税理士・会計士・日商1級 絶対落とせない財表理論45ー総復習編⑤:引当金


村上翔一(敬愛大学准教授)

*総復習編では9回にわたり、本連載の復習を行います。

Q1 会計上、負債には3種類存在する。まず、法律上の債務であり、それらは( ア )と( イ )に分類される。( ア )とは、履行期日、相手、金額のすべてが定まっている債務である。( イ )とは、上記3要素のうち少なくとも1つが定まっていない債務である。これらは、企業の資産を減少させるため、負債として計上される。この他、法律上の債務ではないが、それと同様に将来に資産の減少をもたらすことが予測される経済的負担を負債として認識する。これを( ウ )と呼ぶ。

A 
ア 確定債務
イ 条件付債務
ウ 会計的負債

条件付債務と会計的負債は、確定債務ではなく、期間損益計算の観点から引当金として処理される。

Q2 引当金とは、将来の特定の( ア )であって、その発生が( イ )以前の事象に起因し、( ウ )の可能性が高く、かつ、その金額を( エ )に見積ることができる場合に、処理される( ア )項目に対する相手勘定である。これは将来生じる( ア )を当期の収益に対応させ、適正な( オ )を行うために計上される。また、ここで( ア )といったとき、収益控除も含まれる。なお、( ウ )の可能性が低い項目は( カ )と呼ばれ、引当金を計上することはできない。

A
ア 費用又は損失
イ 当期
ウ 発生
エ 合理的
オ 期間損益計算
カ 偶発事象

企業会計原則注解、注18
収益費用中心観に基づいた引当金規定であり、資産負債中心観における引当金と比較すると、その債務性の有無が異なる(引当金に関する論点の整理、par.23)。

Q3 引当金は貸借対照表の表示面において分類することが可能であり、( ア )と( イ )に分類される。( ア )とは、負債の部に表示される引当金であり、ほとんどの引当金がこれに当たる。( イ )とは、資産の実質価額を表示するための引当金であり、貸倒引当金がこれに当たる。

A
ア 負債性引当金
イ 評価性引当金(資産控除性引当金)

引当金を損益計算書の観点から分類すると、収益控除性引当金、費用性引当金、損失性引当金に分類することができるとされたが、収益控除性引当金については、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」との関わりが問題となる。

Q4 引当金の例として退職給付引当金がある。退職給付とは、一定の期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて、退職以後に従業員に支給される給付をいい、一括支給の( ア )及び分割支給の( イ )等がその典型である。この退職給付は基本的に労働協約等に基づいて従業員が提供した労働の対価として支払われる賃金の( ウ )であると解釈し、勤務期間を通じた労働の提供に伴って発生すると捉える。この場合、( エ )を採用している企業においては、一定の掛金のみを外部に積み立て、追加的な拠出義務を負わないため、掛金を費用処理するのみで足りるが、( オ )を採用している場合、退職時に従業員に支給する金額が定まっているため、退職時に支給する額をもとに当期計上額を計算する。( オ )の退職給付は、その発生が( カ )以前の事象に起因する将来の特定の費用的支出であり、その支出の原因又は効果の期間帰属に基づいて費用として認識することになる。期末の退職給付引当金の金額は、積立・運用に過不足がなければ、( キ )から( ク )を控除した金額となる。

A
ア 退職一時金
イ 退職年金
ウ 後払い
エ 確定拠出制度
オ 確定給付制度
カ 当期
キ 退職給付債務
ク 年金資産

退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書、三・2
退職給付に関する会計基準(企業会計基準第26号)、pars.3-5、13、31
退職給付に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第25号)、par.4
退職給付は勤務期間を通じた労働の提供に伴って発生すると考えられることから、当期の費用として処理される。また、当該退職給付に対する支払いは後日となることから賃金の後払いと捉えている。

◎復習しましょう!
総復習① 棚卸資産
総復習② 有価証券
総復習③ 有形固定資産
総復習④ リース

【執筆者紹介】
村上 翔一
(むらかみ しょういち)
明治大学大学院経営学研究科博士後期課程修了(博士(経営学))。明治大学専門職大学院会計専門職研究科教育補助講師、敬愛大学専任講師を経て現在敬愛大学経済学部准教授。
<主な論文>
「保有者における電子マネーの会計処理」『簿記研究』(日本簿記学会)第2巻第1号、2019年(日本簿記学会奨励賞)
「ICOに関する会計処理」『敬愛大学研究論集』第98号、2020年
「ブロックチェーン技術の進展と簿記」『AI時代に複式簿記は終焉するか』(岩崎勇編著)、税務経理協会、2021年
「コンセンサス・アルゴリズムの観点に基づく暗号資産の会計処理―マイニング、ステーキング、ハーベスティングの理解を通じて―」『敬愛大学研究論集』第100号、2021年 他

*本連載は、「会計人コース」2019年11月号「特集:勉強したくなる「習慣化」のススメ 7日間理論ドリル」を大幅に加筆修正したものです。


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