並木秀明
3月は別れの月、4月は出会いの月ともいう。2月になると感傷的になる学生がいる。数年前、「大粒の涙を浮かべて泣いている学生がいた」。理由を聞くと「あと2ヵ月で卒業、小学生からの学校生活最後だと思うと急に悲しくなった」そうである。
人、過ぎ去りし日を振り返ったとき、楽しい思い出、悲しい思い出が心ひそかにポツリ、ポツリと湧いてくる。生きることは、思い出作りの段々道を作りゆくことではないかと感じる。年末に、30年ぶりの同窓会に出席したこともあり、感傷的な書き出しとなった。
昔の独りぼっちの海外旅行エピソード
同窓会で「昔、おまえは3ヵ月間親にも言わず旅行へ行ったんだっけ?」なんて古いことを言いだした悪友がいた。そんなことから思い出したヨーロッパ旅行の思い出話である。旅は、羽田からアンカレッジ経由の北回りの団体旅行の空席を狙った格安旅行である。旅は、イタリアのレオナルド・ダ・ヴィンチ空港から始まりイギリスのヒースロー空港から帰国するまでの期間無制限の無計画旅行である。
エピソード1 レオナルド・ダ・ヴィンチ空港
入国審査において洗剤で足止めを食ったのである。麻薬と勘違い?、イタリア語が堪能ではないため「ソープ、ウオッシュ、石鹸、洗剤…」無駄と知りつつ抵抗し、匂いも嗅いでもらった。そんなとき通りがかったのは、日本からの団体客である。イタリア語の堪能な添乗員さんに助けてもらった。
エピソード2 ローマのホテルにて
苦労して空港を出たもののローマへ行く手段がわからない。再度、親切な添乗員さんが助けてくれた。団体客のバスに乗せてくれたのである。しかし、到着したホテルはローマから離れた高級ホテル。ローマまで地下鉄で15分ほどということで親切な添乗員さんと別れた。
次の苦労は地下鉄駅探しであった。行きかう人に「メトロポリターナ?」と問うとホテルを指す。「わけわからん。えーい、高級ホテルに泊まってしまえ」と、やけっぱちにホテルへ戻ると、ホテルの地下が地下鉄の駅の入り口であった。ローマに着いたのは、午後8時頃。日本円で一泊1,200円ほどのホテルを見つけ、長い一日が終了した。ただし、シャワーは順番待ち。わたしの順番ではお湯は水に変わっていた。時は、寒さのしみる2月の中旬であった。
エピソード3 貨幣の交換
スイスからドイツへ移動するため、使いきれなかったスイスフランをドイツマルクに交換するときの出来事である。両替所でスイスフランを出し「プリーズ・チェンジ・マルク」、これを4、5回繰り返したが相手に通じない。困ったあげくドルに交換ならと思い「プリーズ・チェンジ・ダラー」と言った。何と相手は「オー、ドイッチェマルク」と返事をし、無事交換が終了した。今では、笑い話だが当時の自分の安堵感が回想される。
エピソード4 ローテンブルクまでの旅
今では有名なドイツのおとぎのような町、それがローテンブルクである。事前に調べたバス停から30分の道のり。しかし、2時間待ってもバスは来ない。見かねた近所のおばさんが英語で「サマーオンリー」と教えてくれた。サマーとは、4月から10月までである。3月初旬の寒い早朝の朝の出来事であった。
<執筆者紹介>
並木 秀明(なみき・ひであき)
千葉経済大学短期大学部教授
中央大学商学部会計学科卒業。千葉経済大学短期大学部教授。LEC東京リーガルマインド講師。企業研修講師((株)伊勢丹、(株)JTB、経済産業省など)。青山学院大学専門職大学院会計プロフェッション研究科元助手。主な著書に『はじめての会計基準〈第2版〉』、『日商簿記3級をゆっくりていねいに学ぶ本〈第2版〉』、『簿記論の集中講義30』、『財務諸表論の集中講義30』(いずれも中央経済社)、『世界一わかりやすい財務諸表の授業』(サンマーク出版) などがある。
※ 本稿は、『会計人コース』2020年3月号に掲載した記事を編集部で再編成したものです。
記事一覧
第1回:恋と愛と会計人コース
第2回:生きていくために必要な力
第3回:筆記具蒐集
第4回:勉強の成果
第5回:合格発表から年末年始
第6回:覚える、忘れる、思い出す
第7回:海外旅行でのエピソード
第8回:出会いがもたらしたもの
第9回:タイムマシン
第10回:季節の変わり目
第11回:本試験までの勉強
最終回:試験日までの最終アドバイス