連結会計の仕訳に強くなる超基礎トレーニング【第7回】成果連結:債権債務の相殺消去(ダウン・ストリーム)、期末貸倒引当金の調整


関口高弘
(公認会計士)

【編集部より】
会計人コースWebの読者アンケートによると、「連結会計」をマスターしたいという声がちらほら。日商簿記2級でも定番論点の一つとなり、会計士・税理士試験など会計系資格の合格を目指す人にとって避けて通ることのできない論点です。
そこで、本連載では、『連結会計の計算に強くなる3ステップ式問題集』の著者である関口高弘先生(公認会計士)に、「連結会計」の仕訳問題を週1回のペースで出題していただきます(毎週金曜日掲載予定)。
本連載で出題する問題は、連結会計に関する日商簿記2級レベルのインプット学習が一通りできた人を対象に、日商簿記1級や税理士試験・公認会計士試験にステップアップを目指す人にとって「土台」となる内容を想定しています。なお、毎回のテーマによって出題数は変動します。
もし本連載でつまずいた問題があれば、もう一度テキストでしっかり復習しましょう!

「本連載のねらい」はコチラをご覧ください。

さらに問題を解きたい方は、『連結会計の計算に強くなる3ステップ式問題集』をチェック!

今回のポイントー成果連結:債権債務の相殺消去(ダウン・ストリーム)、期末貸倒引当金の調整

今回のテーマについて、以下のポイントを確認して仕訳問題を解いてください。

Point1.債権債務の相殺消去(ダウン・ストリーム)

連結財務諸表は企業集団と連結外部との取引を表示するものであるため、連結財務諸表に計上される取引や債権債務は連結外部との取引によって生じたものに限定されます。そのため、連結会社間の商品売買取引から生じた売上高や売上原価売掛金や買掛金受取手形や支払手形等が存在する場合には、連結決算上、これを相殺消去する必要があります。

また、連結会社間の土地売買取引から生じた未収金や未払金、営業外受取手形や営業外支払手形等が存在する場合にも、同様の理由から、連結決算上、これを相殺消去する必要があります。

Point2.貸倒引当金の調整(ダウン・ストリーム)

連結会社相互間の商品売買取引や土地売買取引から生じた債権債務は期末残高を相殺消去しますが、相殺消去した債権(売掛金、受取手形、未収金、営業外受取手形等)に個別財務諸表上、貸倒引当金を設定している場合、債権が消去される以上、対応する貸倒引当金を減少させる必要があります。

問題(全4問)

下記の各取引について仕訳しなさい。なお、勘定科目は、設問ごとに最も適当と思われるものを選ぶこと。
(なお、スマホでご覧の方は「画面をヨコ」にすると仕訳や表が見切れないのでオススメです。)

問1

東京商事株式会社の大阪商事株式会社に対する×4年度中の売上高は¥2,000、×4年度末の売掛金残高は¥150であった。なお、東京商事株式会社は、×3年度末に大阪商事株式会社の発行済株式数の70%を取得して支配を獲得している。×4年度末の連結財務諸表作成上、必要な仕訳を答えなさい。

 〔勘定科目〕

売掛金売上高利益剰余金非支配株主持分
売上原価買掛金のれん資本剰余金

解答

(借)売上高2,000 (貸)売上原価2,000 
(借)買掛金150 (貸)売掛金150 

※ 問題文に保有比率70%が記載されているが、「取引高と債権債務の相殺消去」の連結修正仕訳を作成する場合には、保有比率は使用せず、取引高と債権債務の全額を消去する。

問2

東京商事株式会社の大阪商事株式会社に対する×4年度中の売上高は¥1,000、×4年度末の売掛金残高は¥200であった。東京商事株式会社は、売掛金の期末残高に対し、貸倒実績率1%で貸倒引当金を設定している。なお、東京商事株式会社は、×3年度末に大阪商事株式会社の発行済株式数の80%を取得して支配を獲得している。×4年度末の連結財務諸表作成上、必要な仕訳を答えなさい。

 〔勘定科目〕

売掛金売上高貸倒引当金非支配株主持分
売上原価買掛金のれん貸倒引当金繰入

解答

(借)売上高1,000 (貸)売上原価1,000 
(借)買掛金200 (貸)売掛金200 
(借)貸倒引当金2*1(貸)貸倒引当金繰入2 

*1  売掛金200×貸倒実績率1%=2

問3

×4年度に東京商事株式会社は土地を大阪商事株式会社に売却したが、×4年度末現在、売却代金¥100は未回収である。なお、東京商事株式会社は、×3年度末に大阪商事株式会社の発行済株式数の80%を取得して支配を獲得している。×4年度末の連結財務諸表作成上、必要な仕訳を答えなさい。

 〔勘定科目〕

売掛金買掛金営業外受取手形営業外支払手形
未収金未払金非支配株主持分のれん

解答

(借)未払金100 (貸)未収金100 

問4

×4年度に東京商事株式会社は土地を大阪商事株式会社に売却した際に、大阪商事株式会社振出の手形¥800を受け取った。×4年度末においても当該手形は決済されていない。東京商事株式会社は、当該手形の期末残高に対し、貸倒実績率4%で貸倒引当金を設定している。なお、東京商事株式会社は、×3年度末に大阪商事株式会社の発行済株式数の90%を取得して支配を獲得している。×4年度末の連結財務諸表作成上、必要な仕訳を答えなさい。

 〔勘定科目〕

受取手形支払手形営業外受取手形営業外支払手形
貸倒引当金貸倒引当金繰入非支配株主持分のれん

解答

(借)営業外支払手形800 (貸)営業外受取手形800 
(借)貸倒引当金32*1(貸)貸倒引当金繰入32 

*1  営業外受取手形800×貸倒実績率4%=32

今回のトレーニングは以上です!
次回は6月9日(金)に公開予定です。それまでにしっかり今回の復習をしておきましょう!

【執筆者紹介】
関口 高弘(せきぐち・たかひろ)
1976年5月神奈川県生まれ。1998年10月公認会計士試験合格。1999年3月中央大学商学部会計学科卒業、2001年3月中央大学大学院商学研究科博士前期課程修了。公認会計士試験合格後、大手監査法人で上場企業を中心とした会計監査に従事。2002年4月公認会計士登録。日商簿記検定試験(商業簿記・会計学)、税理士試験(簿記論・財務諸表論)、公認会計士試験(財務会計論)の受験指導歴17年。現在は、中央大学経理研究所専任講師、中央大学商学部客員講師、朝日大学経営学部非常勤講師、高崎商科大学商学部特命講師他を務める。

<連載バックナンバー>
【第2回】資本連結:支配獲得日の会計処理①
【第3回】資本連結:支配獲得日の会計処理②
【第4回】資本連結:支配獲得後の会計処理①
【第5回】資本連結:支配獲得後の会計処理②
【第6回】成果連結:債権債務の相殺消去(資金取引)、期末貸倒引当金の調整
【第7回】成果連結:債権債務の相殺消去(ダウン・ストリーム)、期末貸倒引当金の調整
【第8回】 成果連結:期末未実現損益の消去(ダウン・ストリーム)
【第9回】成果連結:債権債務の相殺消去(アップ・ストリーム)、期末貸倒引当金の調整
【第10回】 成果連結:期末未実現損益の消去(アップ・ストリーム)
【第11回】 資本連結:開始仕訳①
【第12回】 資本連結:開始仕訳②株主資本等変動計算書の勘定科目
【第13回】成果連結:前期末貸倒引当金の調整(ダウン・ストリーム)
【第14回】成果連結:前期末未実現損益の消去・実現(ダウン・ストリーム)
【第15回】成果連結:前期末貸倒引当金の調整(アップ・ストリーム)
【第16回】成果連結:前期末未実現損益の消去・実現(アップ・ストリーム)
【第17回】成果連結:応用論点(仕入未達取引)
【第18回・完】成果連結:応用論点(連結会社振出の手形の割引・裏書)

<もっと問題が解きたい人へオススメ問題集>

会計士・税理士・簿記検定 連結会計の計算に強くなる3ステップ式問題集
(関口高弘 著・中央経済社)
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