、のれんの当期償却額は、「のれん償却」として、販売費及び一般管理費の区分に表示します。

Point2.子会社の当期純利益の按分

子会社が個別損益計算書で計上した当期純利益は、株式の持分比率に応じて親会社と非支配株主に帰属させます。

具体的には、親会社が子会社の支配獲得後に計上した子会社の当期純利益のうち、非支配株主に帰属する金額は、連結損益計算書上、「非支配株主に帰属する当期純利益」に振り替えます。また、子会社の当期純利益の計上は、子会社の純資産を増加させるため、「非支配株主に帰属する当期純利益」の相手勘定として「非支配株主持分」を増加させる必要があります。

なお、「非支配株主に帰属する当期純利益」は「非支配株主に帰属する当期純損益」とする場合もあります。

問題(全3問)

下記の各取引について仕訳しなさい。なお、勘定科目は、設問ごとに最も適当と思われるものを選ぶこと。
(なお、スマホでご覧の方は「画面をヨコ」にすると仕訳や表が見切れないのでオススメです。)

問1

×2年度末において、のれんの償却を行った。のれんは、×1年度末に東京商事株式会社が、大阪商事株式会社の発行済株式の80%を¥2,100で取得して支配を獲得した際に生じたものであり、発生年度の翌年から5年にわたり定額法により償却する。なお、×1年度末の大阪商事株式会社の資本金は¥1,000、資本剰余金は¥200、利益剰余金は¥800であった。×2年度末の東京商事株式会社の連結財務諸表作成上、必要な仕訳を答えなさい。

 〔勘定科目〕

のれん子会社株式資本金資本剰余金
利益剰余金非支配株主持分のれん償却負ののれん発生益

解答

・のれんの償却(×2年度末)

(借)のれん償却100 (貸)のれん100 

のれん500÷5年=100

解説

・支配獲得時(×1年度末)

(借)資本金1,000*1(貸)子会社株式2,100*2
 資本剰余金200*1 非支配株主持分400*3
 利益剰余金800*1    
 のれん500*4    

*1 ×1年度末の資本金1,000、資本剰余金200及び利益剰余金800 
*2 子会社株式の取得価額2,100
*3 (資本金1,000+資本剰余金200+利益剰余金800)×非支配株主比率20%=400
*4 子会社株式の取得価額2,100-(資本金1,000+資本剰余金200+利益剰余金800)×P社持分比率80%=500

問2

×3年度末において、のれんの償却を行った。のれんは、×2年度末に東京商事株式会社が、大阪商事株式会社の発行済株式の100%を¥2,400で取得して支配を獲得した際に生じたものであり、発生年度の翌年から認められる最長期間にわたって定額法により償却する。なお、×2年度末の大阪商事株式会社の資本金は¥1,000、資本剰余金は¥200、利益剰余金は¥900であった。×3年度末の東京商事株式会社の連結財務諸表作成上、必要な仕訳を答えなさい。

 〔勘定科目〕

のれん子会社株式資本金資本剰余金
利益剰余金非支配株主持分のれん償却負ののれん発生益

解答

・のれんの償却(×3年度末)

(借)のれん償却15 (貸)のれん15 

のれん300÷20年=15

のれんの償却期間について、認められる最長期間は20年である。

解説

・支配獲得時(×2年度末)

(借)資本金1,000*1(貸)子会社株式2,400*2
 資本剰余金200*1    
 利益剰余金900*1    
 のれん300*3    

*1 ×2年度末の資本金1,000、資本剰余金200及び利益剰余金900
*2 子会社株式の取得価額2,400
*3 子会社株式の取得価額2,400-(資本金1,000+資本剰余金200+利益剰余金900)×P社持分比率100%=300

問3

大阪商事株式会社の×4年度の当期純利益は¥500であった。なお、東京商事株式会社は、×3年度末に大阪商事株式会社の発行済株式数の70%を取得して支配を獲得している。×4年度末の東京商事株式会社の連結財務諸表作成上、必要な仕訳を答えなさい。

 〔勘定科目〕

のれん子会社株式資本金利益剰余金
非支配株主持分非支配株主に帰属する当期純損益のれん償却負ののれん発生益

解答

(借)非支配株主に帰属する
当期純損益
150 (貸)非支配株主持分150 

当期純利益500×非支配株主持分比率30%=150

今回のトレーニングは以上です!
次回は5月19日(金)に公開予定です。それまでにしっかり今回の復習をしておきましょう!

【執筆者紹介】
関口 高弘(せきぐち・たかひろ)
1976年5月神奈川県生まれ。1998年10月公認会計士試験合格。1999年3月中央大学商学部会計学科卒業、2001年3月中央大学大学院商学研究科博士前期課程修了。公認会計士試験合格後、大手監査法人で上場企業を中心とした会計監査に従事。2002年4月公認会計士登録。日商簿記検定試験(商業簿記・会計学)、税理士試験(簿記論・財務諸表論)、公認会計士試験(財務会計論)の受験指導歴17年。現在は、中央大学経理研究所専任講師、中央大学商学部客員講師、朝日大学経営学部非常勤講師、高崎商科大学商学部特命講師他を務める。

<連載バックナンバー>
【第2回】資本連結:支配獲得日の会計処理①
【第3回】資本連結:支配獲得日の会計処理②
【第4回】資本連結:支配獲得後の会計処理①
【第5回】資本連結:支配獲得後の会計処理②
【第6回】成果連結:債権債務の相殺消去(資金取引)、期末貸倒引当金の調整
【第7回】成果連結:債権債務の相殺消去(ダウン・ストリーム)、期末貸倒引当金の調整
【第8回】 成果連結:期末未実現損益の消去(ダウン・ストリーム)
【第9回】成果連結:債権債務の相殺消去(アップ・ストリーム)、期末貸倒引当金の調整
【第10回】 成果連結:期末未実現損益の消去(アップ・ストリーム)
【第11回】 資本連結:開始仕訳①
【第12回】 資本連結:開始仕訳②株主資本等変動計算書の勘定科目
【第13回】成果連結:前期末貸倒引当金の調整(ダウン・ストリーム)
【第14回】成果連結:前期末未実現損益の消去・実現(ダウン・ストリーム)
【第15回】成果連結:前期末貸倒引当金の調整(アップ・ストリーム)
【第16回】成果連結:前期末未実現損益の消去・実現(アップ・ストリーム)
【第17回】成果連結:応用論点(仕入未達取引)
【第18回・完】成果連結:応用論点(連結会社振出の手形の割引・裏書)

<もっと問題が解きたい人へオススメ問題集>

会計士・税理士・簿記検定 連結会計の計算に強くなる3ステップ式問題集
(関口高弘 著・中央経済社)
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