【解答】
① 外貨建債権債務の為替相場の変動をヘッジする場合、原則として独立処理がとられる。具体的には、債権債務は期末の為替相場で換算して差額を損益とするとともに、為替予約も時価評価を行って差額を損益とする。それぞれ、あえてヘッジ会計を行わなくてもヘッジ対象とヘッジ手段の損益が同一期間に認識されてヘッジの効果が財務諸表に反映されることから、このような処理がとられる。
② 直々差額はただちに損益として認識し、直先差額は振当処理開始時に前受収益または前払費用としたうえで振当処理が終了する期間にわたって損益として期間配分する。直々差額の処理の論拠として、振当処理を開始する時までに発生した為替相場の変動でありヘッジ手段によってヘッジされていない部分であることから、通常の換算差額と同様の処理となることが挙げられる。それに対して、直先差額は対象となっている通貨の金利差によって生じる部分があるため、利息の配分と同様に期間に応じて損益とする。
【解説】
外貨建債権債務のヘッジ取引は振当処理が多く出題されますが、原則の処理は独立処理となります。ヘッジ会計はヘッジ対象とヘッジ手段の損益を期間的に対応させることでヘッジの効果を財務諸表に反映させるための処理であることから、外貨建取引についてはあえて振当処理を行わなくても同じ会計期間に損益が認識できる場合は必要ありません。
また、振当処理についてヘッジ対象の契約(為替予約など)を行う前に生じたヘッジ対象の為替相場の変動から生じる直々差額はただちに損益として処理することになります。ただし、本問では聞いていませんが直々差額が生じるのはヘッジ対象→ヘッジ手段の順番で取引や契約を行った場合であり、逆の順番でヘッジ手段→ヘッジ対象の場合でヘッジ手段に生じた差額は予定取引のヘッジとして繰延ヘッジの対象となり得ます。あくまで、ヘッジ手段の契約や取引を行った以降の損益がヘッジできることになります。そして、本問に戻ると本誌でも扱ったとおり直先差額は通貨の金利差によって生じる部分があるため、期間配分することになります。
つぶ問は、2018年9月号~2019年8月号までの連載「独学合格プロジェクト 簿記論・財務諸表論」(中村英敏・中央大学准教授/小阪敬志・日本大学准教授)に連動した問題です。つぶ問の出題に関係するバックナンバーはこちらから購入することができます。
【つぶ問】一覧
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つぶ問1-2(財務諸表論)
つぶ問1-3(財務諸表論)-概念フレームワーク
つぶ問1-4(財務諸表論)-企業会計原則
つぶ問2-1(財務諸表論)-棚卸資産の評価
つぶ問2-2(財務諸表論)―棚卸資産の評価
つぶ問2-3(財務諸表論)―固定資産の減損
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