
角元兼太郎(BEYOND BOUNDARIES 角元公認会計士事務所代表・公認会計士)
はじめに
連結財務諸表作成の際にあると非常に便利な「Group Accounting Manual(GAM)」についての連載、第2回目です。
第1回では、GAMとは何かについて、連結会計課のビヨンドさんとバウンダリー先生の会話形式で説明しました。
第2回も、2人に登場してもらい、GAMのメリットについて詳しく説明してもらいます。
メリットを知ることで、ビヨンドさんのGAM作成に対するモチベーションが上がると良いのですが、はたして…。
第1回はコチラ
「Group Accounting Manual」を作ったらどんな良いことがあるの?
バウ:GAMを作ると、子会社が親会社との会計方針の差を把握しやすくなるから…。
ビヨ:親会社と会計方針を揃えた、より適切な連結財務諸表を作成することが出来る、ですよね?
私にとってうれしいのは、子会社側が会計方針の差を調整してくれるので、親会社側の経理の負担が減ることですね。
あと引継ぎも楽になりそう…。
バウ:おっ、色々挙げてくれてありがとう。
私が整理すると…、
①より適切な連結財務諸表の作成
子会社の経理担当者の方が自国の基準や自分たちの会計方針に精通しています。彼らがGAM記載の会計方針と自社の会計方針を比較することにより、親会社との会計方針の差をより正確かつ網羅的に発見できます。それらを調整することにより、親会社と子会社の会計方針が統一された、より適切な財務諸表を作成することが可能です。
②内部統制の観点から有用
連結パッケージを作成する際に指針となるGAMがあるので、適切な連結財務諸表を作成するという財務報告プロセスが強化されると考えられます。
③親会社経理部門の負担軽減
子会社側で会計方針の差異の調整が完了するため、負担が増えがちな親会社経理の作業が大幅に減少します。
④円滑なコミュニケーション
会計方針についての話が出た際、軸となる、GAMがあるので、現状の採用している会計方針等との比較がしやすく、コミュニケーションが取りやすくなります。子会社の会計方針はどのようになっているのか尋ねるより、親会社の会計方針であるGAMとどのような点で異なるのか話す方が、説明をする方も聞く方も容易です。
⑤引継ぎの容易化
海外子会社の担当者や、日本側で海外子会社を担当する従業員が変更になった際、GAMが引継資料の一つとして機能します。
となるね。
監査法人からの要請も①、②からくるものが多いのではないかな。
ビヨ:これだけメリットを挙げることができるなら、あながち監査法人も適当なことを言っている訳ではないのですね。
バウ:オイオイ、監査法人が聞いたら、泣くようなことを言うのはやめなさい。
ところで確認になるけれど、GAMを作ったあと、子会社の決算手続はどうなるのだっけ?
ビヨ:税務申告等のために、その国の会計基準に基づいた財務諸表は作る必要があるし、連結財務諸表作成のために親会社の会計方針に従った連結パッケージも必要となる。
だから、現地の会計基準に基づいた試算表を元に、科目を適宜集計して現地財務諸表を作成する、そして、現地基準の試算表の数値が親会社の会計方針に従った数値となるように、調整仕訳を加えて連結パッケージを作成するという理解で良いですよね?
バウ:そうそう、それが標準的だろうね。
初めから連結パッケージの数値を作成するのではなく、子会社の会計方針に基づき作成された現地基準の試算表に親会社の会計方針に調整仕訳を子会社の方で加えることになる。
親会社で行っていた作業を子会社側で行うので、GAMが出来たからといっても、作成主体が部分的に変わるだけ。
全体の流れが大きく変わるわけではない。でもGAMを作成する意義は十分理解してもらえたのではないかな?
ビヨ:はい、大丈夫です。
監査はどうなっているの?
ビヨ:さきほど監査法人の話が出てきましたが、ところで子会社の監査人はどのように監査をすることになるのですか?
バウ:子会社の監査の対象となりそうなモノが2つあるのはわかるかな?
ビヨ:まずは連結パッケージですよね、それと、現地の会計基準で作成された財務諸表か。
現地の会計基準で作成された財務諸表に対する監査を必須とする国もありますものね。
バウ:そう、GAMに基づいて作成された連結パッケージと、現地の会計基準で作成された財務諸表の2つが監査の対象になるね。
監査人も連結パッケージに監査意見を出す場合は、GAMに基づいて連結パッケージが適正に作成されているかどうか判断することになるし、現地の財務諸表に監査意見を出す場合は、現地の会計基準に基づいて財務諸表が適正に作成されているかどうか判断することになる。
ただ、必ずしもすべての海外子会社が、連結財務諸表の監査対象になるわけではないし(注)、現地財務諸表の監査を義務づけられているわけではないから、監査を受ける会社は、子会社がどのような目的で監査を受けるか把握する必要があるね。
(注)改正された監査基準報告書600が2024年4月1日から開始する事業年度から適用になりました。その結果、子会社の適正意見を中心に監査を行う「会社単位」の考え方から、連結財務諸表の勘定科目ごとに判断する「勘定単位」中心の考え方に変わりました。ほぼ同様な国際監査基準600が先駆けて適用になりましたが、実務では依然として、子会社の監査人に監査意見を求めるケースがまだまだ多く見られます。
ビヨ:GAMがなかったら、海外子会社の連結パッケージに対する監査はどうなっているのですか?
バウ:GAMがない場合、監査人は連結パッケージが現地の会計基準に準拠、もしくは日本基準に準拠して適正かどうかの意見を出すことになるね。
ただ、後者は日本から赴任している会計士が監査に関与していない限り、実際は厳しいのではないかな。
ビヨ:GAMがあった方が、連結パッケージが親会社の会計方針に準拠して適正かどうか、子会社監査人によりしっかり監査してもらえて良さそうですね。
GAMを作成するメリットもわかったので、やる気が湧いてきました。
でも見たこともないGAMをどうやって作成すればよいか見当がつかない。
バウ:それでは、次回、GAMの作り方について見ていこう!
~第三回に続く~
【著者プロフィール】
角元 兼太郎(かくもと・けんたろう)
BEYOND BOUNDARIES 角元公認会計士事務所代表
公認会計士
理系大学院修了後、有限責任 あずさ監査法人の国際部、事業会社経理管理職、独系法律特許事務所グループの監査部門パートナーを経て独立。「被監査会社の不満を解消する監査」を掲げ、外資系日本法人を中心に監査対応や決算支援を行う。親会社監査人を問わない子会社監査や、グループ・アカウンティング・マニュアル作成など、実務に即した希少性の高いサービスを展開している。











