諸角 崇順
【編集部から】
会計人コースWebの記事を解析すると、税理士試験・会計士試験ともに独学での学習法についてPV(ページビュー)が非常に多いです。でも、独学の場合「いつ・何を・どう勉強していけばよいか」を自分自身で考えて実行しなければならず、この点が受験生の大きな悩みどころではないでしょうか。
そこで、本連載では、敏腕講師のかえる先生(諸角崇順先生)に、主に独学で税理士試験の簿記論・財務諸表論の学習をスタートする方、もしくは前回の試験までは専門学校を受講していたものの次回は独学で再チャレンジしようという方に向けて、毎月1回、その時々で実践すべき学習内容を提示して合格をナビゲートしていただきます(毎月1日更新予定・23年8月1日まで全11回予定)。
独学の方はもちろん、専門学校の講義を受講している方も是非参考にしていただければと思います。
それでは今月の学習ナビゲーション、スタート!
ここから本試験までの約4ヵ月をどう過ごすか?
みなさん、こんにちは! 先日、国税庁から今年の本試験の日程が発表されました(令和5年度(第73回)税理士試験実施スケジュールについて|国税庁 (nta.go.jp))。
それによると、みなさんが受験する令和5年度の税理士試験は、8月8日(火)~8月10日(木)の予定となっています。試験会場はまだ発表されていませんが、基本的に昨年度の試験会場がそのまま今年度の試験会場となることが多いと思われます。
そこで、本試験を受験するにあたりホテルに前泊する可能性のある方は、今のうちに、「受験前夜に宿泊するにふさわしいホテル」を探しておきましょう。宿泊先を選ぶ際は、本連載第4回の記事をぜひ参考にしてください。
さて、本試験の日程が発表されると、今まで以上に本試験を意識し始めると思います。そして、ここから本試験までの約4ヵ月の過ごし方が本当に大切となってきます。その過ごし方の参考となるのが大手資格学校のカリキュラムなので、ここで大手資格学校の一般的カリキュラムをご紹介します。
受験勉強開始~4月末 | 基礎的知識のインプット |
ゴールデンウィーク | 4月末までの内容で、重要度の高い論点の総復習(広く浅くのイメージ) |
ゴールデンウィーク明け~6月中旬 | 4月末までの内容で、重要度の高い論点および重要度が中程度の論点の総復習 |
全国公開模試(6月中旬) | *できれば会場受験をして雰囲気に慣れておきましょう。 |
全国公開模試~本試験日 | ここまで解いてきた問題集でよく間違えた論点を中心とした総復習(いい意味での偏った総復習) |
大手資格学校では、ゴールデンウィーク明け以降、週1回の総まとめ講義+週1回の模擬試験を7月中旬頃までひたすら繰り返すことになります。そして、大手資格学校に通う受験生の多くは、6月中旬に実施される全国公開模試に照準を合わせて仕上げるように勉強計画を立て、その計画を淡々とこなしていきます。
大手資格学校が、昔から上記のようなカリキュラムを組んでいるのはなぜでしょうか。それは、やはり効果があるから、という理由でしょう。ですので、独学の方も学習スケジュールの参考にするといいと思います。
また、独学の方は、金銭的・時間的事情などにより独学というスタイルを選んだと思うのですが、それでも可能であれば、特に理論のある科目(財務諸表論)は、5月以降に実施される資格学校の直前対策講座に申し込み、理論について「客観的な採点」を受けるとよいでしょう。
私は個人で資格学校を運営していますが、財務諸表論(理論)の添削をされた経験のない独学の方の答案をチェックすると、会計学の内容というより、むしろ国語的なこと(論文の書き方など)で、たくさんの指摘をすることが多く、答案を真っ赤にして返すことがあります。
知識が正確でも、その表現の仕方が稚拙であれば得点にはつながりません。ぜひ、独り善がりな答案となっていないか、第三者のチェックを受けることをオススメします。
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それでは、科目別のアドバイスをします。
簿記論・財務諸表論共通ー4月末までに一通りのインプットを終える
冒頭で述べたように、ゴールデンウィーク期間中に総復習を一通り終えるためには、4月末までに一通りのインプットを終えておく必要があります。独学の方で多いのは、本試験の前日までインプット学習をしてしまい、せっかく合格に必要な知識量を備えても、その知識を答案に反映させるノウハウを知らない、というパターンです。
ゴールデンウィーク明け以降、アウトプット(知識を得点に変える練習)中心の勉強に切り替える必要があることから、できる限り4月末までに一通りのインプットを終える勉強計画を立てましょう。
簿記論ー4月末までに個別問題集を使って穴を埋める
確定申告期限も終わり、超繁忙期は過ぎたかと思います(まだまだ「繁忙期」だとは思いますが…)。
超繁忙期、机に向かって勉強する時間が減っていた、つまり、簿記論そのものの勉強時間や総合問題を解く時間が減っていた、ということになっていたと思うので、4月中に取り戻しておきましょう。超繁忙期に勉強時間が減ったことで、今までは解けていたのに解けなくなっている、という論点の穴が生じている可能性があります。多くの「総合問題」を解くことで、その穴を見つけ、4月末までに「個別問題集」を使ってその穴を埋めておきましょう。
1週間あたりの勉強時間の目安:16時間前後
財務諸表論(計算)ー4月末までに個別計算問題集を使って穴を埋める
財務諸表論(計算)も簿記論と同じく『机』が必要な勉強なので、2〜3月には計算に割く時間が減っていたと思います。簿記論と同じように、「総合計算問題」を解いて論点に穴がないか確認し、穴が見つかれば、4月末までに「個別計算問題集」を使ってその穴を埋めておきましょう。
1週間あたりの勉強時間の目安:8時間前後
財務諸表論(理論)ー4月末までに総論を復習して知識を点から線にする
ゴールデンウィークには、受験勉強を始めてから4月末までに覚えた理論をもう一度覚え直す作業が待っているので、理論暗記の復習をこまめにできていない方は、そろそろ理論の総復習を開始しても良い頃でしょう。
なかでも、この時期には「総論」の復習を必ずやっておきましょう。個々の理論を暗記することは『点』の知識です。それを『線』につなげるのが「総論」です。
特に独学の方は、総論の重要性に気づいていないことが多く、また、「総論」そのものの知識が弱い傾向があります。なぜなら、「総論」は、しっかりした知識のある人から整然と説明を受けないと、なかなか理解がしにくいためです。だからこそ、きちんと時間をとって「総論」の理解に努めてください。「総論」が理解できれば一気に得点力が上がります! がんばってください!!
1週間あたりの勉強時間の目安:12時間前後
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第8回は5月1日(月)にUP予定です。
ご期待ください!
<執筆者紹介>
諸角 崇順(もろずみ・たかのぶ)
大学3年生の9月から税理士試験の学習を始め、23歳で大手資格学校にて財務諸表論の講師として教壇に立つ。その後、法人税法の講師も兼任。大手資格学校に17年間勤めた後、関西から福岡県へ。さらに、佐賀県唐津市に移住してセミリタイア生活をしていたが、さまざまなご縁に恵まれ、2020年から税理士試験の教育現場に復帰。現在は、質問・採点・添削も基本的に24時間以内の対応を心がける資格学校を個人で運営している。
ホームページ:「かえるの簿記論・財務諸表論」
【連載バックナンバー】
第1回(10月の学習ナビ)
第2回(11月の学習ナビ)
第3回(12月の学習ナビ)
第4回(1月の学習ナビ)
第5回(2月の学習ナビ)
第6回(3月の学習ナビ)
第7回(4月の学習ナビ)
第8回(5月の学習ナビ)
第9回(6月の学習ナビ)
第10回(7月の学習ナビ)
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【書籍紹介】