平井 孝道
(株式会社M-Cass 代表取締役)
【編集部から】
1月21日、令和4年公認会計士試験(第Ⅰ回短答式試験)の合格発表がありました。
悔しい結果となってしまった方は、どんなにつらくとも、立ち直ってリスタートをきる必要があります。
そこで、第Ⅱ回短答式試験にリベンジする受験生が、今後どのように財務会計論・管理会計論・監査論・企業法を勉強すればよいのか、平井孝道先生(株式会社M-Cass 代表取締役)にアドバイスをいただきました。
本記事は、今回「合格ラインまで少しだった方」に向けて、お話しいただきます。
第Ⅱ回短答式試験突破に向けて、今すべきこと
1.学習スケジュールを見直す
3月半ばくらいまでは、論文式試験と短答式試験の両方(割合としては7:3くらい)を勉強しておくことをおすすめします。
短答式試験の勉強ばかりしていると、その先の論文式試験に合格きないだけではなく、短答式試験であっても論文式試験の知識を使って問題を解く場合もあるからです。
3月半ばくらいまでは、会計学(財務会計論・管理会計論)・監査論・企業法をテキストなどで体系的・理論的に学習し、短答式試験だけで問われる部分と論文式試験でも問われる部分とをリンクさせていきましょう。
そして、3月後半から5月にかけて、一気に短答式試験対策に注力して突破を図るというのも1つの有効な方法です。
2.弱点を洗い出し、本試験をシミュレーションする
合格ラインまでもう少しだった方は、同じ過ちを繰り返さないために、明確に原因を分析したほうがよいでしょう。次の2つの視点から分析してみるのがおすすめです。
原因1:理解度が足りなかった
・弱点となる論点が出題され、問題を解くことができなかった。 ・理解不足が本試験で露わになった。 |
原因2:解答戦術が甘かった
・時間配分や答案用紙の使い方に不具合があり、うまく時間内に問題を解けなかった。 ・本番で難しい問題に手を出してしまい、そこで大幅なロスを生んでしまった。 |
このような視点から原因を分析し、現実的な対策を実行するようにしましょう。
たとえば、「原因1:理解度が足りなかった」という視点で、「弱点となる論点があった」場合、①その論点の洗い出し/②弱点ノートの作成、といったかたちで、具体的な対策を立てるようにしましょう。
また、必ず実行してほしいことがあります。
「原因2:解答戦術が甘かった」の対策でもあるのですが、「過去問を使い、問題を解くシミュレーションを何度もする」ということです。 短答式試験は、時間との勝負! 最終的に勝敗を握るカギは、次の3点です。
① 基本問題でミスをせず、確実に得点する ② 問題の取捨選択を確実にする ③ 時間配分を適切に行う |
これらができるよう、「過去問」を使って徹底的にシミュレーションしておいてください。
科目別の対策
1.会計学(財務会計論・管理会計論)
まず、両科目で計算をしっかりと仕上げてください。
短答式試験と論文式試験では、両科目とも出題の形式や分量が異なりますが、次の理由から、両方の対策をある程度しておいたほうがよいのです。
① 計算と理論をリンクさせて学習するため
短答式試験では、計算と理論の融合問題が出題されることは少ないですが、計算の裏には理論が存在します。財務会計・管理会計をしっかりと理解する意味でも、計算と理論をリンクさせて学習しましょう。
具体的には、財務会計論であれば、計算問題を解いたら、該当する会計基準を読み込み、また理論問題を解く、といった勉強法が挙げられます。なお、この際、該当する論点について、あわせて短答式問題集も解いておきましょう。
論文式試験では問われない、細かなところが短答式試験では問われます。短答式試験特有の箇所を問題集でそのつど、確認することが大事です。
② 会計学の学習を完了させて、租税法に注力するため
短答式試験突破後は論文式試験の学習に入りますが、そこで立ちはだかる大きな壁があります。それが「租税法」です。
租税法は、法人税・所得税・消費税の3科目を勉強しなければならず、会計学とは異なる独特の計算様式です(計算の順番が決まっていたり、すべての計算が理論的に導けなかったり)。
また、計算の分量も多く点差がつきやすいため、論文式試験を受験するにあたっては要注意の科目といえます。
このため、短答式試験突破後は、この租税法に多くの時間を割かなければならないため、できるだけ会計学の科目を早めに完了させておきましょう。
ただ、すべての論点を網羅的に押さえ、高得点を維持できる状態を意味するのではありません。
「頻出論点」かつ「典型論点」について確実に得点できるよう、しっかりと準備をしておきましょう。
2.監査論・企業法
理論科目については、短答式試験と論文式試験の両方をあわせて勉強することが大切です。学習内容を理解するためには、短答式試験のような「問い→答え」という勉強ではなく、体系だった理解が必要となるからです。
そのため、論文式試験の勉強を通して体系的に理解するとともに、短答式試験の勉強も行い、短答式試験特有の論点、問われ方を押さえるようにしてください。
ちょっとした雑談ですが、私は受験生時代、監査論では「監査基準委員会報告書」を、企業法では「商法・商行為法・会社法の条文」を読み込んでいました。「正しい文章」を頭に入れておくことで、短答式試験で「正誤」を判断しやすくなりますし、論文式試験では条文集を使いこなす必要があるからです。
実務についてからも、会計基準、監査基準委員会報告書、条文を読みこなせないと仕事になりません。受験勉強において読み込んでおくのは、非常によい勉強になるでしょう。
以上が、 「合格ラインまで少しだった方」 に向けた学習の処方箋となります。本記事が、あなたの試験勉強の参考になれば幸いです。頑張ってください!
【執筆者紹介】
平井 孝道(ひらい・たかみち)
株式会社M-Cass 代表取締役
日商簿記検定1級合格、税理士試験2科目合格、公認会計士試験合格。専門学校や大学で、簿記検定講座(3級~1級)や税理士講座(簿記論)、公認会計士講座(財務会計論・管理会計論)などの15年を超える指導キャリアをもつ。