早稲田大学大学院会計研究科非常勤講師・公認会計士 加藤大吾
本連載では、税理士試験の簿記論・財務諸表論において、執筆者の指導経験上、誤答が多かった論点を取り上げます。【問い】に対する【解説】のなかに誤りを含む部分があるので、「ここが間違いじゃないかな?」と指摘してください。電卓をたたかなくても、スキマ時間に間違いさがしは可能です。この連載を解くことで、簿記の勉強はもちろん、実務において取引記録を見ながら誤りを発見するという職業体験もすることができます。ぜひチャレンジしてみてください。
本連載は、会計人コース2020年3月号別冊付録「読んで考えて総復習 間違いだらけの計算問題」を再編集したものです。
難易度 | ★★☆☆☆ |
【問題3】有価証券①
【問】 次の〔資料〕に基づき,当期末(X2年3月31日)の貸借対照表のその他有価証券評価差額金はいくらか,求めなさい。
〔資料〕
1.当社の保有する投資有価証券は,その他有価証券として保有する時価のある株式(2銘柄)である。
2.その他有価証券の会計処理は,全部純資産直入法により,評価差額に対して税効果会計(法定実効税率30%)を適用する。また,時価が取得価額の50%以上下落している場合には減損処理を行うが,税務上,評価損は損金に算入される。
3.保有する投資有価証券の内訳は,次のとおりである。なお,期中に売買は行われていない。
銘 柄 | 取得価額 | 前期末時価 | 当期末時価 |
A社株式 | 10,000円 | 9,000円 | 12,000円 |
B社株式 | 20,000円 | 8,000円 | 21,000円 |
【間違いを含む解説】
1.決算整理仕訳
(1) A社株式
(借) 投資有価証券 2,000
(貸) 繰延税金負債 600
その他有価証券評価差額金 1,400
(注1) 評価差益:12,000円(時価)-10,000円(取得価額)=2,000円
(注2) 繰延税金負債:2,000円×30%=600円
(注3) その他有価証券評価差額金:2,000円-600円=1,400円
(2) B社株式
(借) 投資有価証券 1,000
(貸) 繰延税金負債 300
その他有価証券評価差額金 700
(注1) 評価差益:21,000円(時価)-20,000円(取得価額)=1,000円
(注2) 繰延税金負債:1,000円×30%=300円
(注3) その他有価証券評価差額金:1,000円-300円=700円
2.B/Sその他有価証券評価差額金(解答の金額)
1,400円(A社株式)+700円(B社株式)=2,100円
次ページ→ココが間違い!