編集部が税理士(税法)科目免除大学院のオンライン説明会に参加してみた!―東洋大学大学院経営学研究科編①:大学院選択、入試、院生生活、修士論文の書き方等


 税理士試験受験生の中には、大学院での科目免除を検討している方もいると思います。

 大学院での科目免除については、
●そもそも科目免除のための大学院ってどんなところ?
●修士論文って何? どう書く? 
●それ以前に入試に合格するにはどうしたらいい?
等々さまざまな疑問があるでしょう。

 そうした受験生の疑問に答えるため、東洋大学大学院経営学研究科ビジネス・会計ファイナンス専攻・会計ファイナンス専門家養成コース(以下、「本コース」)の説明会が8月30日にオンラインにて開催されると聞き、参加してみました!
 説明会では、特に税法の科目免除に焦点をあてて、以下の1~6は依田俊伸先生(東洋大学大学院教授)、7は金子友裕先生(東洋大学大学院教授)よりお話がありました。
 1.税理士試験における税法科目免除の概要
 2.大学院選びのポイントは?
 3.入試について①―受験要件は要チェック!
 4.入試について②―研究計画書はどう書く?
 5.大学院2年間のスケジュールは?
 6.修士論文って何? どう書く?(以上、本日)
 7.質疑応答(②:9/7UP予定)
 ここでは2回にわたり、その概要をレポートします。

1 税理士試験における税法科目免除の概要

 まず、税理士法7条で規定されている科目免除のために必要となる「税法に属する科目等に関する研究」とはどのようなものかについてお話がありました。

 具体的には、以下の内容が必要とのこと。

  • 「税法=法律」であり、法解釈や判例研究が中心になること
  • 修士論文の研究内容について国税審議会の認定を受ける必要があること(つまり審査をパスしなければいけないこと)
  • 日本の現行税法の研究が前提とされること(歴史や諸外国の研究は×。ただし、比較法的要素を盛り込むのは○)

 特に1つ目の点は、税理士試験の受験勉強とは大きく異なると強調されていました。

 ですので、大学院で研究・修士論文を作成するには税理士試験の受験とは発想を大きく変えていく必要がありそうです。

2 大学院選びのポイントは?

 税法科目免除を目的に大学院に入学しても、最終的に科目免除ができなければ無駄な努力になってしまいます。

 そうならないため、一般論として、大学院を選ぶ際に教育内容について以下の点を確認すべきとのアドバイスがありました。

(1) 税法科目が 4 単位以上配置されているか?
→大学院のカリキュラムの確認

(2) 税法に関する修士論文を作成することができるか?
→カリキュラムの中に「租税法演習」といった科目が配置されているかの確認

(3) 税法に関する修士論文の研究指導を受けることができるか?
→指導教授の専門分野、指導教授の免除実績の有無の確認

 HPで確認するだけでなく、今回のような説明会などにも積極的に参加して確認するとよいですね。

 なお、東洋大学大学院経営学研究科の本コースは、(1)(2)はもちろんのこと、税法を専門とする教授2名をはじめ充実の指導を行っており、また多数の免除実績もあることから安心して研究に取り組めると思います。

3 入試について①―受験要件は要チェック!

 多くの大学院では夏・秋・冬に入試が行われています。
 東洋大学大学院経営学研究科の本コースも、8月、11月、2月の3回行われるとのこと(HP参照)。

 8月入試は終わってしまいましたが、今から準備すれば11月入試には間に合いそう(参考:出願期間11/4~11/11、試験日11/27)。
 なお、東洋大学大学院経営学研究科の本コースを受験する場合、以下の要件を満たす必要があるとのことです。

*税理士法の「学位による試験科目免除」制度の利用を希望する者は通常の出願資格に加え、以下の2つの要件を全て満たす必要があります。
① 税理士試験5科目のうち1科目に合格していること(出願時に合格を証明する書類を提出すること)。
② 会計ファイナンス専門家養成コースに出願すること。

 「①税理士試験5科目のうち1科目に合格していること(出願時に合格を証明する書類を提出すること)。」は、会計科目でも税法科目でもOKですが、合格科目が全くない場合は出願できないとのこと。
 これは、院生の質を担保するためとのことですが、大学院によって出願資格は異なるので、志望する大学院についてHP等でよく確認すべき重要ポイントですね。

4 入試について②―研究計画書はどう書く?

 どの大学院を受験する場合にもほぼ必ず作成・提出を求められるのが「研究計画書」。
 東洋大学大学院経営学研究科の本コースでも、一般入試、社会人入試(外国人留学生入試)いずれでも作成・提出を求められています。
 なんだか難しそうですが、どう書けばいいでしょうか?

 ポイントとしては、将来の修士論文作成を前提として

●どのようなテーマを研究するか?
●なぜその研究をするのか?
●どのような方向性で研究を進めるのか?

を書く必要があるとのこと。
 そして、これらについて、

  • 日本語として読めるように書くこと
  • 立派なものでなくてもよいので、自分の頭で考えて書くこと

が大事とのお話をされていました。

 自分の頭で考えず、書籍やネット等の情報を写しただけでは、論旨がつながらないことも多く、何より面接でボロが出ますね。
 ですので、この点は十分に検討する必要がありそうです。

5 大学院2年間のスケジュールは?

 大学院に入学するとどのようなスケジュールで研究を進めて、ゴールとなる修士論文を完成させていくのでしょうか?
 依田先生は以下のようなスケジュールで指導されているとのことでした。

◆ 1年次
① 入学直後の修士論文に関する特別講義
② 修士論文に関する「題目届」の提出(4月)
③ 前期授業(講義科目および演習科目)
④ 夏休み中の「補講」
⑤ 修士論文中間報告会(7月末)
⑥ 後期授業(講義科目および演習科目)
◆ 2年次
① 春休み中の「検討会」(ゼミごと)
② 「題目届」の提出
③  前期授業(講義科目および演習科目)
④  修士論文中間報告会(7月末)
⑤  後期授業(講義科目および演習科目)
⑥  修士論文中間報告会(11月)
⑦「修士論文」の提出(1月上旬)
⑧「修士論文口頭試問」(1月末)
⑨ 修士論文審査、修了認定

 本コースの場合、平日夜と土曜日で講義・演習(ゼミ)等を行っていて、社会人にやさしいカリキュラムといえます。
 なお、2年間で30単位取得が修了の要件となりますが、多くの院生は1年生で講義科目の履修をほぼ終えて、2年生では論文作成に注力しているそうです。

6 修士論文って何? どう書く?

 「論文」って、やっぱり書くの難しそう・・・
 では、何をどう書けばよいでしょうか?
 依田先生は、論文の必須要件として以下を挙げておられました。

「論文」とは、自分で立てた問いに対して、1つの明確な答えを主張し、その主張を論理的に裏付けるための事実的・理論的な根拠を提示して主張を論証するものである。
すなわち、論文といえるためには、次の3点が必須要件となる。
① 問い(テーマ)が存在すること
② 問いに対して、明確な答え(主張)が存在すること
③ 答え(主張)を論理的に導き出すための論証が存在すること

 大学院の講義や演習(ゼミ・論文指導)では、このような論理的な思考力を鍛えることを主眼とした指導が行われますので、まずは大学院の講義や演習等について全力で取り組むべきと思います。
 依田先生は、院で学び修士論文を完成させることでこのような論理的思考力が身につき、試験合格よりもメリットが大きくなるように指導されているとのことでした。

(明日の第2回につづく)

◆東洋大学大学院経営学研究科ビジネス・会計ファイナンス専攻・会計ファイナンス専門家養成コースの次回個別相談会のご案内
開催日:①12月3日(土)19時~20時30分 ②12月7日(水)19時~20時30分
開催方法:オンライン
申し込み方法:東洋大学HPからお申し込み下さい。

◎大学院進学を検討される方は、以下の依田先生・金子先生の記事もあわせてご覧ください!

今春から税法免除で大学院に進学する方へのアドバイス―思考法、金子『租税法』の読み方、修論テーマの選び方、試験との両立について

新刊『課税所得計算の形成と展開』の編著者・金子友裕先生にきく 本書の読みどころと税法・税務会計研究のヒント

【大学院ルートで税理士になるには?】依田俊伸教授に聞く コロナ禍の大学院生活・入試、大学院選びのポイント

【税理士科目免除】大学院は冬入試シーズン! 研究計画書のポイントを最終チェック

<依田先生・金子先生の書籍紹介>

金子友裕著『法人税法入門講義(第6版)』
→計算と理論の基礎が同時に学べる入門テキストです。
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金子友裕編著『課税所得計算の形成と展開』
→法人税の基礎概念である課税所得計算に関する歴史的な経緯や先行研究の在り方を整理し、さらに現在から将来に影響すると思われる論点について詳細な検討した研究書。特に院での研究に有益な内容です。
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菊谷正人・依田俊伸著『財務会計論の基礎と応用(第2版)』
→第1部で財務会計の基本事項を説明し、第2部で個別会計基準ごとの意義や会計処理を解説。財務会計の基礎知識の習得に最適です。
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