よせだあつこ
今回は、会計人なら知っておきたい法律について見ていきましょう。
会計人に最も関わるのは、民法・商法・会社法・税法です。民法は、婚姻や相続のイメージがある方も多いかもしれませんが、実は物権や債権、契約についても定められています。
商法は民法の特別法という位置付けです。民法で定められている契約などのうち、商人の行う行為である商(しょう)行為(こうい)について定められています。会社法が制定される2005年までは会社についても商法に定められていましたが、会社法制定後は、商法には総則・商行為と呼ばれる、基本的な事項のみ書かれています。
2005年に制定された会社法は、商法から特に「会社」について抜き出した法律です。たとえば会社の設立、株主総会について、取締役についてなど、会社に関する手続きについては会社法で定められています。会計の仕事をしていると、会社法を目にすることがとても多いです。
そして会計人と切っても切れない関係なのが税法です。税法は税金について定められており、所得税法、法人税法、消費税法などの法律で成り立っています。会計と税法は別の基準なので、異なる処理もありますが、相互に関係しています。たとえば法人税の計算は、会計で計算した当期純利益を出発点とします。
また、金融商品取引法も重要です。金融商品取引法は、株式などの有価証券や、企業が開示する有価証券報告書について定めています。
その他にも、お店のマークを保護する商標権は商標法、発明を保護する特許権は特許法、文芸や音楽などの著作権は著作権法で定められています。商標権のように効果に期限があるものは、会計上、有効期間にわたり償却します。
最近では、IDやパスワードの不正な使用を禁止する不正アクセス禁止法、社会保障・税・災害対策にマイナンバーを使うことができることを定めたマイナンバー法など、新しい法律もあります。
法律は改正が多く、新しい法律もできるので、会計人は会計のことだけでなく、法律にもアンテナを張っておく必要がありそうです。
〈執筆者紹介〉
よせだあつこ
willsi株式会社取締役/公認会計士
監査法人トーマツを経てwillsi株式会社を設立。簿記学習アプリ「パブロフ簿記」はシリーズ累計30万ダウンロードの大ヒット。主な著書に『パブロフくんと学ぶはじめてのプログラミング』、『パブロフくんと学ぶITパスポート〈第2版〉』、『パブロフくんと学ぶ電卓使いこなしBOOK』(いずれも中央経済社)などがある。監査法人や自身の会社での実務経験から,わかりやすい解説・合格できる解法を受験生へ伝えている。
※ 本稿は、『会計人コース』2020年6月号に掲載した記事を編集部で再編成したものです。
記事一覧
第1回:給与計算
第2回:IT
第3回:内部統制
第4回:現金実査
第5回:役員報酬
第6回:固定資産
第7回:労働者と使用者
第8回:給与計算と税金
第9回:実地棚卸
第10回:法律
第11回:IT用語
最終回:調べること