太田康広
今般のコロナ禍は、第二次世界大戦以来最大の経済ショックでしょう。
大きな不況がやってきます。
そして、それによっていろいろ大きく変わると予想します。
そして、変化の多くは不可逆です。コロナ禍が収束しても戻りません。
予想される変化として明らかなのは、会議、面談、授業、セミナーなど、人とのコミュニケーションの多くがオンラインに移行するということです。
これはすでに起こっていて、たとえば大学の授業はZoom/Webexなどのオンライン会議システムを使ったものに移っています。
企業の会議や面接などもオンライン化されています。
◆オンライン化の影響
オンラインで仕事をするということは、すべてのデータ、手続きがコンピュータ上で処理され、インターネット上で通信されるということです。
そうなると、紙と判子とFAXと電話で仕事をしてきた旧態依然とした組織は、変化に適応しないかぎり、一気に淘汰されます。
一番変化が求められるのは、不動産、役所、登記などの法律関係です。
会計・経理は、これまでも電子化・クラウド化などを徐々に進めてきたので、ホワイトカラーの仕事のなかでは比較的対応が進んできた分野でしょう。
アフターコロナでは、この流れがさらに加速するはずです。
与えられた証憑から仕訳を切って財務諸表を作成するような作業はどんどん自動化が進みましょう。
人間の判断がいらないものは自動化できます。
これまで、簿記・会計は退屈だといわれてきましたが、良くも悪くも退屈な部分はなくなります。
一方、のれんの減損のように人間の判断が必要なものは残ります。
いや、そういうものしか残らないといったほうが正確でしょうか。
財務諸表データの利用の局面でも、ROICやCCCやインタレスト・カバレッジ・レシオを計算して一定の基準と照らして機械的に何かを判断するような古典的な経営分析は人間の仕事ではなくなりましょう。
むしろ、原価の時系列データから、工場の生産性の変化の兆しを読み取り、その分析結果からどの工程に問題がありそうか探り当てるような能力や、マーケティング戦略の変更に伴い、価格改定したのに売上げが予測されたように増加していない理由を突きとめ、次の施策を打つといった能力が求められるはずです。
こうした兆候をつかむのに、従来は、経験と勘が重要視されてきました。
しかし、今後は、経済学をはじめとした社会科学的知見にもとづいて仮説を立て、それを計量経済学を駆使してデータにもとづいて検証していく研究者のような能力が求められていくのではないでしょうか。
実務家の多くがデータサイエンティストになっていくということです。
いわゆるAIもそういうデータ分析の補助的なツールと考えるのが現実的でしょう。