
諸角崇順(かえるの簿記論・財務諸表論代表)
【編集部より】
来年の税理士試験を目指し、これから始めるという人や大手専門学校の5月開講講座を受講中の方もいるのではないでしょうか。例年、8月に本試験が実施されるので、今から1年間じっくりと対策をとることになりますが、長いようであっという間の受験勉強。無駄なく、戦略的に進めるにはどうしたらよいでしょうか。そこで、ベテラン講師の諸角先生にアドバイスをいただきました!
簿記論の正しい勉強方法
税理士試験において、おそらくほとんどの方が最初の受験科目として簿記論(もしくは簿記論・財務諸表論)を選択されることと思います。
そこで、スタートダッシュに失敗しないためにも、簿記論の正しい勉強方法をご紹介したいと思います(どの科目もそうですが「正しい」勉強方法で、「必要な」勉強時間を投下しないと短期合格はできません)。
<日商簿記と簿記論の違い>
| 日商簿記 | 税理士簿記論 | |
| 実務的 | 問われる内容 | 学問的+実務的 |
| 知識認定試験 | 試験の性格 | 職業会計人選抜試験 |
あれ? 簿記論の正しい勉強方法は?と思われたかもしれませんね。でも、大丈夫です。簿記論の正しい勉強方法をご紹介する前にどうしても日商簿記と税理士簿記論の違いを説明する必要があったので、突然でしたが上記の表を挿しこませてもらいました。
税理士を目指す一般的な受験生であれば、日商簿記3級→日商簿記2級→税理士簿記論というように進まれるかと思います。ただ、日商簿記3級→日商簿記2級は比較的スムーズに進まれる方が多いのですが、日商簿記2級→税理士簿記論では多くの方が挫折されます。
それは、勉強量が一気に増えるから、ということもありますが、日商簿記2級までの勉強方法をそのまま税理士簿記論の勉強方法として実行されているからです(勉強量が増えるだけなら、単純に勉強時間を増やせばみんな合格するはずです)。
上記の表で示したとおり、日商簿記と税理士簿記論とでは明確な違いがあります。明確な違いがあるわけですから、日商簿記のときと同じ勉強方法でいいわけがありません。
それでは、まず「問われる内容」の違いについて説明していきます。
高校生までの授業で「~論」という科目があったでしょうか? おそらくなかったと思います。しかし、大学に入ったら、多くの科目に「~論」と付くようになります。
これは、実務的処理だけではなく、学問としてその内容を理解しているか、というところまで問われることを意味しています。よって、日商簿記では、すでに廃止された規定や処理が問われることはなく、また、現行の処理であっても実務上よく使われる処理を中心に問われることになりますが、簿記論のほうは(特に大学教授が担当されると噂されている第一問、第二問で)すでに廃止されたけれども簿記を論じることができるようになるためには知っておいたほうがよい処理も問われることがあります。
つまり、日商簿記のように、よく出る論点だけ「仕訳パターンの暗記」をすれば合格ができる、というものではなく、きちんと簿記を論じることができるぐらい簿記を実務処理としてだけではなく学問として「理解」する必要が生じてきます。
※ちなみに、下記の仕訳の意味を説明できる方は簿記を理解できています。
| 仕入 | ×× | / | 繰越商品 | ×× |
| 繰越商品 | ×× | / | 仕入 | ×× |
これを「しーくりくりしー」とか「仕入繰商繰商仕入」とかで解いている方は、完全にパターン学習ですので税理士簿記論に進むとかなり苦労します。よって、税理士簿記論に進む前に日商簿記学習時に使っていた教材を使って自分自身で復習をして、きちんと簿記の基礎を理解するか、もしくは日商簿記の内容をしっかり復習してくれる資格学校を選んで受験をスタートさせましょう。
税理士試験の性格
次に『試験の性格』ですが、日商簿記検定試験は知識認定試験(あなたが正確な知識を有しているかをテストしているので、慌てなくていいからじっくり正しい答えを求めてね、という感じの試験)です。よって、問題量に比べてそこまで試験時間が足りない、ということはないと思います。
しかし、税理士試験は職業会計人選抜試験です。なんか難しそうな言葉ですが、要するに税理士試験に合格すると(実務要件等はありますが)税理士という仕事に就くことができますので、税理士試験は就職試験的な性格を少し持ち合わせていることになります(日商簿記検定試験は、合格しても日商簿記という仕事があるわけではありません)。
就職試験的な性格とはどういうことかというと、仕事をする上での重要な要素である「段取りの良さ」「速さ」も求められる試験である、ということです(なので講師が受験してもとても2時間で解ききれない分量の問題が出題されます)。
みなさんが税理士に仕事を依頼したとき、その税理士の段取りが悪かったり、仕事が遅かったりしたら不満を持ちますよね? なので、税理士試験は知識があることは大前提として、到底試験時間内に解けない量の問題の中から、①簡単に解ける問題を選び(段取りの良さ)、②その問題を素早く解く(速さ)が求められるのです。
この2つの違いを把握しておかないと税理士簿記論に短期一発合格をするのが難しくなります。参考事例を一つ紹介しておきましょう。
普通に考えれば、税理士簿記論より日商簿記1級のほうが試験範囲は広いわけですから、知識量は、「税理士簿記論<日商簿記1級」となり、日商簿記1級合格者であればたやすく税理士簿記論に受かるはずなのですが、実際には多くの日商簿記1級合格者が税理士簿記論に一発合格できないでいます。それは問題の取捨選択能力(段取りの良さ)と解答スピード(速さ)を重点的に強化しないといけないことに気付いていないからです。
まとめ
税理士簿記論に短期一発合格したいなら、日商簿記のときの勉強スタンスから
① 学問としての簿記、いわゆる簿記「論」も学ぶ必要がある。つまり、パターンではなく理解した上で問題を解く必要がある。
② 問題を解くスピードを徹底的に上げる必要がある。
ということを意識して勉強に取り組んでください。
※理解して解く、ということは、仕訳ひとつひとつに対して簿記一巡の流れの中での位置づけを把握するとともに、仕訳の意味を考えながら解く、ということです。
※スピードを上げる、というのは、電卓を叩くスピードが速い、とか、文字を書くスピードが速い、というのではありません。問題文を見て、すぐに論点が抽出できるか否か、という意味でのスピードです。

正しい勉強方法で短期一発合格してくださいね!!応援しています!!!
【著者プロフィール】
諸角崇順(もろずみたかのぶ)
同志社大学法学部3回生の9月から税理士試験の学習を始め、簿記論及び財務諸表論に一発合格(法人税法も一発合格)。
法人税法の受験後、大手資格学校にて講師デビュー(財務諸表論)。8年目より法人税法の講師も兼任(通算17年間在籍)。
大手資格学校退職後、佐賀県唐津市に移住し、個人運営の資格学校を立ち上げる(後に法人化 学校名「かえるの簿記論・財務諸表論」)。立ち上げ後6年が経過し、ついにお申し込みをお断りしなければならないほど受講生数となる(通算の講師歴は29年、指導させていただいた受講生は3,000人以上)
<旧ホームページ>https://peraichi.com/landing_pages/view/sakura-saku
<新ホームページ>https://www.sakurasaku-manabi.com
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