【論述に強くなる!財表理論講座】第2回:1株当たり当期純利益



全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる! 
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。


長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)

まずは問題にチャレンジ!

1株当たり当期純利益は,( ① )に係る当期純利益を( ① )の期中平均株式数で除して算定する。
( ① )に係る当期純利益は,損益計算書上の当期純利益から,( ② )に関連する項目で普通株主に帰属しない金額を控除して算定する。
( ① )の期中平均株式数は,( ① )の期中平均発行済株式数から期中平均自己株式数を控除して算定する。
潜在株式が( ③ )を有する場合,潜在株式調整後1株当たり当期純利益は,( ① )に係る当期純利益に( ③ )を有する各々の潜在株式に係る当期純利益調整額を加えた合計金額を,( ① )の期中平均株式数に( ③ )を有する各々の潜在株式に係る( ④ )を仮定したことによる( ① )の増加数を加えた合計株式数で除して算定する。

問題1
文中の空欄(   ①   )から(   ④   )にあてはまる適切な用語を示しなさい。

問題2
太字「潜在株式」とは何か,その定義を述べなさい。

解答

問題1

① 普通株式
② 剰余金の配当
③ 希薄化効果
④ 権利の行使

問題2

潜在株式とは、その保有者が普通株式を取得することができる権利若しくは普通株式への転換請求権又はこれらに準ずる権利が付された証券又は契約をいい、例えば、ワラントや転換証券が含まれる。

基本的な考え方

・1株当たり当期純利益及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益を開示しなければならない。

・1株当たり純資産額も注記しなければならない。

論述問題にチャレンジ!

1株当たり当期純利益及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益の開示目的は?

1株当たり当期純利益及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定及び開示の目的は、普通株主に関する一会計期間における企業の成果を示し、投資家の的確な投資判断に資する情報を提供することにある。

1株当たり当期純利益の算定は?

期首(4/1)における普通株式数500株、期中(7/1)に増資を行い、発行済株式数が800株まで増加した。当期純利益は89,000円であった。

普通株式の期中平均株式数:
500株×91日/365日+800株×274日/365日=725.20株

1株当たり当期純利益:
89,000円÷725.20株=122.72円

潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定は?

上記の資料に加えて、期首時点で、普通株式400株分のストック・オプション(権利行使価格800円)があり、期末まで権利行使は行われなかった。期中平均株価は1,000円とする。

潜在株式調整後1株当たり当期純利益:
普通株式に係る当期純利益+当期純利益調整額/普通株式の期中平均株式数+普通株式増加数

希薄化効果:
400株-800円×400株÷1,000円=400株-320株=80株

潜在株式調整後1株当たり当期純利益:
89,000円÷(725.20株+80株) =110.53円

〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。

〈バックナンバー〉
第1回:キャッシュ・フロー計算書


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