連載 『会計士・税理士・簿記検定 財務会計のセンスが身につくプチドリル』(本試験直前総復習23)ー 企業結合会計①


長島 正浩(茨城キリスト教大学教授)

*税理士、会計士論文式試験直前の総復習として、本連載の復習問題を再掲載します。

Q1(空欄補充)
企業結合には( ① )と( ② )という異なる経済的実態を有するものが存在する。( ① ) に対しては,ある企業が他の企業の( ③ )を獲得することとなるという経済的実態を重視し,( ④ )により会計処理する。他方,企業結合の中には,いずれの結合当事企業も他の結合当事企業に対する( ③ )を獲得したとは合理的に判断できないものがあり,このような( ② )に対しては( ⑤ )により会計処理するのが合理的であるが,会計基準の( ⑥ )を推進する観点から( ⑤ )は廃止された。

A
① 取得
② 持分の結合
③ 支配
④ パーチェス法
⑤ 持分プーリング法
⑥ コンバージェンス
※企業結合には,「取得」のほか,「共同支配企業の形成」,「共通支配下の取引」などの取引がある。「持分の結合」であってもパーチェス法で会計処理する。
*企業結合会計基準67項,70項
『企業結合の典型例として “合併” を考えるとよい』(桜井23版,264頁)

Q2 パーチェス法の会計処理について説明しなさい。

A
パーチェス法とは,被結合企業から受け入れる資産及び負債の取得原価を,対価として交付する現金及び株式等の時価(公正価値)とする方法をいう。
*企業結合会計基準63項
『パーチェス(purchase)とは “購入” という意味。合併で考えると相手の財産すべて時価で購入してしまう方法』(桜井23版,265頁)

Q3 持分プーリング法の会計処理について説明しなさい。

A
持分プーリング法とは,すべての結合当事企業の資産,負債及び純資産を,それぞれの適正な帳簿価額で引き継ぐ方法をいう。
*企業結合会計基準63項
『合併で考えると相手財産の帳簿価額を尊重し,その価額で引き継いであげる方法』(桜井23版,265頁)

Q4 企業結合とは何か?

A
企業結合とは,ある企業又はある企業を構成する事業と他の企業又は他の企業を構成する事業とが1つの報告単位に統合されることをいう。なお,複数の取引が1つの企業結合を構成している場合には,それらを一体として取り扱う。
*企業結合会計基準5項
『この定義に従うと企業結合には子会社同士の合併のような“共通支配下の取引”も含まれる』(桜井23版,266頁)

Q5 企業結合における「支配」および「取得」とは何か?

A
支配とは,ある企業又は企業を構成する事業の活動から便益を享受するために,その企業又は事業の財務及び経営方針を左右する能力を有していることをいう。
取得とは,ある企業が他の企業又は企業を構成する事業に対する支配を獲得することをいう。
*企業結合会計基準7項,9項
『100%支配を受ける親子関係を築くのに利用される “株式交換” “株式移転” は取得となり,“企業結合”に該当する』(桜井23版,269頁)

Q6 企業結合における「のれん」とは何か?

A
被取得企業又は取得した事業の取得原価が,受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を上回る場合には、その超過額は「のれん」といい,下回る場合には、その不足額は「負ののれん」という。
*企業結合会計基準31項
『パーチェス法で生じる(正の)のれんはB/S無形固定資産に “のれん” で表示』(桜井23版,267-268頁)

Q7 企業結合では取得原価はどのように算定するか?

A
被取得企業又は取得した事業の取得原価は,原則として,取得の対価(支払対価)となる財の企業結合日における時価で算定する。支払対価が現金以外の資産の引渡し,負債の引受け又は株式の交付の場合には,支払対価となる財の時価と被取得企業又は取得した事業の時価のうち,より高い信頼性をもって測定可能な時価で算定する。
*企業結合会計基準23項
『“より高い信頼性をもって測定可能な時価”で算定するのに最強なのは上場株式だ!』(桜井23版,267頁)

◎復習しましょう!
1.CF計算書
2.一株当たり当期純利益
3₋1.金融商品会計①‐⑦
3₋2.金融商品会計⑧‐⑭
3‐3.金融商品会計⑮‐⑳
4-1.棚卸資産会計①‐⑥
4-2. 棚卸資産会計⑦‐⑫
5‐1.収益認識会計①‐⑦
5₋2.収益認識会計⑧-⑫
6.リース会計①‐⑥
7.固定資産の減損①‐⑩
8.ソフトウェア会計①‐⑥
9.研究開発費会計①‐⑦
10.繰延資産①‐⑦
11.退職給付会計①‐⑥
12.資産除去債務①‐⑥
13.税効果会計①‐⑥
14.ストック・オプション会計と役員賞与(報酬)会計①‐⑧
15.自己株式①‐⑦
16.準備金の減少①‐⑥
17.純資産の部の表示①‐⑦
18.株主資本等変動計算書①‐⑤

〈執筆者紹介〉
長島 正浩
(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師,会計事務所(監査法人),証券会社勤務を経て,専門学校,短大,大学,大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後,松本大学松商短期大学部准教授を経て,現在に至る。この間35年以上にわたり,簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

*本連載は,『会計人コース』2020年1月号付録『まいにち1問ポケット財表理論』に加筆修正したものです。


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