村上翔一(敬愛大学准教授)
*総復習編では9回にわたり、本連載の復習を行います。
Q1 有形固定資産とは、収益獲得のために長期間使用する物理的な形態を有する資産である。有形固定資産には、使用や時の経過等により価値が減少する( ア )、採掘・伐採等によって数量的に価値が減少する( イ )、通常、価値が減少しないとされる( ウ )がある。
A
ア 償却性資産
イ 減耗性資産
ウ 非償却性資産
企業会計原則、第三・五
連続意見書第三、第一・一、第一・二、第一・六・2
償却性資産に適用される生産高比例法と減耗性資産に適用される減耗償却は、手続き的には同様であるが、前者は全体として機能するが、後者は実際に物量が減耗して枯渇するという違いがある(連続意見書第三、第一・六・2)。
Q2 償却性資産は、棚卸資産とは異なり、その使用によって数量的には減少しないが、確実に価値減少が生じる。償却性資産における減価原因には物質的減価と機能的減価があり、前者には使用と時の経過、後者には技術革新等による資産の旧式化で生じる( ア )と産業構造の変化等で生じる( イ )が存在する。これら価値減少分を各期間に費用として計上する。この償却性資産に対する費用配分の手続きを( ウ )と呼ぶ。( ウ )の目的は、適正な費用配分ひいては( エ )を正確ならしめることとされ、( オ )・( カ )に実施することが求められる。このため、( ウ )を行うにあたっては、取得原価、残存価額、期間または生産高といった原価配分基準を定める必要がある。
A
ア 陳腐化
イ 不適応化
ウ 減価償却
エ 毎期の損益計算
オ 計画的
カ 規則的
連続意見書第三、第一・二、第一・五
減価償却が計画的、規則的に実施されることにより、減価償却費が任意の金額となることを防ぐ。この計画的、規則的に実施される減価償却を正規の減価償却と呼ぶ(連続意見書第三、第一・二)。
Q3 有形固定資産の取得原価の算定方法は取得方法によって異なる。購入の場合、購入代価に付随費用を加えて取得原価とする。自家建設の場合、( ア )に従って製造原価を計算し、これに基づいて取得原価とする。なお、建設に要する( イ )で稼働前の期間に属するものは、これを取得原価に算入することができる。交換の場合、自己所有の有形固定資産と交換に有形固定資産を取得した場合、交換に供された自己資産の( ウ )をもって取得原価とし、自己所有の株式・社債等と有形固定資産を交換した場合、当該有価証券の( エ )又は( ウ )をもって取得原価とする。贈与の場合、有形固定資産の( オ )をもって取得原価とする。
A
ア 適正な原価計算基準
イ 借入資本の利子
ウ 適正な簿価
エ 時価
オ 公正に評価した額
連続意見書第三、第一・四
現物出資によって固定資産を受け入れた場合には、出資者に対して交付された株式の発行価額をもって取得原価とする(連続意見書第三、第一・四・3)
Q4 残存価額とは、有形固定資産の耐用年数到来時において予想される当該資産の売却価格又は利用価格である。この場合、( ア )等のために費用を要するときには、これを売却価格又は利用価格から控除した額をもって残存価額とする。なお、当該( ア )が法律上の義務に基づく場合など、( イ )に該当する場合には、債務として負担している金額が合理的に見積られることを条件に、( イ )の全額を負債として計上し、同額を有形固定資産の取得原価に反映させる処理を行う。
A
ア 解体、撤去、処分
イ 資産除去債務
連続意見書第三、第一・四
資産除去債務に関する会計基準(企業会計基準第18号)、pars.31-32
減価償却計算の要素である残存価額には、解体、撤去、処分等のための費用を反映させる。この時、残存価額がマイナスになる場合が存在し、これに対して引当金処理、資産負債両建処理が提案された(資産除去債務に関する会計基準、pars.31-34)。
Q5 取得原価を各期に配分する基準には、期間(耐用年数)と生産高がある。減価が時の経過を原因として発生する場合、( ア )を配分基準とすべきであり、減価が主に有形固定資産の利用に比例して発生する場合、( イ )を配分基準とするのが合理的である。前者の配分基準方法には、定額法、定率法、級数法、後者の配分基準方法には生産高比例法がある。
A
ア 期間
イ 生産高
連続意見書第三、第一・五
Q6 有形固定資産の取得原価から減価償却等を控除した金額が期末の評価額として貸借対照表価額となる。しかし、資産の( ア )が低下し、資産への投資額の回収が見込めなくなった場合、( イ )を反映させるように帳簿価額を減額する処理を行う。この処理を( ウ )処理と呼び、( エ )の下で行われる帳簿価額の臨時的な減額である。
A
ア 収益性
イ 回収可能性
ウ 減損
エ 取得原価主義
固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書、三・1、三・3
従来、耐用年数の短縮や残存価額の修正に基づいて一時的に行われる処理として臨時償却が存在した。臨時償却と減損の違いは、対象となる固定資産の収益性の低下の存在である(固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書、三・2)。なお、臨時償却は、新たな事実の発生に伴う見積りの変更を将来の期間に反映させる方法(プロスペクティブ方式)の採用により、廃止された(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準、par.57)。
【執筆者紹介】
村上 翔一(むらかみ しょういち)
明治大学大学院経営学研究科博士後期課程修了(博士(経営学))。明治大学専門職大学院会計専門職研究科教育補助講師、敬愛大学専任講師を経て現在敬愛大学経済学部准教授。
<主な論文>
「保有者における電子マネーの会計処理」『簿記研究』(日本簿記学会)第2巻第1号、2019年(日本簿記学会奨励賞)
「ICOに関する会計処理」『敬愛大学研究論集』第98号、2020年
「ブロックチェーン技術の進展と簿記」『AI時代に複式簿記は終焉するか』(岩崎勇編著)、税務経理協会、2021年
「コンセンサス・アルゴリズムの観点に基づく暗号資産の会計処理―マイニング、ステーキング、ハーベスティングの理解を通じて―」『敬愛大学研究論集』第100号、2021年 他
*本連載は、「会計人コース」2019年11月号「特集:勉強したくなる「習慣化」のススメ 7日間理論ドリル」を大幅に加筆修正したものです。