教えて先生! 「ミニ税法」受験生が直前期に知りたいQ&A5選


税理士 鈴木雅人

【編集部から】
税理士試験における「ミニ税法」は、学習のボリュームが比較的少なく、受験生のほとんどが合格レベルに達したうえで試験に臨みます。
そのため、他の受験生に差をつける 「もう1歩先の努力」が必要となり、特に実力が可視化される直前期において、勉強の方針や方法に悩む方も少なくないと思われます。
そこで、大手専門学校元講師の鈴木雅人先生(税理士)に、受験指導経験を踏まえて、直前期にミニ税法受験生からよく受けたという5つの質問について、Q&A方式で答えていただきました。

はじめに

みなさん、こんにちは。税理士の鈴木雅人と申します。

私は税理士法人に勤務する傍ら、令和2年度まで大手専門学校で所得税法・住民税の講師として教壇に立っていました。教室講義のほか通信講義も担当し、相談員として電話やメールでの相談にも数多く対応してきました。全国の受験生と接点がある立場で講師をしていたため、多くの方から質問をいただく機会がありました。

今回は「ミニ税法」にテーマを絞り、受験生からよく受けた相談を5つピックアップし、Q&A形式で答えたいと思います。

ミニ税法は、学習のボリュームが少なく、受験生の多くが合格レベルに達しやすいです。出題される問題も極端に難しいものではありません。しかし、だからこそ単純なミスが許されません。

また、受験者の数も相対的に少ないため、自分の学習法が合っているのか悩む受験生が多くいるように思います。

今回の記事を通して、皆さんが少しでもよいメンタルで本試験に臨むことができたら幸いです。

すべての論点をまんべんなく押さえる

【Q1】
他の専門学校の答練も受けたほうがよいですか?

【A1】
受けることをおすすめします。

最初に述べたように、ボリュームの少ないミニ税法は、多くの受験生が専門学校で学習する論点をほとんどマスターした状態で本試験に臨みます。

専門学校にはそれぞれ特色があり、力の入れどころが異なります。「ある専門学校が重要論点として推していたにもかかわらず、別の専門学校はそこまで重要視していなかった」ということもあります。

仮に、ある専門学校だけが推していた論点が出題されてしまったとき、その差を他の論点でカバーできればよいのですが、その可能性はあまり高いとは言えません。

なぜなら、ミニ税法の合格レベルにある受験生は答案の作成能力も高い水準にあり、ミスをあまりしないからです。

そのため、知らない論点や他の受験生が勉強している論点についても、まんべんなく押さえにいくことが重要です。

本試験に独特のクセに慣れる

【Q2】
過去問は解いたほうがよいですか?

【A2】
もちろん解いてください!

自分が試験委員になったことを想像してみましょう。「試験問題を作成しろ」と言われたら、何を参考にしますか?

それは過去問ではないでしょうか? 試験委員だって同じはずです。

ミニ税法の学習範囲が狭いということは、それだけ過去の出題と似た言い回し、似た論点が出る可能性が高いということです。

専門学校の答練も過去問を参考にして作られていますが、どうしても答練ごとに出題範囲の制限があったり、別解が出ないよう綿密に練られていたり、本試験より“読み解きやすい”問題に仕上がっていることがあります。

本試験ならではのクセのある言い回しなどもありますので、本番で面食らうことがないように過去問を解いて、独特の形式に慣れてから本試験に臨みましょう。

誰よりも速く正確に、「できるまで」解く

【Q3】
答練や問題集は何回解き直せばよいですか?

【A3】
回数ではありません。その論点が「できるまで」です。

目標は何回解くかではなく、その論点が解けるようになることです。

極端ですが、百発百中で解ける論点なら1回でもよいでしょう。本番で正解しなければいけないのに解けない論点なら、できるまで十回でも、百回でも解き直してください。

ただし、ミニ税法でも、学習カリキュラムに入っているものの、できなくてもよい、または出題頻度が低い(総合問題の構造上、出題しにくい)論点もあります。

うまく取捨選択しつつ、誰でもできる論点は誰よりも速く、誰よりも正確に解けるよう練習してみてください。

本試験では問題を3タイプに分ける

【Q4】
本試験で見たこともない問題が出た場合、どうすればよいですか?

【A4】
いったん、落ち着いてください。

いきなり問題を解き始めるのではなく、まず全体をざっと流し読みします。

そこから①誰でも解くことができて時間もかからない論点、②誰でも解けるけれど時間のかかる論点、③未学習でわからない論点に大別してください。

そのなかで①を誰よりも速く正確に解く、その後残った時間で②を解く、時間が余れば③を解く(ただし見直し優先です!)、という心持ちで取り組むのがよいと思います。

本試験の独特な緊張感の中では、ただでさえ自分がしたこともないミスをしがちです。「見たこともない問題が出たから…」と焦っては実力を発揮するのは難しいです。

「見たこともない問題は出るものだ」と思って本試験に臨み、実際に出たとしても「まだあわてるような時間じゃない」と自分に言い聞かせ、いつもどおり問題に取り組みましょう。

迷ったら、将来的なプランも考えて受験する

【Q5】
他科目と同時受験する予定です。ただ、なかなか成績が伸びず、ミニ税法に絞るか、もしくはミニ税法を捨てるか迷っています。

【A5】
なるべく同時受験する方向で考えてみてください。

そもそも、「合格」は受験しなければ勝ち取れません。

「理論はこれだけ」などと論点を絞ってもよいので、当初の予定どおり受験はしたほうがよいでしょう。

ただし、あまりにも学習時間を確保できない場合には、必須科目を優先的に受験するよう計画するのがよいと思います。

これは環境次第なのですが、これから就職する場合や働きながら受験している場合、将来的に職場での立場が上がると、勉強に確保できる時間が少なくなる可能性があるからです。

それぞれの科目の習熟度がどれくらいか、あと何年受験に充てられるのかなど、基準をもって受験科目を考えてみてください。

さいごに

ミニ税法はボリュームが比較的少ないため、そのように呼ばれてはいますが、そうは言っても税理士試験の1科目です。受験者数が少ないぶん、合格者の絶対数も少ない狭き門です。

「ミニ税法だから」と油断することなく、しっかりと対策を立てて合格を勝ち取ってください。

〈執筆者紹介〉
鈴木 雅人(すずき・まさと)

税理士
埼玉大学経済学部卒業後、令和2年度まで資格の学校TAC税理士講座講師(所得税法・住民税)として、教室講座の他、通信担当講師として全国の受験生の指導にあたる。さらに、テキストや答練などの教材作成も担当。
勤務しているマルイシ税理士法人は、不動産と相続の専門家集団として不動産オーナーや不動産会社の問題解決のサポートを行っている。

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