
公認会計士・税理士 荒井優美子
はじめに
公認会計士の令和8年(2026年)試験では、5月24日に第Ⅱ回短答式試験が終わり、8月の論文式試験勉強に向けて頑張っていらっしゃる方も多いと思います。
また、令和9年(2027年)試験(第Ⅰ回短答式:2026年12月、第Ⅱ回短答式:2027年5月)に向けて新たに試験勉強を開始された方もいらっしゃるでしょう。
税理士試験を目指されている方は、これから夏に向けて追い込みの時期といえそうです。
この記事では、会計士・税理士の資格取得を目指されている方に、令和時代の会計士・税理士の資格取得の魅力と大手法人での働き方の状況等を、私の経験に基づいて少しでもお役に立てる情報を提供できればと思っています。
私のキャリア:監査法人→英語を活かして4大税理士法人に
私は、大学は法学部で国際法のゼミで学び、全く会計・税務とは縁の無い生活でした。
卒業後は、米国系のコンサルティング会社に就職しました。
その後、家庭生活との両立を考えて公認会計士の資格を取得しました。
当時は、公認会計士といえば監査法人への就職がほとんどでした。
今のように一般事業法人やアドバイザリー等のコンサル会社に就職する人はかなり少なかったと思います。
私も、一旦は監査法人に就職しました。
前職で英語を日常的に使っていたこともあり、半年も経たずに今でいう4大税理士法人の一つに就職し直しました。
何か明確な将来のビジョンがあったわけではありませんが、たまたま米国赴任の機会があり、退職してロースクールで租税条約や(米国)会社法を勉強し、改めて帰国後も元の税理士法人で働くことを心に決め、その後は税理士業務に専念することになりました。
AI時代、会計士・税理士のキャリアはどうなる?
監査業務について
私自身は、会計士補の時に経験した監査業務をあまり面白いとは思えませんでした。
税務の様に、新しいスキームを考えたりする創造的な仕事ではないと思ったのです。
しかし、今になって思えば、会社の財務諸表はいわば企業経営の通信簿のようなもので、監査業務は企業経営の実態に触れることができる、非常に貴重な体験でした。
米国のエンロン事件や、日本の上場企業の粉飾決算事件等は、財務報告書の信頼性を大きく失墜させることとなり、SOX法の制定やコーポレートガバナンスの強化が進められました。
そして、公認会計士の責任も一層重いものとなって来ました。
最近でも、スタートアップ企業の上場に関連した不正が問題となったりしています。
公認会計士に求められる高度な専門性と慎重な対応が、これまで以上に求められることになります。
監査業務は、財務諸表の適正性にお墨付きを与えるという意味では、企業の成長及び日本の経済成長のための責務の一旦を担うという使命感を持ってできる仕事だと思います。
税理士業務について
税理士業務は分野として、大きく分けて法人クライアントと個人クライアントに分けられます。
オーナー企業の場合は、法人とオーナーである個人を併せてクライアントとして持つことになりますが、専門分野に特化した税理士法人によって棲み分けがされていると思います。
最近の税理士業務は、会社経営の国際化によって、税法も非常に難解になっています。
監査における企業の不正に遭遇する頻度はそれほど高くはないと思いますが、税務実務では税理士による判断の誤りや届出等の失念等による事故(及びクライアントからの損害賠償リスク)の発生は決して珍しいことではありません。
監査はある程度の規模の法人で対応しますが、税務は個人事務所での対応も多いため、潜在的なリスクは認識しておく必要があります。
AI時代、会計士・税理士の業務が減ってしまうのか?
会計士も税理士も、いずれも士業ですから、組織に属して働くことも独立して働くこともでき、ライフスタイルに沿った選択がある程度できるところが魅力だと思います。
公認会計士は試験合格後、資格登録のために、まず監査法人に就職することが多いですが、もっと明確なビジョンがある場合(起業する、CFO、コンサルタントないしは税理士を目指す)には、監査法人に就職しないで、一般事業法人やアドバイザリー等のコンサル会社、税理士法人に就職する人も昔に比べて増えていると思います。
AIの普及によって、公認会計士や税理士の業務が大幅に減ってしまうのではないか、と言いわれることもあります。数値の比較や一定の情報に基づいた提案書の作成は、AIでもできるようになっています。
しかしながら、クライアントと協議を重ねてソリューションを探っていく付加価値の高いコンサルティング業務等は公認会計士・税理士が過去の経験やクライアントの要望を踏まえて初めてできる業務ではないかと思います。
とはいえ、業務の効率化を図る上でも、大手の監査法人や税理士法人ではAIを業務に取り入れています。
DXやAI等のITリテラシーは今や会計・税務でも必要な知識です。
資格取得は公認会計士・税理士の専門家となる第一歩ですが、自分の目指すキャリアに向けたスキルの獲得も視野に入れておく必要がありそうです。
【プロフィール】
荒井優美子(あらい・ゆみこ)
公認会計士・税理士
一橋大学法学部卒業後、コンサルティング会社勤務を経て公認会計士資格を取得。大手監査法人、大手税理士法人勤務後、米国留学(コロンビア大学国際公共政策大学院(MIA)、ニューヨーク大学ロースクール(LLM))を経て、大手税理士法人勤務。2025年7月より非常勤として勤務。 日本公認会計士協会の租税調査会専門委員(出版部会)、租税調査会法人税部門専門委員、修了考査委員(税務実務担当、2021年~2025年)。











