【連載】やさしくわかるGAM(Group Accounting Manual)~第3回:GAMの作成方法


角元兼太郎(BEYOND BOUNDARIES 角元公認会計士事務所代表・公認会計士)

はじめに

この連載は、連結財務諸表作成の際にあると非常に便利な「Group Accounting Manual(GAM)」について解説しています。

第3回目は、ようやくGAMの作成方法です。

それで第1回第2回と同様、ビヨンドさんとバウンダリー先生、お願いします。

第1回はコチラ
第2回はコチラ

GAMを実際に作ってみよう

ビヨ:GAMとは何かわかりましたし、作成する意義もわかったのですが、一体どこから手を付ければよいのやら…。

バウ:GAMは「連結財務諸表を作成する上で、グループ全体で従うべき会計方針をまとめた資料」だったよね。

だから、GAMの中身を「勘定科目ごとに、会計方針を財務諸表の注記よりも詳細に記載したもの」と捉えてみよう。

進め方としては①既存資料の利用、②網羅性のチェック、③子会社担当者による確認の3ステップだね。

①既存資料の利用

バウ:①の既存資料の利用だけれども、そんなに難しく考えず手元にあるものを使って始めればよいのだよ。

ビヨ:ふむふむ、勘定科目ごとにまとめれば良いのですね。それならば、タスクが分解されて手を付けやすくなりそうです。

各勘定科目の担当者にも手伝ってもらおう。では、具体的に手元にあるものとは?

バウ:GAMを作成する上で一番助かるのはアニュアルレポートを作成しており、英文財務諸表の会計方針の注記が手に入る場合だね。

GAMは海外子会社に配布することになるので、英語で記載することとなる。

英文財務諸表の注記には当然、英文で会計方針が記載されているから、この会計方針に肉を付け足せば良い。

ここでいう肉とは、公表していない具体的な数値基準や詳細な適用方法などのことだよ。わかりにくい部分などは設例を追加すればなお良い。

ビヨ:英語で作成しなければいけないこともネックとなるので、会計方針を英文で記載しているものがあれば確かに助かりますね。

そもそも公表している会計方針は原則すべての会社で適用していなければなりませんし。

でも、私の会社はアニュアルレポートを作成していないのですが…。

バウ:なら、和文の財務諸表の会計方針を英文にしていけばよいね。GAMは外部に公表するものではないので、直訳ではなく、わかりやすい自然な英文にした方がよい。

また、GAMのように説明が必要な勘定科目を網羅していなくても、特定の勘定について、マニュアルを作成している場合があるでしょう。それを使うのもよいね。」

ビヨ:そういえば、過去に、滞留している棚卸資産を評価減する場合の処理について、全グループ会社にメールで通知したような…。

これ、使えますよね。

あとリースの基準が改正されるので、処理についての説明資料を作成しているところです。

バウ:そうそう、それらはそのまま使えそうだね。それに海外子会社に日本の会計基準を説明するメールのやりとりなんてものもあったりするでしょう?そんなものも参考になるね。

ビヨ:…(英語で説明しているものが全てあればいいんだけどさ)

ーここでバウはビヨの顔を見て何か察するー

バウ:そこは他社のアニュアルレポートを参考にするのはどうだい。

和文、英文、ともに確認できる日系企業のものを使いたくなるが、その場合、和文に引っ張られて英文が不自然になったりする場合もある。

だから、アメリカやイギリス企業のレポートも併せて使用した方がよいかもしれない。
もちろん、これらのレポートに対応する和文はないのだけれども十分参考になる。

ビヨ:はい、頑張ります。

身近に色々使えるものが分かって安心しました。

②網羅性のチェック

ビヨ:次は②の網羅性のチェックですね。

バウ:①を進めていけば、あらかたGAMの形になってくる。

次に記載が漏れている勘定がないか、説明が足りない箇所がないかどうか、②の網羅性のチェックが必要になるね。

まずは連結パッケージの勘定を確認して、本来必要なのに、説明が漏れている勘定がないかどう確認しよう。

そして、子会社単体の財務諸表があれば、会計方針の部分を比較して、親会社と差がある箇所がないかどうか確認する。

ビヨ:親会社と子会社の会計方針に差があるところは、当然GAMで説明が必要ですものね。

バウ:また四大監査法人が作成している日本基準とIFRSや米国基準の会計基準の差、すなわちGAAP差をまとめた資料なども参考になる。

日本基準と他の会計基準との差異があるものの、GAM上で取り扱っていない重要な項目がないかどうか確認してみるのも良いだろう。

ビヨ:多くの国でIFRSや米国基準を参考に自国の会計基準を作成しているから、IFRSや米国基準と日本基準が異なるところは、他の国の会計基準とも差が出やすいからですね。

バウ:おっ、さすがビヨンドさん、理解が早いね。

また実際に親会社で入力している海外子会社の日本基準への調整仕訳についても、GAMで説明できているかどうか確認してみよう。

ビヨ:確かに親会社が入力している仕訳を、子会社側がGAMを見て入力できないと、その意義がゆらいでしまいますもんね。

③子会社担当者による確認

バウ:そうだね。最後の③の子会社担当者による確認は、今のビヨンドさんの発言が関係する。

GAMを見て、子会社側で親会社との会計方針との差を調整する仕訳を反映してもらわなければならない。

そのためには子会社側にGAMを確認してもらい、理解できない所はないかどうか、②の網羅性のチェックでもフォロー出来ていない不足部分がないかどうか等を洗い出さなくてはいけない。

ビヨ:子会社も巻き込まなくてはいけないので、ここが一番大変そうですね。とは言えGAMを完成させるためにも、GAMを使って調整仕訳を入力してもらうためにも必須ですね。

有形固定資産を例にとってみよう

バウ:そうだね。次は具体例を考えてみようか。有形固定資産を例にGAMを作ることを想定してみよう。

ビヨ:はい!私の会社の財務諸表の会計方針で記載している項目は…っと。減価償却方法と耐用年数の範囲について記載することが必要ですね。

そして…。

バウ:会計方針に記載していない項目でGAMに記載しておいた方がよい項目はないかい?

GAMを作成するときには、取引を帳簿で表現することを想像して、何の情報が必要なのか考えることが役に立つよ。

ビヨ:うーん、あっ、固定資産として資産計上するか、費用処理するかの具体的な判断基準の記載もあると良いのか。

他には、先ほどバウンダリー先生から習ったIFRSやUS基準と日本基準で差があるところについては…、典型的な論点は借入コスト。

でもうちの会社は借入まで行って購入するような固定資産はないし…。

バウ:そう思ったら、必要になったときに記載することにして、思い切って省いても良いかもしれないね。

GAMは一度作ったからと言って終わりではない。
必要に応じて追加や変更が必要となる。

これでGAMの作成方法について具体的なイメージが出来たのではないかな。

最後に、いったんGAMが出来た後の話とその先の将来についての話をしよう。

~最終回(第4回)に続く~

【著者プロフィール】
角元 兼太郎(かくもと・けんたろう)



BEYOND BOUNDARIES 角元公認会計士事務所代表
公認会計士

理系大学院修了後、有限責任 あずさ監査法人の国際部、事業会社経理管理職、独系法律特許事務所グループの監査部門パートナーを経て独立。「被監査会社の不満を解消する監査」を掲げ、外資系日本法人を中心に監査対応や決算支援を行う。親会社監査人を問わない子会社監査や、グループ・アカウンティング・マニュアル作成など、実務に即した希少性の高いサービスを展開している。



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