長島 正浩(茨城キリスト教大学教授)
*税理士、会計士論文式試験直前の総復習として、本連載の復習問題を再掲載します。
Q1(空欄補充)
事業分離は,( ① )や事業譲渡,現物出資等の形式をとり,( ② )が,その事業を分離先企業に移転し( ③ )を受け取る。( ② )から移転された事業と分離先企業(ただし,新設される企業を除く。)とが1つの( ④ )に統合されることになる場合の事業分離は,企業結合でもある。この場合には,分離先企業は結合企業にあたり,事業分離日と( ⑤ )とは同じ日となる。
A
① 会社分割
② 分離元企業
③ 対価
④ 報告単位
⑤ 企業結合日
*事業分離会計基準62項
『A社からB社へ事業移転した場合,A社からみると事業分離,B社からみると企業結合となる』(桜井23版,273頁「設例11」)
Q2 事業分離会計上,「事業分離」とは何か,説明しなさい。
A
「事業分離」とは,ある企業を構成する事業を他の企業(新設される企業を含む。)に移転することをいう。なお,複数の取引が1つの事業分離を構成している場合には,それらを一体として取り扱う。
*事業分離会計基準4項
『新設分割や吸収分割などの会社分割は「事業分離」に該当する』(桜井23版,272頁)
Q3 持分の継続・非継続の基礎となっている考え方とは?
A
持分の継続:同種資産の交換の会計処理のように,これまでの投資がそのまま継続しているとみて,移転損益や交換損益を認識せず,事業分離や株式の交換によっても投資の清算と再投資は行われていないと考え,移転や交換直前の帳簿価額が投資原価となる。
持分の非継続:売却や異種資産の交換の会計処理のように,いったん投資を清算したとみて移転損益や交換損益を認識するとともに,改めて時価にて投資を行ったとみる場合,事業分離時点や交換時点での時価が新たな投資原価となる。
*事業分離会計基準70項
『実現したかどうかで考えるとわかりやすい!』(桜井23版,272-273頁)
Q4 分離元企業で移転した事業に関する投資が清算されたとみる場合,どのように会計処理を行うか?
A
移転した事業に関する投資が清算されたとみる場合には,その事業を分離先企業に移転したことにより受け取った対価となる財の時価と,移転した事業に係る株主資本相当額との差額を移転損益として認識するとともに,改めて当該受取対価の時価にて投資を行ったものとする。
*事業分離会計基準10項(1)
『事業が売却されたとみて売買処理法すなわちパーチェス法により処理する』(桜井23版,273頁)
Q5 分離元企業で移転した事業に関する投資がそのまま継続しているとみる場合,どのように会計処理を行うか?
A
移転した事業に関する投資がそのまま継続しているとみる場合,移転損益を認識せず,その事業を分離先企業に移転したことにより受け取る資産の取得原価は,移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定するものとする。
*事業分離会計基準10項(2)
『投資が継続しているとみて簿価引継法すなわち持分プーリング法により処理する』(桜井23版,272頁)
◎復習しましょう!
1.CF計算書
2.一株当たり当期純利益
3₋1.金融商品会計①‐⑦
3₋2.金融商品会計⑧‐⑭
3‐3.金融商品会計⑮‐⑳
4-1.棚卸資産会計①‐⑥
4-2. 棚卸資産会計⑦‐⑫
5‐1.収益認識会計①‐⑦
5₋2.収益認識会計⑧-⑫
6.リース会計①‐⑥
7.固定資産の減損①‐⑩
8.ソフトウェア会計①‐⑥
9.研究開発費会計①‐⑦
10.繰延資産①‐⑦
11.退職給付会計①‐⑥
12.資産除去債務①‐⑥
13.税効果会計①‐⑥
14.ストック・オプション会計と役員賞与(報酬)会計①‐⑧
15.自己株式①‐⑦
16.準備金の減少①‐⑥
17.純資産の部の表示①‐⑦
18.株主資本等変動計算書①‐⑤
19-1.企業結合会計①‐⑦
19-2.企業結合会計⑧‐⑫
〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師,会計事務所(監査法人),証券会社勤務を経て,専門学校,短大,大学,大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後,松本大学松商短期大学部准教授を経て,現在に至る。この間35年以上にわたり,簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。
*本連載は,『会計人コース』2020年1月号付録『まいにち1問ポケット財表理論』に加筆修正したものです。