
NFSQ
【編集部より】
将来、海外で働きたいと考える会計系資格受験生も多いのではないでしょうか。実際に海外で働く人がどのような一日を過ごしているのか気になるところです。そこで、在タイ大手監査法人の日本デスクで働くNFSQさんに、「とある一日」についてお聞きしました!
監査法人日本デスクの役割
こんにちは、NFSQと申します。日本の大手監査法人での勤務を経て、現在は日本デスクメンバーとしてバンコクの監査法人で働いています。
日本デスクの主な役割は国や法人にもよって異なりますが、私の所属する法人の場合、在タイ日系企業の日本人駐在員と監査法人のタイ人スタッフのコミュニケーションをサポートするコーディネーターと、日系企業とのリレーション維持やお悩みに合わせてサービスをご紹介するマーケティングです。(役割や業務概要については過去の寄稿でもご紹介しておりますので、よろしければご参照ください)
この記事では、より具体的にイメージをお伝えできるよう、「とある一日の記録」という形で日常の様子をお届けします。
とある一日の記録@バンコク
6:30 起床
筆者は夜型なので出発にぎりぎり間に合う時間に起きていますが、朝にプールでひと泳ぎしたり、公園をランニングしたりしてから出社する方も多くいます。バンコクの日中は野外で運動するには暑すぎるため、結果として朝活で運動する方が多くなっているようです。
7時~8時 通勤・出社
筆者は電車通勤ですが、車で通勤する方も多くいます。特に都心部は通勤ラッシュで渋滞が酷いため、平時の3倍くらいは時間がかかります。
電車通勤の場合そこまで大きく遅れることはありませんが、日本と異なり無理やり押し込んで乗り込むことはせず、乗れないなら次の電車を待つという文化のため、電車に乗れずに5~6本見送らざるを得ないこともしばしばです。
8時 オフィスを出発
クライアント訪問のためにオフィスを社用車でアユタヤ方面に出発。会社を通じてドライバーと車をセットで終日押さえているので、移動中は必要に応じてWebミーティングをしたりメールを確認したりと仕事ができます。(ただし、郊外は道が結構ガタガタしており、私は酔いやすいので休んでいることもしばしばです)
9時30分 クライアント訪問①:着任挨拶
新しく赴任された方へのごあいさつを兼ね、タイにおけるビジネス環境の概要や、駐在員の方が把握しておくべき主なトピック、前任者と継続協議中だった事項などを共有。
赴任された方のバックグラウンドによっては、日本では営業担当だったものの赴任後は営業に加えてバックオフィスの統括も任されているといったこともあるため、これまでのご経験などを伺いながら、特に重要な要素を拾いながらお伝えするようにしています。
(バックオフィス関係トピックの全体像は筆者のnote記事もご参照ください)
11時 クライアント訪問 ②:税務対策支援
移転価格税務調査の傾向を共有しつつ、足元の利益率の推移や事業計画などを伺いながら、税務調査リスクや対策を協議します。
東南アジアでの税務調査を経験されていない会社の場合、しばしば発生する理不尽な(理屈の通らない)追徴のリスクを本社が過小評価していることも多いため、本社に対する説明方法の検討をお手伝いすることもあります。
リスクや対策の具体的な検討において、日本デスクはあくまで他社事例の共有や思考整理のお手伝いという立場になるため、協議した内容は社内の税務サービス担当者に持ち帰り、より精緻な見解を追って報告することになります。
12時 お昼
午後の訪問先に移動する途中のガソリンスタンドのカフェやショッピングモールのフードコートなどで軽食を取ります。単品料理であれば大体50~60バーツ(250~300円)程度で食べられますが、日本のように無料で安全な飲み水が提供されていたりはしないので、飲み物は別途調達が必要です。ペットボトルの水であれば10バーツ(50円)程度ですが、カフェでコーヒーを頼むと50~100バーツ(250~500円)くらいになります。

これは余談ですが、ガソリンスタンドのトイレが綺麗なことはまれなので、道中にあるのであればショッピングモールに立ち寄る方がおすすめです。
13時 クライアント訪問③:監査報告会
クライアントオフィスで監査チームと合流し、監査結果の報告(クリアランス)をします。実際の監査業務はタイ人メンバーが担当しているため、事前に内容の共有を受け、詳細を適宜日本語で補足するような役割を担います。特に発見事項(大きな修正が生じた科目や内部統制の不備など)がある場合は、クライアントのタイ人経理担当者と日本人責任者の間で認識齟齬が生じていないかを念のため確認するなど、来期にむけて改善が進むようにフォローします。
また、監査と直接は関係しないトピックであっても、法制度のアップデートや税務調査で指摘が増えている論点など、先方が把握しておいた方がよい情報を併せて共有します。
14時 クライアント訪問④:情報交換
他の訪問先の近くにしばらくお会いしていないクライアントのオフィスがある場合、喫緊の議題がなくても立ち寄らせてもらうことがあります。
法制度のアップデートや直近で実施したセミナーの内容などを持参していきますが、いざお伺いしてみると先方から相談事項をいただくことも多く、その時々に応じたトピックを協議することになります。会計や税務についてのご相談をいただくことが多いですが、最近はサイバー対策やAI利活用などについてお話しする機会も増えている気がします。
15時 時間調整@カフェ
次の訪問までの時間調整のため、道中のカフェでたまったメールを確認したり、ミーティング中にかかってきていた電話の折り返しをしたりします。
この時間帯の郊外のカフェはあまり人がいないことが多いのですが、あまりに賑やかだったりセンシティブな内容に触れたりする場合は、カフェの外をうろうろ歩き回りながら電話をすることもあります。
また、ここまでの打ち合わせで協議した内容をタイ人担当者に共有する、持ち帰った確認事項を照会するなど、記憶の新しいうちになるべくタスクを消化しておきます。
16時 クライアント訪問⑤:再編支援
複数拠点の再編を進めるにあたって考慮しなければならない税務・法務の論点について協議します。再編の方法によっては日本の親会社に課税が生じることもあるため、必要に応じて日本のアドバイザーを巻き込むことも提案します。
再編方法毎のメリット・デメリットの分析をすでに終えている場合には、他社事例を踏まえた実務的なリスクの程度などを補足的にお伝えするなど、ご判断の参考になる情報をお伝えします。
協議を通じてより詳細な事例や専門的な判断が必要な事項が出てきた場合には、分析を担当したタイ人専門家への照会事項として持ち帰り、後日回答をご報告することになります。
17時 移動・帰宅
17時頃にアユタヤを出発すると、バンコクに戻ったあたりで渋滞に巻き込まれ、19時頃の帰宅になります。特に都心部の帰宅ラッシュ渋滞につかまると、徒歩5分の距離に車で30分以上ということもあるので、場合によっては途中で車から降り、徒歩に切り替えて帰ります。
おわりに
外出の日を例に一日の過ごし方をご紹介してみました。先方のご都合がぴったり嚙み合うとは限らないので、記事のように一日で5社訪問の予定を組めることは少なく、実際には3~4社の訪問になることがほとんどです。
リモートワーク以降、必ずしも対面で合わなくてもいつでも打ち合わせができるようになりましたが、やはり対面でお話しする方が、話の幅を広く持たせながら踏み込んだお話ができる気がします。
日本デスクという立場上、サービス提供という形で直接バリューを提供する機会は必ずしも多くありませんが、タイで事業を行う日系企業の皆さまにとって少しでも身近で頼れる存在であれるよう、日々の対話を積み重ねていこうと思います。
<執筆者紹介>
NFSQ
監査法人でIT監査やITリスク・ITガバナンスに係るアドバイザリー業務を担当後、バンコクの日本人デスクに転籍。稀にX(旧Twitter)とnoteで情報を発信する匿名アカウントです。
※すべての媒体での発信は個人の見解であり、過去または現在の所属組織の見解とは無関係です。
・Xアカウント(@NF_SQ_08)
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