新型コロナウイルスとオンライン化


◆オンライン化と成果主義

 テレワーク・在宅勤務では、従業員が働いている姿を上司が直接観察することができないので、何らかの指標にもとづいたマネジメント・コントロールが重要になってきます。
 現在、在宅勤務する従業員のキータイプをすべて記録してそれをAIで分析するような勤怠管理ソフトが出てきていますが、このようなソフトでプロセスを管理することはあまり重要だとは思いません。

 たしかに製造業や事務職の単純作業は、作業強度を保って一定時間作業すれば一定の成果が上がります。
 こうしたタイプの仕事であれば、マジメにやっているかどうかモニターすることの意義は大きいでしょう。

 しかし、テレワークに向いている仕事の多くは、生産性が時間に比例するタイプのものではありません。
 ちょっとした創意工夫によって生産性が何倍にもなる可能性を秘めたものもあります。

 こういうタイプの仕事においては、従業員がマジメに働いているかどうかより、実際に成果が出ているかどうかが重要です。
 そこで、結果重視の成果主義的な業績評価が主流になり、プロセスではなく結果で人や組織を評価するように、管理会計、業績評価、人事評価などの仕組みが変化していくと予想します。
 働く人の裁量の余地が大きくなり、仕事というものがかなりクリエイティブなものとなりましょう。

 オンライン作業やテレワークが普及し、回線速度やコンピュータの処理速度が上がり、いろいろなツールが整備され、そして働く人の裁量の余地が拡がってくると、個人個人のほんのちょっとした能力の違いが何倍にも拡大されて大きな労働生産性の違いにつながると予想します。
 その結果として、待遇の差、貧富の差は開くはずです。

◆新しい環境に適応しよう

 今般のコロナ禍のように、外生変数(パラメータ)が大きく変わるとき、プレーヤーの最適行動も大きく変わります。
 強い者が生き残るのではなく、新しい環境に適応できる者が生き残ります。

 今は、全力で新しい環境に適応しましょう。

〔著者紹介〕
太田 康広
(おおた やすひろ)
1968年生まれ、1992年慶應義塾大学経済学部卒業、1994年東京大学より修士(経済学)取得、1997年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、2002年ニューヨーク州立大学バッファロー校スクール・オブ・マネジメント博士課程修了、2003年ニューヨーク州立大学経営学博士。カナダ・ヨーク大学アシスタント・プロフェッサーを経て、2011年より慶應義塾大学ビジネス・スクール教授。事業仕分け仕分け人、行政改革推進会議 歳出改革ワーキンググループ構成員、会計検査院特別研究官、防衛装備庁経費率研究会会長代理、契約制度研究会委員、ヨーロッパ会計学会アジア地区代表理事、日本経済会計学会常務理事等を歴任。
<著書>
『ビジネススクールで教える経営分析』、日経文庫、2018年
『ビジネス・アカウンティング(第4版)』、中央経済社、2019年、共著
『分析的会計研究』、中央経済社、2010年、編著

中央経済社から刊行している太田先生の著書・翻訳書

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