最後の勝負はメンタルで決まる プレッシャーに勝つための5つの方法


平井 孝道
(株式会社M-Cass 代表取締役)

1.メタアウトカムの設定で心理的ハードルを下げる

 東大に入りたいと願っている人が東大に合格するのではありません。東大に入ったらどんな勉強をしたいか、どんな学生生活を送りたいかを考えている人が、東大に合格するのです。

 このことは税理士や会計士といった資格試験でも同じです。何かに成功する人とは、「自分は成功して当たり前」と思っている人であり、感覚レベルで「願望実現は可能」と感じられる人なのです。よって試験合格を望むなら、あくまでも自然に、できて当たり前という感覚をもつ必要があります。

 では、そんな状態にするにはどうしたらよいのでしょうか。そのひとつの方法が「神経言語プログラミング(NLP)」でいう「メタアウトカム」を設定することなのです。「メタアウトカム」を設定するとは、目標達成をイメージすることであり、すでに目標を達成したとして、そのあとに何をしたいかを具体的に考えることなのです。

 人間は最終の到達点を困難なものだと思い込んでしまいます。そして、このことが心理的に高いハードルを作り、プレッシャーの原因となるのです。よって、資格を取得した後、どんなビジネスをしたいか、どんな職場で働きたいかなどを考えることで、本来の目標を途中経過とし、試験合格はあくまでも通過点とするようにしましょう。

 このことにより、目標の価値は下がり、目標達成の難易度が低くなりますので、試験を「超えて当然のハードル」にするというわけです。

 なお、NLPも魔法ではありません。NLPは自己変革のための強力な道具にはなりますが、実際にこれを活かすには、地道な繰り返し(実践)が必要です。

 目標を達成するためには、「思い込み」を変えることがカギとなります。この強固な「思い込み」を変えるもの、それが「地道な繰り返し」なのです。

 具体的には以下の項目について、紙に書き込み、毎日読むようにしてください。

① 目標達成後の理想とする仕事・キャリアを書いてください。
② 目標達成後の理想とする私生活(住む場所、家族関係等)について書いてください。
③ 目標達成後の理想とするお金について書いてください。
④ 目標達成後の遊び・レジャーについて書いてください。

2.ゴールからスタートを結び、ゴールまでの見通しを立てる

 人生でも同じことですが、人は先が見通せないと不安に感じるものです。

 試験勉強において、試験の日までに「何をすべきか」ということが明確になっていないと、先の見通しが立っておらず、暗闇の中を灯りもなしに進むのと同じ状態となります。そして、このことがストレスやプレッシャーとなって自身に襲いかかるのです。

 また、現在、自分がどの位置にいるのか、ゴールまでの距離はあとどれくらいなのかといったことがわからなければ、途方にくれ、学習のモチベーションも上がりません。

 そこで、これらのプレッシャーを解消するためには、現時点からゴールまで「何をすべきか」そして、「何ができるのか」ということを明確にし、ゴールまでの見通しを立てるとよいでしょう。

 一度、時間をとって以下の手順で、ご自身が試験までに「できること」を明確にしてみてください。そうすれば、ゴールまでの道筋が見え、現時点の位置付け、ゴールまでの距離、学習の進み具合がわかるようになり、このことがプレッシャー解消へとつながるはずです。

Step1 本試験までに押さえるべき論点をピックアップ

 過去問(ゴール)などから本試験までに押さえるべき論点をピックアップしてみましょう。たとえば、商業簿記系の試験であれば、現金預金や棚卸資産の評価、有形固定資産関係、社債、退職給付といった論点は頻出の論点となります。

Step2 ピックアップした論点から、本試験までに押さえられる論点を抽出し、スケジュールに落とし込む

 たとえば、過去問や専門学校の出題予想から、押さえるべき論点が20個になったとします。次に、 自身の学習時間などを考えて、学習可能な論点を抽出してください。そして、その抽出した論点をスケジュールに入れてみるのです。

 仮に12個を学習できるとして、試験まで1ヵ月であれば、週に3個の論点を押さえていけば、試験までに間に合うことがわかります。

 このように、やるべきことを頭の中だけで考えるのではなく、スケジュール帳などを使い、目に見える形にすることが大切です。

3.過去問を分析し、何度もシミュレーションしておく

 試験における心理的なプレッシャーの要因の1つとして、「敵(試験)の正体が見えない」というものがあります。敵(試験)の情報不足は、敵(試験)を過大視することにつながり、その結果、「どんなに努力しても受からない」「自分は合格できないのではないか」という「自己の勝手な思い込み」によるプレッシャーを作り出してしまいます。

 よって、敵(試験)を過大視することによるプレッシャーをなくすために、しっかりと正面から敵(試験)と対峙することが大切です。そのためには、受験する試験の過去問を自分で分析し、出題形式や出題パターン、頻出の論点は何かということから、合格ラインや問題の取捨選択についてまで徹底して分析するようにしましょう。

 試験に対する情報を入手することで、試験の真実の姿が見えてきます。このことにより、「難関資格試験」といった言葉から連想される自己の勝手な思い込みを捨てることができ、冷静に、どのようにすれば合格できるのかということがわかるようになるので、プレッシャーを解消できます。

 以下に、過去問を使った分析のチェックリストをあげておきます。参考にしてください。

① 試験の合格ラインは何点か。
② 頻出の論点は何か。
③ 合格ラインを上回るためには、どこを得点する必要があるか。
④ 捨てることのできる埋没問題はどれか、何問ぐらい捨てることができるか。

4.ゴール(アウトカム)を再度設定する

 目標を達成するためには、「力強く望む」ということが大切です。そのような目標に対する願望が目標達成に向けた強烈なモチベーションになるからです。

 よって、学習のモチベーションが上がらず、焦りといったプレッシャーを感じている方は目標(ゴール)の設定が曖昧になっている可能性がありますので、今一度、初心に帰り、目標の再設定をするとよいでしょう。

 以下の項目を、実際に設定してみてください。なお、目標を検討する際に何か心理的に抵抗を感じるのであれば、目標そのものの設定に誤りがあるかもしれません。その場合は、「本当に自分はこの道を目指したいのか」といった,根本的な部分から見直してみましょう。

・目標
・受験日
・試験が終わったらやりたいこと
・試験合格後の自分の理想像

5.考えつくだけのやれることをすべてやっておく


 一流のアスリートは、自分なりのジンクスを持っているそうです。 日々限界まで練習しているアスリートは、現実的な努力以外にも、プレッシャーといったメンタル面の対処が非常に重要であることを知っており、その対処法の1つとしてジンクスを大切にしているようです。そして、このことは受験勉強においても同じだと思います。

 本番に弱い、本試験で過大なプレッシャーを受けると感じているのであれば、本記事であげている方法以外に、ご自身で考えつくあらゆる方法を試してみましょう。

 ちなみに私の場合、「試験会場には電卓は2つ持っていく」、 「筆記用具は使い慣れたものしか使わない」、 「試験が始まる直前までガムを噛んで精神集中する」といったことから、「寝る前に問題がバッチリ解けているところをイメージする」、「難問に遭遇しても焦らずに対処しているところをイメージする」ということまでやっていました。

 自分自身で「やれることはすべてやった」と思うことができれば、「きっと何とかなるだろう」という心境にまで至ります。そして、この心境に至った時に,合格が目の前にまでやってきているのです。

【執筆者紹介】
平井 孝道(ひらい・たかみち)
株式会社M-Cass  代表取締役
日商簿記検定1級合格、税理士試験2科目合格、公認会計士試験合格。専門学校や大学で、簿記検定講座(3級~1級)や税理士講座(簿記論)、公認会計士講座(財務会計論・管理会計論)などの15年を超える指導キャリアをもつ。

※ 本記事は、会計人コース2014年7月号掲載「最後の勝負はメンタルで決まる プレッシャーに勝つための5つの方法」を編集部で再構成したものです。バックナンバーでは、全文をご覧いただけます。ぜひこちらからお買い求めください。


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