【気まぐれ並木道】第2回:生きていくために必要な力


並木秀明

雑誌の発売時期

会計人コース10月号は、9月初旬の発売である。月刊誌の雑誌の多くは、月数より一月ほど早く発売される。その理由を調べてみると、昔からの物流関係が一要因としてあるようだ。執筆者の立場では、10月号を9月初旬に発売されると、その執筆はさらに一月前の7月下旬ということになる。

日本には、四季があり季節ごとに気温や街並みの風景も一変する。わたくしも7月に10月という季節を意識して「暑さも峠を越え、勉強に適した時期に突入しようとしている」なんて書きたいが、現実は長い梅雨が終了し、猛烈な暑さの中で原稿を書いているのである。

これは、この日記のタイムラグを読者に知ってもらうためのプロローグである。

生きていくために必要な力

 生きていくためには、どんな力が必要なのか。「そりゃあ努力だろう」と一言でいえば簡単である。いまもって、よくわからないが、アドバイスはできる。そのアドバイスも当てにはならないので、これからの人生の「何か足しになれば儲けもの」と思って読んでほしい。

(1) 潜在能力

中学生の頃だった。「あいつは、頭がいいからやればできるのになぁ」と言われる同級生がいた。この「やれば」がむずかしい。この見えない内側の力を潜在能力というのであろう。潜在能力を引き出すには「勉強」すればよい。では勉強と何か。国語辞典には「努力をして困難に立ち向かうこと」と書いてある。勉強という行動を起こさなければ永遠に潜在能力は目覚めることがなく埋もれたままになってしまう。

(2) 体力と集中力と気力

季節の変わり目に突入する頃のことである。体調不良に陥り、喉が痛い、咳が出る、節々が痛い、季節の変わり目の最前線に乗った証拠である。自分の人生で主人公は自分である。体調不良ごときで「死ぬ?」。いいや、主人公は死んではいけない。しかし、体調不良はこんなにも集中力、気力を欠くものだということ実感するものなのである。これからの受験生活では、体調不良は要注意である。特に「風邪なんか引いたことがない」などと言っている人ほど痛い目に遭う。数日の体調不良は、1月分の記憶の貯蓄を失いかねない。人生の「忘れると」は、スゴロクの「振り出しに戻る」のと同じような羽目になる。これから寒くなる。体力と集中力と気力を失わないように気配りしよう。

(3) 実力と大胆さとビジョン

司馬遼太郎『坂の上の雲』、何回となく読んでいる小説である。主人公の1人である秋山真之は、バルチック艦隊を破った参謀である。彼は4年間の海軍兵学校で試験の主席を取り続けたとも書いてある。彼は、「人間の頭に上下などない。要点をつかむ能力と、不要不急のものは切り捨てるという大胆さだけが問題だ」と言っている。

今、勉強している論点は、自分の人生で必要なものか、あるいは程度の高すぎる論点ではないか? 受験勉強は、一論点の研究ではない。受験科目は、最低限の知識を身につけさえければ十分に合格可能なのである。実力は、将来の展望、つまりビジョンをはっきりと決めて取り組む勉強方法で身につくのであろう。

(4) 力の源泉

釣り、ゴルフ、読書、映画、音楽、筆記具蒐集は、わたしの趣味であり、時間を忘れさせてくれる楽しみである。その「楽しみ」こそ力の源泉であると思う。楽しさとは、誰からも強制されない、自分自身のものである。難解な計算も難解な理論もわかれば「楽しくなる」のではなかろうか。受験勉強もささやかな感動を味わい、楽しさを発見できれば、費やした時間分だけ実力を授けてくれるに違いない。筆者の経験であるが、税理士試験も理解が深まるほど受験勉強は苦痛から快楽に変化していった記憶がある。この内なる変化の継続が大きな財産であり自力で身につけた実力であろう。

<執筆者紹介>
並木 秀明
(なみき・ひであき)
千葉経済大学短期大学部教授
中央大学商学部会計学科卒業。千葉経済大学短期大学部教授。LEC東京リーガルマインド講師。企業研修講師((株)伊勢丹、(株)JTB、経済産業省など)。青山学院大学専門職大学院会計プロフェッション研究科元助手。主な著書に『はじめての会計基準〈第2版〉』『日商簿記3級をゆっくりていねいに学ぶ本〈第2版〉』『簿記論の集中講義30』『財務諸表論の集中講義30』(いずれも中央経済社)、『世界一わかりやすい財務諸表の授業』(サンマーク出版) などがある。

※ 本稿は、『会計人コース』2019年10月号に掲載した記事を編集部で再編成したものです。


記事一覧
第1回:恋と愛と会計人コース
第2回:生きていくために必要な力
第3回:筆記具蒐集
第4回:勉強の成果
第5回:合格発表から年末年始
第6回:覚える、忘れる、思い出す
第7回:海外旅行でのエピソード
第8回:出会いがもたらしたもの
第9回:タイムマシン
第10回:季節の変わり目
第11回:本試験までの勉強
最終回:試験日までの最終アドバイス


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