2年4ヵ月で官報合格! 引き継がれたバケモノメソッドと勉強法(後編)


【編集部より】
昨年、会計人コースWebに掲載した山本庸介先生(税理士)の記事「バケモノと呼ばれた男の最速合格マインド」は読者からも好評で、刺激を受けた受験生も多かったようです。その山本先生が代表を務める事務所で働く安川大祐さんが、2年4ヵ月で官報合格したとの情報が入りました!
山本先生から刺激を受けた点や正直なところ大変だった点などを、前編・後編に分けて、忖度なく伝えて頂きます。各回の最後には、元祖(!?)バケモノと呼ばれた男・山本先生からのコメントもたっぷりお届け! 会計事務所で働きながら勉強を続ける現役受験生にとってのヒントが満載です。

本文:安川大祐(税理士法人ウィズ総合事務所・税理士試験合格者)
コメント:山本庸介(税理士法人ウィズ総合事務所代表・税理士)

安川大祐さんの受験歴
令和3年 簿記論・財務諸表論合格(ともに独学)
令和4年 消費税法合格(独学+TAC直前期講座)、国税徴収法合格(TAC基礎マスター+直前期講座)
令和5年 法人税法合格(TACのWeb通信)

前編はコチラ

元祖(!?)バケモノと呼ばれた男から影響を受けたメソッド

まず山本先生から強く影響を受けたものというと、「税理士試験に対する考え方」だと思います。山本先生は、「とにかく税理士試験になるべく早く、最短で合格すること」を第一に考えておられます。

通常、働きながら税理士試験合格を目指す方というのは、1年に1科目ずつ合格し、5年で合格することをまず考えるのではないでしょうか。そして、この5年という期間でさえ、通常は早いと、もてはやされるはずです。しかし、山本先生は5年もかかってるようじゃ遅いと思われています。私は3回の受験で合格したわけですが、「3年ぐらいでようやく早いと言ってもいい」ということを言われた記憶があります。

実は、当初の自分の計画では、法人税法のボリュームの大きさを知らなかったこともあるんですが、1年目は簿記論・財務諸表論、2年目は消費税法、そして3年目で法人税法と国税徴収法に合格していくという青写真を描いていました。

しかし、2年目に消費税法の1科目だけ受けるという姿勢は、山本先生のお気に召さなかったようで、入社してすぐに2年目は消費税法と国税徴収法を受けることとなりました。確か、「ウチの事務所は普通の事務所と比べると労働時間が短いから1科目だけじゃ物足りんようになると思う」と言われたのです。

この「ウチの事務所の姿勢」は、私の後輩にもしっかりと受け継がれていて、今年簿記論と財務諸表論の2科目合格した後輩は、来年は法人税法と消費税法を受験することになったようです。当初は、出来があまり良くなかった簿記論と法人税法の予定でしたが、2科目合格が判明した途端に消費税法も受ける流れになり、最近ようやく消費税法のテキストが到着したようです。この後輩の健闘を祈っています。おそらくやってくれるはずです。

なるべく複数科目を受験するというこの方針は、確かに効果的だと思います。税理士試験は1年に1回しかないため、受かるかどうかの保証もない1科目だけ勉強することは、税理士合格を目指すうえでは合格の可能性を狭めているだけとも言えるからです。いくら1科目だけしっかり勉強したとしても、本番の問題内容に左右されない高みに行ける受験生なんて、本当に極々僅かでしょうし。

簿記論・財務諸表論の学習で使用した教材
消費税法の学習で使用した教材

トンデモナイ所長によるスゴイ受験環境の整え方

ここまでだけだと、山本先生は複数科目の受験を強要するだけのトンデモナイ人に思えるかもしれません(確かにトンデモナイ人であることには間違いないかもしれませんが…)が、それだけでなく、そのための環境づくりも十二分にしてくれるのです。

社員に資格取得などの自己研鑽を奨励するのはどの会社でもあることだと思いますが、通常は「資格を取れ」という口だけ出して金は出さないとか、高々数千円の受験料だけは出すというところばかりかと思います。

このようなことって、会社にとってものすごく都合のいいことだと思いませんか? だって、会社はほとんどリスクを負っていない(ここではそもそも会社は社員を雇うことによってリスクを負っているということは置いておいてください)のに、社員の資格取得によるレベルアップという会社からするといわば不労所得のようなものを期待しているわけですから。

結局は、会社側からすると資格を取ってくれたらラッキーぐらいの感覚ですよね。そして、このような会社から、会社側から社員に対する思いのようなものを感じられることはありませんよね。

しかし、山本先生の方針は上記のような会社とは全く違います。会計業務に関わるような資格取得に対して全面的なバックアップをしてくれるのです。

法人税の理論暗記中。
所長の山本先生がドアをノックして入っても気づかないほど集中!

プレッシャーのかけ方にもバケモノメソッドがある

まず税理士試験のための講座の受講費用などは全額事務所が負担してくれます。そして、8月の本試験に向けて6月からは通常業務はほぼなしで勉強に専念させてくれます。そして、この勉強に専念している期間でも、会社から通常通り給与は支給されます。このようなことをされて、意気に感じないわけがありません。

しかし、ここまでのサポートを受けるとなると普通の人であれば、逆にものすごくプレッシャーを感じませんか? 何たって、会社から時間と金をもらいながら勉強するわけでから、もう言い訳はできないですよね。

私はこのプレッシャーを本当に感じました。そしてこのプレッシャーのかけ方こそが、山本先生のメソッドとも言えると思います。私はそれにまんまと嵌まったわけです。

TAC梅田校に公開模試を受けに行きました。
公開模試の受験費用、宿泊代、移動代は事務所が全額負担!

今年はそのプレッシャーも2回目なので、ある意味慣れたものでしたが、昨年の消費税法と国税徴収法の受験のときが重かったです。今年はウチの事務所で受験生が3名いたのですが、昨年は私一人だけだったことも拍車をかけました。

ここで私の昨年の直前期の学習の進捗状況を簡単に説明すると、消費税法はボチボチ進んでいましたが、国税徴収法が全く進んでいませんでした。何せ、7月に入った時点で国税徴収法の理論暗記の1周目が終わってなかったですから。

税法受験経験者の方ならこれがいかに絶望的な状況であるかおわかりかと思います。昨年の6月は午前中は通常勤務、午後から勉強という形だったのですが、7月に入ったときに山本先生に上記の進捗状況を伝えたところ「マジか…」という反応とともに、7月の全休が決まりました。言い訳できない状況が出来上がったわけです。

7月中に、「このままじゃ国税徴収法どころか消費税法も受からないんじゃね? 消費税法だけに絞ったほうがいいんじゃないか」という考えが何度頭をよぎったかわかりません。

試験まであと3週間、2週間…と近づくにつれ、そのような不安で眠れなくなりました。正直な話、試験に会社が絡んでなければ消費税法だけに絞ったと思いますし、通常ならそれが賢明な判断のように思われます。消費税法も別に合格確実ではもちろんなかったですし(TACの答練の自己採点は常に平均点ぐらいでした。自己採点と書いているのは、提出は一度もしなかったからです)。しかし、こんな状況ではあっても、国税徴収法から逃げることは自分には許されないと思っていました。

こうした意識で、歯を食いしばって国税徴収法と向き合ったからこそ、合格可能性は極めて低かったと思うのですが、幸いにも合格に引っかかったのだと思います。このあたりのことは、弊社HPのブログに記していますので、是非そちらもご覧ください。

このように、合格しなければならない状況に追い込まれたことが、私にはかなりプラスに働きました。これまでの人生、かなり気ままに生きてきたので、これぐらい縛られたほうがちょうどいいのでしょう。

昨年は上記のようなプレッシャーを、そして今年はまた違ったプレッシャーを感じながら勉強しました。というのも、私事ではあるのですが、今年の初め頃から結婚を前提にお付き合いしていた方がいたのですが、その方と結婚するためにも、何とか今年で税理士に合格せねばならないと心に誓っていました。

山本先生からも、事あるごとに「嫁さんを待たすわけにはいかんでしょ」というようなことを言われていました。税理士合格を果たしたことにより、無事に結婚に至りましたので今はホッとしています。

税理士試験終了後に事務所でBBQ慰労会を開催!

短期合格を目指す状況に追い込む

この文章を読んでいる税理士受験生の方は、是非短期合格を目指し、その短期合格を果たさねばならない状況に自らを追い込んでください。

私が聞いた山本先生の税理士受験生時代の話で、とても印象深い話があるのですが、山本先生は1年目に簿記論、財務諸表論、消費税法、そして相続税法の4科目受験する予定だったのです。しかし、相続税法は勉強が間に合わなかったようで、本番は記念受験のような形でした。

結果として1年目に相続税法以外の3科目に合格していますし、普通の感覚なら、3科目戦えるレベルに持っていければ十分に満足してよいと思います。しかし、私はこのエピソードから、4科目全てで勝負できるレベルにまで持っていけなかったことに対する山本先生の深い自責の念を感じずにはいられませんでした。

私はこのエピソードこそが、山本先生の税理士試験に対する考えや姿勢を象徴するものだと思いますし、これこそが山本先生が山本先生たる所以なのかなとも思います。

私なんて1年目に簿記論、財務諸表論、消費税法の3科目の受験申し込みをしましたが、7月には消費税法を切り、試験も受けませんでした。一刻も早く家に帰りたかったので、財務諸表論が終わったら、すぐに帰りました。受けなかった後悔なんて全くなかったです。

でも、今となってはもったいなかったことしたとも思っています。実務経験がなかったので、税理士の合格はもとより3ヵ年計画(2021年5月~3回の受験で合格する)ではあったのですが、1年目で無理してでも3科目に合格していれば、もしかすると2年目で税理士合格できた可能性もありましたしね。そうすると私もバケモノと呼ばれたかもしれなかったのに…。

最後に、前編でも触れた私の大学卒業から税理士になるまでの様子は弊社HPのブログにてより詳しく書いていますので、興味のある方はそちらも是非ご覧ください。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

事務所所長・山本庸介先生からのコメント
開業当初から士業になる人を数多く輩出したいという想いがありました。税理士試験は働きながら受験できる試験だからこそ、長期化しやすいと思っています。

税理士事務所で勤務していると、仕事ができる人に仕事が集まる、結果として試験勉強時間が確保できないという状況に陥りがちです。前職では実力はあるのになかなか合格できない人、中には税理士試験を諦める方を見てきました。そのようなことがないように、事務所としてできる限りの受験環境を整えようと考え、教材費は全額負担、最大2ヵ月の特別有給休暇制度を設けています。

事務所にとっても、当然プレッシャーはあります。受験生が勉強に専念する間、残された人で仕事を分担するのですから。

試験に挑戦する、合格を目指して勉強するというのは、本来は自分事です。自分が諦めれば、そこで終了です。周りからサポートを受けているというプレッシャーと諦められない状況で必死に勉強することが合格確率を上げますし、1年でも早く合格を手にできると考えています。
安川さんは見事に期待に応えてくれました。最後の年はプライベートの面からもプレッシャーをかけました(笑)。

仮に試験に落ちたとしても大丈夫です。精一杯努力したのであれば、誰も咎めません。来年また挑戦すればいいのです。教材費負担も試験休暇も一生懸命チャレンジしたのであれば何度でも使えます。チャレンジしたことを称賛しますよ。

私が目指しているのはスポーツ強豪校や進学校のような、当たり前のレベルが高い環境づくりです。高いレベルに身を置き、お互い切磋琢磨することで1年でも早く税理士になる人をたくさん輩出していきたいと考えています。

試験合格を目指す上で働く場所は非常に重要だと思います。サンプル数はまだまだ少ないですが、弊所の職員で税理士試験挑戦した年に科目合格できた確率は今のところ100%です。1年で複数科目合格する人も出ています。

福井県大野市というかなり田舎の場所ですから、仕事か勉強しかすることはありません。勉強も実務も猛スピードで習得したい人にはおすすめです。遠方から就職される人向けのシェアハウスも用意しています。そのような環境で働いてみたい人は是非お問い合わせ下さい。

(おわり)

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わたしの独立開業日誌 #税理士・山本庸介

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