長島 正浩(茨城キリスト教大学教授)
*税理士、会計士論文式試験直前の総復習として、本連載の復習問題を再掲載します。
Q1(空欄補充)
包括利益を表示する目的は,期中に認識された取引及び経済的事象( ( ① )を除く。)により生じた( ② )を報告することである。包括利益の表示によって提供される情報は,投資家等の( ③ )が企業全体の事業活動について検討するのに役立つことが期待されるとともに,( ④ )との連携(純資産と包括利益とのクリーン・サープラス関係)を明示することを通じて,財務諸表の理解可能性と( ⑤ )を高め,また,国際的な会計基準との( ⑥ )にも資するものと考えられる。
A
① 資本取引
② 純資産の変動
③ 財務諸表利用者
④ 貸借対照表
⑤ 比較可能性
⑥ コンバージェンス
*包括利益会計基準21項
『投資家は包括利益情報を意思決定に利用しているのかしら?』
Q2 クリーン・サープラス関係の意味を説明しなさい。
A
クリーン・サープラス関係とは,ある期間における資本の増減(資本取引による増減を除く。)が当該期間の利益と等しくなる関係をいう。
*包括利益会計基準21項注1
『利益を当期純利益とすると,〔期首の株主資本+当期純利益-剰余金の配当=期末の株主資本〕となる』(桜井23版,300頁)
Q3 包括利益とは?
A
包括利益とは,ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち,当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分をいう。当該企業の純資産に対する持分所有者には,当該企業の株主のほか当該企業の発行する新株予約権の所有者が含まれ,連結財務諸表においては,当該企業の子会社の非支配株主も含まれる。
*包括利益会計基準4項
『利益を包括利益とすると,〔期首の純資産+包括利益-剰余金の配当=期末の純資産〕となる』(桜井23版,300頁)
Q4 包括利益を表示する計算書の2つの形式とは?
A
包括利益を表示する計算書は,①当期純利益を表示する損益計算書と当期純利益にその他の包括利益の内訳科目を加減して包括利益を表示する包括利益計算書からなる形式(2計算書方式)と②当期純利益の表示と当期純利益にその他の包括利益の内訳科目を加減した包括利益の表示を1つの計算書(損益及び包括利益計算書)で行う形式(1計算書方式)のいずれかによる。
*包括利益会計基準11項
『設例を使って2通りの計算書を実際に書いてみよう!』(桜井23版,303頁「設例1」)
Q5 包括利益と当期純利益のそれぞれの情報の有用性の優劣は?
A
包括利益の表示の導入は,包括利益を企業活動に関する最も重要な指標として位置づけるということではなく,当期純利益に関する情報と併せて利用することにより,企業活動の成果についての情報の全体的な有用性を高めることにある。したがって,投資者等の利害関係者から広く認められている企業の経営成績としての当期純利益に関する情報の有用性を前提としており,包括利益の表示によって当期純利益の重要性を低めるものではない。また,包括利益の表示の導入は,当期純利益の計算方法を変更するものでもない。
*包括利益会計基準22項
『企業の業績尺度として,当期純利益と包括利益のいずれが優れているかについては見解の相違が見られる!』(桜井23版,302頁)
◎復習しましょう!
1.CF計算書
2.一株当たり当期純利益
3₋1.金融商品会計①‐⑦
3₋2.金融商品会計⑧‐⑭
3‐3.金融商品会計⑮‐⑳
4-1.棚卸資産会計①‐⑥
4-2. 棚卸資産会計⑦‐⑫
5‐1.収益認識会計①‐⑦
5₋2.収益認識会計⑧-⑫
6.リース会計①‐⑥
7.固定資産の減損①‐⑩
8.ソフトウェア会計①‐⑥
9.研究開発費会計①‐⑦
10.繰延資産①‐⑦
11.退職給付会計①‐⑥
12.資産除去債務①‐⑥
13.税効果会計①‐⑥
14.ストック・オプション会計と役員賞与(報酬)会計①‐⑧
15.自己株式①‐⑦
16.準備金の減少①‐⑥
17.純資産の部の表示①‐⑦
18.株主資本等変動計算書①‐⑤
19-1.企業結合会計①‐⑦
19-2.企業結合会計⑧‐⑫
20.事業分離会計①‐⑤
21.連結会計①‐⑥
22.外貨換算会計①‐⑤
23.過年度遡及会計①‐⑥
〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師,会計事務所(監査法人),証券会社勤務を経て,専門学校,短大,大学,大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後,松本大学松商短期大学部准教授を経て,現在に至る。この間35年以上にわたり,簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。
*本連載は,『会計人コース』2020年1月号付録『まいにち1問ポケット財表理論』に加筆修正したものです。