
角元兼太郎(BEYOND BOUNDARIES 角元公認会計士事務所代表・公認会計士)
はじめに
はじめまして、私は公認会計士の角元と申します。
今回の連載ではGroup Accounting Manualについて物語風にわかりやすく説明します。
私は外資系企業との仕事が多く、数多くの企業のGroup Accounting Manualに出会い、お世話になってきました。
日本企業ではあまり馴染みのないGroup Accounting Manualの意義や作成方法のヒントなどをつづっております。
ぜひ、気軽な気持ちで読んでいただければと思います。
「Group Accounting Manual」って何?
ここは、とある会社の経理部、何やら連結会計課のビヨンドさん(以下、ビヨ)が困っています。そこでバウンダリー先生(以下、バウ)に相談することにしたようです。
ビヨ:バウンダリー先生、監査法人がGroup Accounting Manualを作るべきだと言ってきました(チッ、監査法人、まためんどくさいこと言いやがって)。
調べても書籍やネットでも殆ど扱っていないし…。
そもそもGroup Accounting Manual(以下、GAM)って何でしょうか。
バウ:おいおい、ビヨンドさん、心の声が漏れ出しているよ。
GAMは「連結財務諸表を作成する上で、グループ全体で従うべき会計方針をまとめた資料」のことだね。
Global Accounting Policies、Group Accounting Guidelineなど、会社によって呼び方は異なる場合もあるけれど、基本的に内容や目的は同じだね。
ところでビヨンドさんの会社では、連結財務諸表の作成のために、各子会社からBS、PL、CFや各種開示に必要な情報を記載した連結パッケージを回収していると思うけれど、その時に大事なことは何だと思う?
ビヨ:漏れなく、期限通りに回収することですよね。
バウ:もちろん、それも大切だけれど、会計方針についてはどうかな?
企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」17項にどう書いてある?
ビヨ:(チッ、めんどくさい人だな)
連結財務諸表を作成する場合、「同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、親会社及び子会社が採用する会計方針は原則として統一する。」ですよね。
バウ:そうだね。
連結財務諸表を作成するには、会計方針を原則統一しなければならない。
今、ビヨンドさんの会社では、どうやって海外子会社の会計方針を親会社のものと揃えているかな?
グループの会計方針をどう統一するか?
ビヨ:うっ…。
親会社の私たちが、海外子会社の現地の会計基準で作成された数値に、日本の会計基準と海外現地の会計基準が異なりそうな部分について調整する仕訳をなんとなく切っています。
バウ:異なりそうな部分?
なんとなく??
親会社と子会社、特に海外子会社との会計方針の違いを網羅的に把握するのは難しいよね?
ちゃんと親会社の会計方針に揃えられているかな?
ビヨ:モゴモゴ…。
IFRSやUS基準は調べられても、それ以外の会計基準の情報を入手するのは難しいし…。
あとは重要性でパス…?
バウ:そうだね、親会社の経理が頑張るのも限界があるよね。
そして会計基準の違いも生じないように、調整しなくてはいけないけれど、会計方針の差が生じる原因は、会計基準の差だけではないよね?会計方針の差が生じるのは、3パターンが考えられる。
一つ目は先ほども話した、「親会社の国の会計基準と子会社の国の会計基準に差異がある事項」、例えば、のれんの償却だね。
次に、「会計基準がほぼ同じでも、採用できる会計方針が複数ある事項」、例えば、減価償却方法。
最後に、「会計基準に具体的な定めがなく、個々の企業が会計基準に準拠するように決定する事項」、例えば、棚卸資産を評価減する場合の評価減割合などだね。
ビヨ:会計基準までは追えたとしても、子会社がどのような会計処理を採用しているかまで把握していないケースは結構あるかも…。
バウ:そう、そんなときにあったら、助かるのが…。
ビヨ:GAMですかぁ。確かに親会社がグループで採用する会計方針をまとめたものを作っていれば、各子会社はGAMに従って連結パッケージを作成することが出来ますね。
そうなれば、親会社の経理が子会社の会計方針を詳細に把握する必要はなくなる。
バウ:その通り!各子会社の担当者は自分の国の会計基準はわかっているだろうし、子会社である自身の採用している会計方針もわかる。そこにGAMがあれば親会社との会計方針の差がわかるね。
私が知っている欧州の国は小さい会社でもわりとGAMを作っている。
きっと日本よりルールベースで物事を決めていくのと、責任の所在を明らかにする文化だからじゃないかな。
ビヨ:確かにルールを作ってしまえば、それに従わない方に責任が問われますね。
現在私の会社で行っているように、親会社で仕訳を切っているより色々な点で良いのかも。
バウ:GAMを作成するメリットがわかってきたね。
それでは、メリットをもう少し詳しく見ていこう。
~第二回に続く~
【著者プロフィール】
角元 兼太郎(かくもと・けんたろう)
BEYOND BOUNDARIES 角元公認会計士事務所代表
公認会計士
理系大学院修了後、有限責任 あずさ監査法人の国際部、事業会社経理管理職、独系法律特許事務所グループの監査部門パートナーを経て独立。「被監査会社の不満を解消する監査」を掲げ、外資系日本法人を中心に監査対応や決算支援を行う。親会社監査人を問わない子会社監査や、グループ・アカウンティング・マニュアル作成など、実務に即した希少性の高いサービスを展開している。











