【令和4年公認会計士試験(第Ⅰ回短答式)】結果発表を見た受験生が当面やるべきこと


和歌山大学経済学部准教授 藤原 靖也

【編集部から】
今日は令和4年公認会計士試験(第Ⅰ回短答式試験)の合格発表。
合格を勝ち取った皆さん、おめでとうございます。次は論文式試験ですね。
残念ながら悔しい結果となった方、第Ⅱ回短答式試験でリベンジを果たしたいですね。
そこで、それぞれが次のステージを突破するために当面どのように過ごせばよいのか、独学で公認会計士試験に合格され、大学で研究活動とともに受験指導にも力を入れられている藤原靖也先生(和歌山大学経済学部准教授)に、今回の総評も踏まえてアドバイスをいただきました!

第Ⅰ回短答式試験の総評

令和4年公認会計士試験第Ⅰ回短答式試験は、合格率は「12%」と低い数字ですが、ほぼ毎回の短答式試験と変わりません。受験者数の増加に伴い、ボーダーラインも「68%」と上昇していました。

今回の短答式試験も、各科目共通して分量の多い問題や取り組みにくい問題も散見されました。ただ、総じて極端な難問の類も少なかったと思われます。標準的な知識の習得度を網羅的に試す内容であり、直近数回の試験とそれほど変わらない難易度でした。

また、今回の短答式試験の理論問題については、「明らかに誤っている選択肢1つを切る所までは比較的容易であったこと」が特徴的でした。受験生の方の声と照らし合わせても、選択肢を絞り切れない問題があったとしても、全然わからず選択肢が1つも切れない問題は全体として少なかったように思います。

科目別に見ると企業法は、商法・金融商品取引法それぞれから複数の出題があり、かつ会社法の少し細かい条文からの出題もありましたが、商法・会社法等を網羅的に学習していればボーダーラインを超える得点が可能でした。

監査論は、細かい問題や文言の解釈に迷うような問題もありましたが、その反面、容易に解答可能な問題も多かったです。

管理会計論は、計算問題では煩雑な問題もありましたが、理論問題は直近数年の問題と比べると明らかに易しかった印象です。

財務会計論は、計算問題・理論問題ともに十分な得点が可能であり、かつ点数を取るべき問題の判断がしやすかったと思います。

このことをもとに、これから8月の論文式試験に挑む方、5月の第Ⅱ回短答式試験に臨む方に向けて、それぞれアドバイスをしたいと思います。

8月の論文式試験に挑む方へ

晴れて短答式試験に合格された方は、ここから3月までが、なんとしても論文式試験に向けて頑張る時期の1つです。この時期の過ごし方が合否を分けるといっても過言ではありません。

ただし、頑張るといっても「何を頑張るのか」という学習方針を取り違えないことが重要です。

短答式試験とは違い、論文式試験では各学問の知識の理解を前提にした「応用力」・「思考力」・「論述力」が試されることはご存じかと思います。

そのため、短答式試験で学習した科目については、学習のギアを「覚えること」から「理解すること」に切り替え、培ってきた知識を応用して論述できるよう、その素地を作るための学習にシフトしてください。

特に、論文式試験では重箱の隅をつつく問題はほぼなく、各学問分野の本質的な理解が試されます。このことを念頭に置いて学習を行う必要があります。

なお、「出題範囲の要旨」の網掛け部分からの出題、かつ今回の短答式試験で理解が曖昧だった項目については、知識を十分に補っておくとよいでしょう。

さらに、ボリュームが多い租税法や選択科目など、論文式試験のみに課される科目も学習する必要があります。各科目の学習時間のバランスも考えなければなりません。

漫然と学習するのではなく、いま自分が何を目的に学習しているのか、その目的は間違っていないかを明確にして学習を進めることが何より大切です。

ここから3月まで は、論文式試験の点数に最も差がつく時期の1つであり、勝負のかけ所だからこそ、いま一度熟考してみてください。気も緩みやすく大変な時期ですが、なんとしても食らいつきましょう。

5月の短答式試験に臨む方へ

今後1~2ヵ月で「基礎」という土台を盤石にすることを何よりも優先してください。応用的な内容に触れるのはその後です。

難解な内容・些末な内容にむやみに取り組んでも、土台がしっかりできていないと断片的な知識を詰め込んだにすぎず、即座に崩れてしまいます。

また、問われている内容は同じでも、予備校の答練と本試験の設問とでは問われ方が違うことも多いです。わかっていても独特の問い方に翻弄されることにもなりかねません。

何よりも、問題のレベルにかかわらず、やはり「基礎+α=合格」は受験上の鉄則です。

標準的・基礎的な知識が網羅的に試された今回のような短答式試験では、基礎的な問題の取りこぼしやケアレスミスが命取りになります。

また、難解な内容が多く出題されるような短答式試験でも、得点源は同じく標準的・基礎的な問題です。

そこに「+α」として得点を少しでも重ねることができれば、短答式試験のボーダーラインは突破できます。

今回の短答式試験で曖昧な内容があって点数を落とした方は、各科目の基礎的な知識を網羅的に習得していたか、いま一度確認してください。

また、基礎が完成したと思った時点で今回の短答式試験をもう一度解き、自分がボーダーラインからどれだけ乖離しているのかを確認してみましょう。

その際、予備校の答練等と本試験の出題のレベルが違うこと、本試験には本試験特有の問い方があることを十分に分析してください。

皆さんが5月の短答式試験で実力をいかんなく発揮されることを願っています。

【執筆者紹介】
藤原 靖也(ふじわら・のぶや)
和歌山大学経済学部准教授、博士(経営学)。日商簿記検定試験1級、税理士試験簿記論・財務諸表論、公認会計士試験論文式試験に合格。神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了後、尾道市立大学経済情報学部講師を経て現職。教育・研究活動を行いつつ、受験経験を活かした資格取得に関する指導にも力を入れている。


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