【公認会計士試験】第Ⅱ回短答式リベンジ合格に向け、これからどう勉強する?(合格ラインまで遠いと感じた方へ)


平井 孝道
(株式会社M-Cass 代表取締役)

【編集部から】
1月21日、令和4年公認会計士試験(第Ⅰ回短答式試験)の合格発表がありました。
悔しい結果となってしまった方は、どんなにつらくとも、立ち直ってリスタートをきる必要があります。
そこで、第Ⅱ回短答式試験にリベンジする受験生が、今後どのように財務会計論・管理会計論・監査論・企業法を勉強すればよいのか、平井孝道先生(株式会社M-Cass 代表取締役)にアドバイスをいただきました。
本記事は、今回「合格ラインまで遠いと感じた方」に向けて、お話しいただきます。

第Ⅱ回短答式試験突破に向けて、今すべきこと

1.会計学の「計算」を確実に解けるようにする

まずは、「会計学」の計算問題をしっかりと解けるようになりましょう。

公認会計士試験では、この科目で力がある程度身についていないと合格が非常に難しいです。そのため、1にも2にもまずは「財務会計論」と「管理会計論」の基本問題を確実に得点できるように準備してください。

なお、実力を測るメルクマールの1つとして「日商簿記検定1級合格」が挙げられます。「日商簿記検定1級」に合格できなければ、公認会計士試験の合格も難しいため、これを中間目標に勉強を進めてみてもよいでしょう。

次の1級試験は6月です。5月の短答式試験までの間、公認会計試験の勉強を中心に、1級の過去問をスキマ時間に確認する、1級の「連結会計」の問題をミニ公認会計士試験の問題として解く、腕試しに工業簿記・原価計算にチャレンジする、といった方法が考えられます。

なお、公認会計士試験の勉強は長期間に及び、人生をかけてチャレンジする方が多いと思います。そのため、人生のリスクヘッジとして、日商簿記1級や全経上級、税理士試験(簿記論・財務諸表論)を中間目標とし、受験してみることおすすめします。

これによって、実力を客観的に測ることができ、なにより、公認会計士試験の勉強の合間に他の資格を取得することで、仮に公認会計士試験から離脱したときにも勉強の成果を残せるからです。

2.理論科目を体系的にインプットする

短答式試験を受けてみて、監査論と企業法のイメージはどうだったでしょうか? おそらく、「わかったような、わからないような・・・」とか、問題集を解いても「いつになったら、わからない問題がなくなるのだろうか?」と感じたのではないでしょうか?

そう感じるのは、監査論や企業法(会社法)が体系的に頭に入っていないことが原因です。

短答式試験の勉強ばかりでは、「問い→答え」という考え方になってしまいます。論文式試験の勉強を通して、土台となる体系的な知識を頭に入れるようにしましょう。そのうえで、短答式試験特有の知識をインプットすればよいのです。

なお、理論科目をインプットするにあたっては、テキストや規定を読むときに「論文式対策の読み方」と「短答式対策の読み方」を使い分けられるようになることが重要です。

1つの方法として、次のように、短答式試験の問題の誤りを正しく書き直し、「正しい文章」として読み込むのも有効です。

株式会社は、定款に別段の定めがないた場合に限り、株券を発行しなければならないすることができる。

こうすることで、短答式試験に直結する正しい知識をインプットすることができ、テキストや会計基準、条文等のどの部分が問われるのか、どの部分を短答式対策として意識して読む必要があるのか、といったことが感覚的にわかるようになります。ぜひ、試してみてください。

科目別の対策

1.財務会計論

財務会計論については、「計算」と「理論」をセットで学習しましょう。具体的には、テキストなどで会計処理を勉強したときには、必ず、「会計基準の規定」と「会計理論」をあわせて確認するようにしましょう。

また、「計算」に関しては、次の視点をもつようにしてください。

第1:仕訳力を徹底して鍛える

仕訳は、「認識・測定・表示」の3つの観点で押さえましょう。

第2:集計力を鍛え、集計方法を準備する

金額は基本的に「T勘定」で集計しますが、受験テクニックとしてその他の方法もあります。すばやく、正確に集計できる方法を研究しましょう。

第3:簿記一巡と帳簿組織を理解する

「簿記一巡」の流れと、「単一仕訳帳・補助簿併用制」の仕組みを、いま一度、理解してください。これがわからないと、「決算整理前残高試算表って何?」とか、「本支店会計の総合勘定って何?」というように、意味が理解できず、記憶も定着しません。

難関国家試験となると、表面上の知識だけではどうしようもない部分もあり、そのような知識では、仮に合格しても実務についたときに苦労します、ここは、腰を据えて勉強するようにしてください(かえって、そのほうが近道になります)。

2.管理会計論

管理会計論が苦手な方も多いと思います。

対策としては、そもそも論として、「原価の計算」と「複式簿記による帳簿記入」を分けてテキストなどを読むようにしてください。

たとえば、あなたがラーメン屋を経営するとして、「豚骨ラーメン」と「味噌ラーメン」を提供するとします。ラーメンを売ることで利益がいくら出るのか、それを計算するためには、それぞれのラーメンの原価を計算しなければいけません。そのための方法を「原価計算」で勉強します。

この場合、常識的に考えると普通は、1枚の紙や、少しハイテクな店であればエクセルを使い、原価を計算するでしょう。その場合、1枚の計算用紙で原価をどのように配分(豚骨ラーメン・味噌ラーメン)するのかを「原価計算」では勉強するわけです。

では、その1枚の計算表からどのように財務諸表を作るのでしょうか?

この計算表からは、

・ラーメン屋を始めるにあたっての資本金や借入金はどうなったのか?
・材料などの在庫はどうなったのか?
・手元の現金はいくらか?

といったことがわかるでしょうか?

いいえ、わかりませんよね? この「原価計算」のための表は、いわゆる家計簿と同じ、「単式記入」による計算表といえるのです。

そのため、原材料の消費と在庫との関係、製品の販売と現金、在庫との関係などを連動させて記帳することはできず、P/LやC/Rは作ることができても、ストックベースのB/Sを作ることができません。

では、B/Sを作れないと何が困るのでしょうか?

ストック(在庫や現金)がわからないのはもちろんですが、それ以上に、そもそもP/LとC/Rの金額が正しいのかどうかわからないという問題も生じます。

そこでB/Sを作り、「貸借が一致するかどうか」を確認する必要があるわけです。

では、次に、P/LやB/Sといった決算書を作るためには、どのような記録方法が必要となるのでしょうか?

はい、そうですね! それこそが、「工業簿記」です。

つまり、複式記入方式で、左右同時に記入し、さらに5要素(二式簿記)に振り分けて記帳する技術で記録を取ることで、財務諸表を作ることができます。

以上のように、管理会計論では、「原価計算」と「帳簿記入」の2つの観点から学習するとよいでしょう。

そのうえで、「直接原価計算以降」は、すべて「原価を変動費と固定費に分解することから始まる」ということを知っておいてください。

財務会計の分野では、全部原価計算方式による製造原価報告書や損益計算書が作成されますが、そのままでは経営シミュレーションができず、損益分岐点の分析などができません。

そこで、これらを可能とするために、原価を変動費と固定費に分解し、直接原価計算方式の損益計算書が作られます。

このような視点で「直接原価計算以降」の論点(予算編成、セールスミックス、意思決定会計など)を学習すると、より理解しやすいかと思います。

3.監査論

監査論は用語も独特で、テキストなどを読んでもイメージしづらく、理解しにくい、かつ記憶に残りにくい科目ではないでしょうか?

対策としては、「自分が公認会計士としてクライアント先で監査をするならどうするか?」をイメージし、その「マニュアル本」としてテキストなどを読むことをおすすめします。 監査論は、「制度論・主体論・実施論・報告論」の4分野に分けて学習しますが、それぞれ次のような視点で学習するとよいでしょう。

① そもそも監査を受けなければならない会社はどんな会社か? その法的根拠は何か?(制度論)
 
② どんな人が監査人として相応しいのか、その人はどんな義務と責任を負うのか?(主体論)
 
③ 監査の現場では、どのようにして監査を進めればよいのか? いきなり経理担当者に「現金を見せろ」「帳簿を見せろ」と言って監査を進めるのか?(実施論)
 
④ 監査の結果を報告する場合、どのような形で報告するのがよいのか?
結論までの流れを長々と書くのか? 報告形式はバラバラでよいのか?(報告論)

4.企業法

企業法、特に会社法は「体系的な理解」が必要であり、そのために論文式と短答式をセットで学習することが大事です。

会社法は、「株主有限責任原則」と「株式制度」の2大原則から始まり、そこからさまざまな規定が派生しています。そこで、まずは「木の幹」となる知識を身につけるようにしましょう。そのうえで、短答式試験で問われる細かな「枝葉」の部分を付け加えるように学習していきます。

たとえば、「株式譲渡自由の原則」を学ぶとします。

下記の制度を学ぶとともに、

「株式会社制度は、社会に散財する巨額資本の集結により大規模事業を行うことを目的とし、そのために株式制度と、株主有限責任原則(104条)を採用する。
株式制度採用の結果、株主の個性は問題とされず(許容性)、株主有限責任原則の採用により、持分回収の代替的方法として譲渡を自由にする必要がある(必要性)。以上の許容性、必要性から株式を原則として他人に自由に譲渡できるとした(127条)。」

次のような短答式試験の問題を解きます。

株式会社は、定款に別段の定めがない限り、株券を発行しなければならない。 ○か? ×か?

答えは「×」ですが、こういった短答式試験特有の部分を、論文式試験の知識に付け加えるようにして勉強していくわけです。

なお、この際、短答式問題集などで「条文」が掲げてあるかと思いますが、論文式試験・短答式試験ともに必ず、「条文にあたる」「条文を読む」ということをするようにしましょう。

短答式試験では条文の知識が問われたりしますし、論文式試験では条文集を使いこなせなければならないからです。

また、なにより、規定が読めないと実務についてから困ります。

以上が、 今回「 合格ラインまで遠いと感じた方 」に向けた学習の処方箋となります。本記事が、あなたの試験勉強の参考になれば幸いです。頑張ってください!

【執筆者紹介】
平井 孝道(ひらい・たかみち)
株式会社M-Cass  代表取締役
日商簿記検定1級合格、税理士試験2科目合格、公認会計士試験合格。専門学校や大学で、簿記検定講座(3級~1級)や税理士講座(簿記論)、公認会計士講座(財務会計論・管理会計論)などの15年を超える指導キャリアをもつ。


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