試験にも実務でも役立つ簿記の計算問題


『間違いだらけの計算問題』(会計人コース3月号別冊付録)

今年の春に小学校に上がるうちの長男がハマっているのが、間違い探し。左ページと右ページを見比べて、違うところ探していくというアレです。誰もが一度はやったことがありますよね。

長男に「もっと難しいのが欲しい!!」とねだられて調べていくうちに、子供向けの簡単なものから、大人でもなかなか見つけることができないものまで、けっこう幅広く書籍化されていることがわかりました。

今では「間違い探し」のYouTubeチャンネルまであるんですね!
※菅田将暉さんのチャンネルのことではないです(念のため)。

さて、『会計人コース』3月号には、「間違い探し」をコンセプトにした別冊付録がついています。タイトルは、「読んで考えて総復習 間違いだらけの計算問題」。

コンセプトも内容も、とても面白い作りになっています。試験で出る論点を集めて、「解く」ではなく「見つける」ことを主眼にしています。
さらに、電卓は使わずにチャレンジできるので、スキマ時間にも解けるように工夫しています。

「本付録のオススメ活用方法」のなかで、「公認会計士・税理士が、実務において会計基準に照らして、取引記録(会計帳簿)を見ながら、誤りを発見するという職業体験をすることができます」と紹介されています。

たしかに、職業会計人になったら、自分の経験や知識、スキルをもとに違和感を覚えた箇所や誤りを指摘する必要が出てきますよね。試験勉強をしながら、実務にも役立つスキルがつくので一石二鳥です。

今回と次回で、その「間違い探し」問題の一端をご紹介していきます。

ぜひ、スキマ時間にチャレンジしてみてください!!

固定資産の減損に関する出題(難易度★★☆☆☆)

【問い】に対する【解説】について,誤りを含む部分を指摘しなさい。

【問い】
次の〔資料〕に基づき,当期(X1年4月1日~X2年3月31日)の損益計算書の減損損失はいくらか,求めなさい。

〔資料〕
1.当期末において,保有する機械装置(取得価額2,000,000円,耐用年数5年,減価償却方法は200%定率法,残存価額ゼロ,当期末現在2年経過)について,減損の兆候があると判断された。
2.機械装置の残存耐用年数の3年について,割引前将来キャッシュ・フローを見積もったところ,各年につき250,000円のキャッシュ・フローが見込まれ,耐用年数到来時の正味売却価額はゼロと見積もられた。
3.機械装置の当期末の正味売却価額は500,000円である。また,使用価値の算定にあたり,割引率は年8%であり,8%・3年の年金現価係数は2.577を使用する。

【解説】
1.減損損失を認識するかどうかの判定と測定
(1) 機械装置の帳簿価額
① 5年の200%定率法償却率:1÷5年×200%=0.4
② 帳簿価額:2,000,000円×(1-0.4)×(1-0.4)=720,000円

(2) 割引前将来キャッシュ・フローの合計額
250,000円×3年=750,000円
よって,帳簿価額が割引前将来キャッシュ・フローを下回るので,減損損失を認識する。

(3) 回収可能価額
使用価値は250,000円×2.577(8%・3年の年金現価係数)=644,250円となるので,正味売却価額500,000円と比較して,大きい方である使用価値644,250円が回収可能価額となる。

2.P/L減損損失(解答の金額)
(借) 減損損失 75,750 (貸) 機械装置 75,750
(注)720,000円(帳簿価額)-644,250円(回収可能価額)=75,750円


【解答】減損損失を認識するかどうかの判定に際して,「帳簿価額<割引前将来キャッシュ・フロー合計額」となるので,減損損失は認識しない。

【誤りを含む解説】
1.減損損失を認識するかどうかの判定と測定
(2) 割引前将来キャッシュ・フローの合計額
250,000円×3年=750,000円
よって,帳簿価額が割引前将来キャッシュ・フローを下回るので,減損損失を認識する。
(3) 回収可能価額
使用価値は250,000円×2.577(8%・3年の年金現価係数)=644,250円となるので,正味売却価額500,000円と比較して,大きい方である使用価値644,250円が回収可能価額となる。
2.P/L減損損失
(借)減損損失 75,750  (貸)機械装置 75,750
(注)720,000円(帳簿価額)-644,250円(回収可能価額)=75,750円

【正しい解説】
1.減損損失を認識するかどうかの判定
(2) 割引前将来キャッシュ・フローの合計額
250,000円×3年=750,000円
よって,割引前将来キャッシュ・フローが帳簿価額を上回るので,減損損失を認識しない。

2.P/L減損損失
仕訳なし
よって,減損損失はゼロである。

<解答のチェックポイント>
「固定資産の減損に係る会計基準」では,蓋然性基準を採用しており,減損損失の認識の判定において,減損の兆候がある資産または資産グループについて,これらが生み出す割引前の将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合に,減損の存在が相当程度に確実であるとして,減損損失の認識を求めている。よって,本問のように回収可能価額が帳簿価額を下回る場合でも,蓋然性基準を満たさなければ,減損損失を計上する必要はない。

『会計人コース』3月号別冊付録:
『読んで考えて総復習 間違いだらけの計算問題』の著者
加藤大吾(早稲田大学大学院会計研究科専任講師・公認会計士)


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