連結会計の仕訳に強くなる超基礎トレーニング【第5回】資本連結:支配獲得後の会計処理②


関口高弘
(公認会計士)

【編集部より】
会計人コースWebの読者アンケートによると、「連結会計」をマスターしたいという声がちらほら。日商簿記2級でも定番論点の一つとなり、会計士・税理士試験など会計系資格の合格を目指す人にとって避けて通ることのできない論点です。
そこで、本連載では、『連結会計の計算に強くなる3ステップ式問題集』の著者である関口高弘先生(公認会計士)に、「連結会計」の仕訳問題を週1回のペースで出題していただきます(毎週金曜日掲載予定)。
本連載で出題する問題は、連結会計に関する日商簿記2級レベルのインプット学習が一通りできた人を対象に、日商簿記1級や税理士試験・公認会計士試験にステップアップを目指す人にとって「土台」となる内容を想定しています。なお、毎回のテーマによって出題数は変動します。
もし本連載でつまずいた問題があれば、もう一度テキストでしっかり復習しましょう!

「本連載のねらい」はコチラをご覧ください。

さらに問題を解きたい方は、『連結会計の計算に強くなる3ステップ式問題集』をチェック!

今回のポイントー資本連結:支配獲得後の会計処理②

今回のテーマ「資本連結:支配獲得後の会計処理②」について、以下のポイントを確認して仕訳問題を解いてください。

Point.子会社における利益剰余金からの配当

(1)親会社持分(親会社への配当)

子会社が親会社に剰余金の配当を行った場合、子会社の個別財務諸表では利益剰余金を減額し(株主資本等変動計算書上は「剰余金の配当」)、親会社の個別財務諸表では受取配当金を計上しています。

子会社から親会社への配当金の支払いは、企業集団内部における資金移動に基づいて計上された内部取引にすぎないため、連結財務諸表上では、その取引を相殺消去する必要があります。

したがって、子会社の剰余金の配当のうち親会社持分部分(親会社への配当金の支払額)と親会社の個別財務諸表で計上した受取配当金を相殺消去する。具体的には利益剰余金(剰余金の配当)と受取配当金を減額します。

(2)非支配株主持分(非支配株主への配当)

子会社の純資産のうち親会社に帰属しない部分が非支配株主持分です。そのため、子会社が非支配株主に剰余金の配当を行った場合、子会社の純資産額が減少することから、「非支配主持分」を減少させる必要があります。具体的には利益剰余金(剰余金の配当)と非支配株主持分を減額します。

問題(全2問)

下記の各取引について仕訳しなさい。なお、勘定科目は、設問ごとに最も適当と思われるものを選ぶこと。
(なお、スマホでご覧の方は「画面をヨコ」にすると仕訳や表が見切れないのでオススメです。)

問1

大阪商事株式会社は×4年度中に利益剰余金からの配当¥200を実施した。なお、東京商事株式会社は、×3年度末に大阪商事株式会社の発行済株式の100%を取得して支配を獲得している。×4年度末の連結財務諸表作成上、必要な仕訳を答えなさい。

 〔勘定科目〕

のれん子会社株式資本金利益剰余金
非支配株主持分非支配株主に帰属する当期純損益のれん償却受取配当金

解答

(借)受取配当金200 (貸)利益剰余金200 

配当金200×親会社持分比率100%=200

問2

大阪商事株式会社は×4年度中に利益剰余金からの配当¥600を実施した。なお、東京商事株式会社は、×3年度末に大阪商事株式会社の発行済株式の70%を取得して支配を獲得している。×4年度末の連結財務諸表作成上、必要な仕訳を答えなさい。

 〔勘定科目〕

のれん子会社株式資本金利益剰余金
非支配株主持分非支配株主に帰属する当期純損益のれん償却受取配当金

解答

(借)受取配当金420 (貸)利益剰余金600 
 非支配株主持分180     

解答の仕訳は、下記の①と②に分けて考えることができる。

① 親会社持分(70%分)

(借)受取配当金420 (貸)利益剰余金420 

配当金600×親会社持分比率70%=420

② 非支配株主持分(30%分)

(借)非支配株主持分180 (貸)利益剰余金180 

配当金600×非支配株主持分比率30%=180

今回のトレーニングは以上です!
次回は5月26日(金)に公開予定ですので、それまでにしっかり復習をしておきましょう!

【執筆者紹介】
関口 高弘(せきぐち・たかひろ)
1976年5月神奈川県生まれ。1998年10月公認会計士試験合格。1999年3月中央大学商学部会計学科卒業、2001年3月中央大学大学院商学研究科博士前期課程修了。公認会計士試験合格後、大手監査法人で上場企業を中心とした会計監査に従事。2002年4月公認会計士登録。日商簿記検定試験(商業簿記・会計学)、税理士試験(簿記論・財務諸表論)、公認会計士試験(財務会計論)の受験指導歴17年。現在は、中央大学経理研究所専任講師、中央大学商学部客員講師、朝日大学経営学部非常勤講師、高崎商科大学商学部特命講師他を務める。

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