大野修平(公認会計士・税理士)
【編集部より】
ChatGPTの登場以来、ビジネス誌などでも頻繁に特集が組まれ、仕事への活かし方や注意点、課題などが取り上げられるようになるにつれ、得体の知れない未知のものではなくなってきているのではないでしょうか。その一方で、やはりまだどことなく活用しきれず、距離を感じたままということもあるでしょう。特に、新しい技術ゆえにアップデートも早く、追いつくことさえ難しい面もあります。
そこで、本連載では、税理士・会計士・会計事務所でどのようにChatGPTを活用すればよいかについて、ChatGPTに関する情報発信も多くされている大野修平先生(公認会計士・税理士)にご紹介いただきます!(毎月1回掲載予定)
みなさん、こんにちは。セブンセンス税理士法人の大野修平です。
「会計事務所におけるChatGPT「超」活用術」がテーマの本連載ですが、前回は、
「ChatGPTで検索するな。ChatGPTとはやりとりをしよう」
というメッセージをお伝えしました。
ChatGPTのハルシネーション(それっぽいけどもデタラメな回答をすること)に振り回されないためには、「◯◯について教えて」という検索型のプロンプト(命令文)ではなく、「◯◯をやって」という「やりとり」をしましょうということです。
そこで、今回からは実際の「やりとり」の具体例を少しずつお伝えしていこうと思います。
検索では出てこないパーソナライズした文章を作ってもらう
本連載は会計事務所の活用術がテーマですが、まずはChatGPTとどんな「やりとり」をすればよいかを具体的にイメージしてもらうために、身近な例から初めてみたいと思います。
例えばこんなプロンプトはいかがでしょう?
私の部下が、四半期の営業成績第一位に輝きました。
その表彰が行われるのですが、そこで上司である私が部下である彼に向けてスピーチをします。
彼の趣味はバスケットボールなので、それに絡めたスピーチを考えてください。
(筆者が入力したChatGPTのプロンプト)
「プロンプト」なんて偉そうに言ってますが、何のことはない、ただChatGPTに語りかけているだけですね。ChatGPTの素晴らしいところは、こういう話し言葉で「やりとり」ができる点です。
今回、ChatGPTはこんなふうに回答をしてきました。
皆様、本日はここに集まり、四半期の営業成績で素晴らしい実績を上げた一人のスタープレーヤーを称える時間を共有できて、私は大変嬉しく思います。このスタープレーヤー、それは我々のチームの[彼の名前]さんです。彼はただバスケットボールが上手いだけではありません。彼の仕事ぶりは、コート上でのプレイと同じくらい、いや、それ以上に見事なのです。
[彼の名前]さんは、四半期ごとに、まるでバスケットボールの試合に挑むかのように、目標というバスケットに向かって、一つ一つの営業活動というボールを確実に投げ込んできました。彼の取り組みは、まさにノールックパスのようにチームメイトを驚かせ、アンダーザバスケットでのシュートのようにライバルを出し抜き、3ポイントシュートを決めるかのように業績を大きく伸ばしました。
彼は自分のスコアを稼ぐだけではなく、チームの仲間たちがアシストしやすいような環境を作り、皆が得点できるように導いてきました。まるで、コート上での優れたプレイヤーがチームの勝利のために最高のパフォーマンスを発揮するように。
今日、私たちは[彼の名前]さんの四半期のMVPを称えます。彼のようなプレイヤーはまさに、どんなコートにおいても輝く星です。営業のフィールドにおいて、彼の情熱、チームプレイ、そして常に高みを目指す姿勢は、私たち全員にとって大きなインスピレーションです。
[彼の名前]さん、この四半期、素晴らしい「ゲーム」をありがとう。あなたのようなスタープレーヤーがいることを誇りに思います。そして、これからもそのスピリットで、私たちのチームをさらなる高みへと導いてくれることを期待しています。心からのお祝いを。おめでとう
(ChatGPTのアウトプット)
どうでしょう?確かに彼の趣味であるバスケットボールに絡めたスピーチになっていますね。
「部下の営業成績を称えるスピーチ」のひな型は、インターネットで検索すればたくさん出てきそうですが、彼の趣味である「バスケットボールに絡めた」という条件をつけると、検索したとしても見つけられないでしょう。
そのような時にChatGPTに原案を考えてもらい、必要に応じて手直しをしていけば、業務の効率を大幅に改善できると思います。
謝罪メールの文章作成
このようにChatGPTは文章を作成することが得意です。
会計事務所においても日々様々な文章作成が行われているのではないでしょうか?
文章作成のために、キーボードに手を置いた時に少しChatGPTのことを思い出してほしいのです。
特に、クライアントへの依頼文の作成、上司へ言いづらいことを伝える文章、部下への少し厳し目のフィードバックなど、作成に抵抗感のある文章ほど、ChatGPTに手伝ってもらうメリットがあるのではないかと思います。
ここでは、顧問先への謝罪文をChatGPTと一緒に作ってみましょう。
クライアントへの謝罪文を作成してください。
謝る内容は、
・2ヵ月連続で試算表の提出が遅くなってしまった。
・しかもその試算表の中にミスを見つけてしまい、改めて正しい試算表をお送りする。
というものです。
(筆者が入力したChatGPTのプロンプト)
ちょっと目も当てられない事態ですが、ミスというのはなぜか連鎖するものです。
ChatGPTの原案は以下の通りです。
件名:試算表の提出遅延および訂正につきまして
[ご担当者様]
平素は格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。
この度は、私どもの責におきまして試算表の提出が2ヵ月連続で遅れてしまい、さらにその中にミスがあったことを深くお詫び申し上げます。
貴社には多大なるご迷惑をおかけしましたこと、心より反省しております。提出の遅れは、内部の業務プロセスの見直しが必要であることを痛感しており、早急に改善策を講じる所存でございます。また、ミスのあった試算表につきましては、ただちに訂正し、正確なデータをお送りいたします。
今後このような事態が発生しないよう、業務管理体制の強化及び従業員の教育を徹底し、品質管理を一層向上させることをお約束いたします。貴社の信頼を回復するため、全力を尽くして参ります。
貴社の事業運営に支障をきたす結果となりましたこと、改めて深くお詫び申し上げます。正しい試算表は、本日中にメールにて送付させていただきます。ご確認いただき、何かご不明な点がございましたら、直ちにご連絡いただけますと幸いです。
このような不手際が二度と起こらないよう、誠心誠意努めて参りますので、引き続きのご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
敬具
[あなたの名前]
[あなたの役職]
[あなたの会社名]
[あなたの連絡先]
(ChatGPTのアウトプット)
とくに指示をしていませんが、改善策を講じることなども伝えていて、良い文章だと思います。
今回の回答では、文末に「敬具」とあるので、最初に「拝啓」と入れたほうが良いかもしれないなど、必要な修正を自分で加えます。
もちろん、謝罪文ですので本人の申し訳ないという気持ちが一番重要ですが、それを文章に表すためのとっかかりをChatGPTに手伝ってもらうというのは良いのではないでしょうか。
文章の作成者からレビュワーに立場を変えることで、心理的なストレスを減少させながら、より自分の心情を適切に表現することができます(本人の謝罪の気持ちというのが大前提にあるということは、繰り返しお伝えしておきますよ!)。
さらに、ChatGPTの回答に対して、
今のへりくだり具合を100としたら、50くらいのへりくだり具合で書き直して。
(筆者が入力したChatGPTのプロンプト)
などと、トーンを調節するようなプロンプトも有効でしょう。
ちなみに回答はこちらです。
件名:試算表の提出遅延と訂正に関するお知らせ
[ご担当者様]
いつもお世話になっております。
まず始めに、試算表の提出が過去2カ月連続で遅れたこと、そしてその中にミスがあったことについてお詫び申し上げます。
提出遅延については、社内の体制を見直し、改善を図ることで再発防止に努めます。ミスがあった試算表に関しましては、既に訂正を行い、本日中に再送させていただきます。
今後はより迅速かつ正確な情報提供を心掛ける所存です。何卒ご理解のほどお願い申し上げます。
不明点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
よろしくお願いいたします。
[あなたの名前]
[あなたの役職]
[あなたの会社名]
[あなたの連絡先]
(ChatGPTのアウトプット)
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は文章作成にフォーカスを当てて解説してみました。
文章を作成してもらい、それを調整するというステップが良くお分かりいただけたのではないかと思います。
ChatGPTを使いこなすためには「習うより慣れよ」の精神で日々やりとりをするのが、一番の近道です。
本稿でChatGPTの利用が「あれ、意外と簡単かも」と思ってもらえたなら幸いです。
もちろんChatGPTは文章作成以外にも、いろんな場面で我々をサポートしてくれます。
次回から少しずつ紹介していきたいと思いますので、お楽しみに。
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<執筆者紹介>
大野修平(おおの・しゅうへい)
公認会計士・税理士
セブンセンス税理士法人 ディレクター
大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。トーマツ退所後は、資金調達支援、資本政策策定支援、補助金申請支援などで多数の支援経験がある。また、スタートアップ企業の育成・支援にも力を入れており、各種アクセラレーションプログラムでのメンタリングや講義、ピッチイベントでの審査員および協賛などにも精力的に関わっている。
・Xアカウント(@Shuhei_Ohno)
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連載「大野修平先生に聞く! 会計事務所におけるChatGPT「超」活用術」バックナンバー
第1回:検索ではなく、やりとりしよう
第2回:パーソナライズした文章の作成
第3回:さらに進化した「GPTs」で何ができる?
第4回:テクノロジーへの向き合い方についてマインドセットを変える
第5回:実際にどのようなスキルが求められるのか
最終回:組織としてどのように取り入れていけばよいか