整理収納アドバイザー税理士が教える! 繁忙期の負担をなくす「書類整理」ノウハウ


税理士 小野寺綾子

こんにちは。整理収納アドバイザー税理士の小野寺綾子です。

2022年も気づけば2月。私は昨年の12月頃から繫忙期に入り、業務に追われる日々を過ごしていますが、会計事務所等にお勤めのみなさんも、同じ状況の方が多いのではないでしょうか? また、これからは確定申告時期にも入りますので、ますますお忙しくなると思います。

さて、突然ですが、ビジネスパーソンが「探しものをする」ためだけの時間は1日あたりどれくらいだと思いますか?

実は、1日あたり平均36.7分、年間にすると約19日分を「探しものをする」ためだけの時間に使っているのです。実に多くの時間を費やしていることがわかりますね。

今回は、繁忙期の仕事を少しでも早く終えるための工夫を、「書類整理」の視点からご紹介したいと思います。

【ステップ1】 「必要な書類」と「不要な書類」 に分ける
【ステップ2】「紙で保存」か「デジタルで保存」か判断する
【ステップ3】必要な書類を「分類」する
【ステップ4】書類を「保管」する
【ステップ5】維持管理のルールを決める

【ステップ1】「必要な書類」と「不要な書類」 に分ける

みなさんのデスクを思い出してみてください。

あとで読もうと思っていた書類が山積みになっていませんか? そして、その書類の情報は今でも最新のものでしょうか?

ある統計では、100枚の書類のうち1年後に活用する書類は「たった1枚」という結果も発表されているのです。つまり、1年以上経過した書類を見返すことはとても少ないのですね。

ほとんど見返すことのない書類を処分せずに保管していると、本当に必要な書類を探すときに時間がかかってしまいます。ただでさえ忙しい時期は、探しものをする時間はできるだけ短くしていきたいですよね。

そのためには、まず手元にある紙の書類を「必要な書類」と「不要な書類」に分けていきましょう。

このときの書類を減らす目安は「50%」です! 50%も減らすなんて難しいと思う方もいらっしゃると思いますが、上記の統計のように、書類の多くは見返す機会が少ないのです。

そのため、たとえば、直近2年分くらいは手元に残し、それよりも古いものは破棄するなど、積極的に書類を減らすように心がけましょう。

ただし、なかには保存年数が法律で定められている書類もあるのでご注意ください。

【ステップ2】「紙で保存」か「デジタルで保存」か判断する

「必要な書類」だけになったら、続いて、紙で保存するのか、それとも、デジタルで保存するのかを判断しましょう。

紙で保存するメリットは、

  • 気軽に持ち運びができる
  • 一覧性に優れていて確認しやすい
  • メモがとりやすい
  • ITのスキルやシステムの有無が関係ない

が挙げられます。

具体的には、保存年数が法律で定められているもの、原本で保存することが必要とされているもの、現物に価値があるものなど、「記録」や「証明」を重視している書類が紙での保存に向いています。

一方、デジタルで保存するメリットは、

  • 大量のデータから情報を検索できる
  • 保管スペースが必要ない
  • 場所にとらわれず確認できる
  • セキュリティに優れている
  • すばやく情報共有できる

が挙げられます。

具体的には、活用頻度が高いもの、利用する人数が多いもの、場所を問わず閲覧したいもの、スペース削減による効果が期待できるものなど、「活用」を重視している書類がデジタルでの保存に向いています。

紙で保存するかデジタルで保存するかは、それぞれ向いている書類が違いますので、どちらかの方法だけで保存するのではなく、書類ごとにどちらの保存方法が適しているかを考えながら片付けていきましょう。

【ステップ3】必要な書類を「分類」する

さて、紙で保存するか、デジタルで保存するかが決まったら、それらを分類します。

「分類」とは、ものを探しやすいように分けることをいいます。この分け方によって探しやすさが違ってくるので、時間をかけてじっくり考えましょう。

分類は【大分類→中分類→小分類】と細分化します。この3段階に分けることが必要な書類を片付ける際の秘訣です!

【大分類→小分類】の2段階で分類されているケースを多く見かけますが、この方法だと、見返したい書類を取り出すときに、探すことをしなくてはいけないので、ぜひ中分類を加えてみてください。これだけで、使い勝手がだいぶ変わりますよ!

たとえば、税理士事務所にお勤めの方の場合は、

  • 大分類:お客様(例 ABC株式会社・合同会社あいう)
  • 中分類:書類の属性(例 定款や届出書などの永久保存が必要な書類・申告書控・月次の書類・給与計算書類)
  • 小分類:各書類

一般企業の経理部にお勤めの方の場合は、

  • 大分類:業務別(例 請求・支払い)
  • 中分類:年月
  • 小分類:各書類

などをお勧めします。

また、実際に分類のルールを考えるときは、保存する書類を付箋などに書き出しながら決めると、書類がバラバラにならずにすみますよ。

特に紙で保存する場合は、書類の棚卸しをすると、今後、年末や年度末までに増える書類の量を予測することができます。その予測を踏まえて収納スペースも確保しましょう。

【ステップ4】書類を「保管」する

分類できたら、書類を保管していきます。ここからは、紙で保存する場合とデジタルで保存する場合とに分けてご紹介します。

紙で保存する場合

紙の書類を整理することを「ファイリング」といいます。

このファイリングには、個別フォルダを使った「バーチカルファイリング」と二穴式リングファイルを使った「簿冊式ファイリング」の2つの方法があります。

【バーチカルファイリングのイメージ】

バーチカルファイリングは、「不要な書類の捨てやすさ」をポイントとしているため、

  • 綴じこまないので不要な書類を捨てやすい
  • 省スペースで保管できる

というメリットがある一方で、

  • 綴じこまないことで書類がバラバラになりやすく、書類を取り扱いにくい
  • 職場の什器が縦型の場合、個別フォルダが入れにくい
  • ファイル用品のコストが高い

というデメリットもあります。

【簿冊式ファイリングのイメージ】

一方、簿冊式ファイリングは、「使い慣れること」をポイントとしているため、

  • 使い慣れている
  • 持ち運びや紙をめくることが簡単
  • 縦型の什器に収納しやすい
  • ファイル用品のコストが比較的安い

というメリットがある一方で、

  • 綴じこまれているため、不要な書類を捨てにくい
  • ファイルがいっぱいになるまで書類を捨てないため、年度管理がしづらい
  • リングの厚みがあるため、書類が少なくてもスペースがとられる

というデメリットもあります。

保存方法には、それぞれメリット・デメリットがあるので、それらを踏まえてみなさんの職場に適している方法を選んでください。

また、保管方法だけではなく、廃棄することも意識していただきたいと思います。書類を減らす機会がなければ、せっかく減らした書類がまた増えてしまいます。そのためには、

  • 廃棄しやすい仕組みを作る
  • 廃棄の時期を明確にする

など、書類は廃棄することが前提にあるものとして取り扱いましょう。

デジタルで保存する場合

デジタルで保存する場合、フォルダの階層は紙よりも多くすることが可能です。ただし、最高でも4階層までとし、5階層以下の深いフォルダは上の階層に移動するか削除するようにしましょう。

また、紙で保存する場合もそうですが、フォルダやファイルにタイトルを付ける際のポイントは、「令和○年度 ABC株式会社 請求書」のように、すぐに内容をイメージできるタイトルにすることです。

たとえば、「文書」「書類」「全般」「一式」「関係」「類」「○○その他」など、あいまいな言葉は使わないように心がけましょう。

特にデジタルで保存する場合は、検索できるメリットを活かすために、表記ルールを統一することをお勧めします。

たとえば、「かぶしきがいしゃ えーびーしー」という会社を表記する場合、「株式会社ABC」と書く方もいれば、「(株)ABC」と書く方がいたり、さらには「株式会社エービーシー」とカタカナで書く方もいます。

しかし、このように同じ会社を示しているのに表記の仕方が異なると検索性が下がってしまいます。そのため、

  • 「株式会社」「有限会社」「合同会社」「一般社団法人」などの略語
  • 会社名などのカタカナ表記、アルファベット表記
  • 年度の西暦表示または和歴表記
  • 通し番号などの付与の仕方

などの、ルールをあらかじめ決めておきましょう

そのほか、フォルダ名やファイル名を付けるポイントとしては、

  • 大分類、中分類、小分類のフォルダ名の先頭にはナンバリングを行う
  • フォルダやファイルが10個以上になる場合は、自動ソートされるため、3桁(001、002・・・)とする
  • 空白(スペース)を使用しない
  • 記号の半角文字(例:スラッシュ「/」、ハイフン「-」、ピリオド「.」、チルダー「~」)はファイルトラブルの原因となることがあるため、極力使用しない
  • 英数字は全て半角を使用する(全角を使用しない)
  • フォルダ名やファイル名を構成する複数の要素間をつなぐ区切りは、半角アンダーバー「_」を使用する
  • 日付の場合、2022年4月1日などは「202241」ではなく「20220401」とする

などが挙げられます。ぜひルールと同様にあらかじめ決めておきましょう。

【ステップ5】維持管理のルールを決める

ここまで、書類を紙で保存する場合とデジタルで保存する場合についてご紹介してきましたが、今後、再び不要な書類が増えてしまうことがないように、ぜひ維持管理をするためのルールも決めていただきたいと思います。

【維持管理の4つのポイント】
1.やる時間を決める
2.やるを決める
3.やる場所を決める
4.やるコトを決める

たとえば、紙の書類の場合は、

1.終業後、退社する前に10分間
2.自分で
3.自分のデスクの上を
4.何もない状態まで片付ける

デジタルの書類の場合は、

1.月1回の全体ミーティングの後の15分間
2.自分で
3.自分のパソコンや共有サーバーを
4.ルール通りに保存されているかを確認する

など、ぜひ習慣化できるような無理のない方法で、整理された環境を維持していただきたいと思います。

これからの時期は、ますます仕事が忙しくなり、特に 働く税理士受験生のみなさんにとっては、 仕事と勉強を両立させることがこれまで以上に難しくなると思います。

そのようななかで、1分でも早く仕事を終える工夫はいろいろあると思いますが、探しものをする時間を減らすことも取り入れ、残りの貴重な時間を休息や勉強に充てていただけたらと思います。

今回ご紹介したなかで、1つでもできることから取り組んでみてくださいね。応援しています!

〈執筆者紹介〉
小野寺 綾子(おのでら あやこ)
税理士/整理収納アドバイザー

2001年に大学卒業後、新日本アーンストアンドヤング株式会社(現 EY税理士法人)にて、17年間にわたり個人事業主から上場企業まで幅広い税務申告書の作成業務に従事した後、独立開業し現在に至る。
「働く女性が定時で帰宅すること」をモットーに、整理収納アドバイザー1級の資格と前職での完全ペーパレス化導入の経験を活かした起業家支援を行う。家庭では小学生女子の母。
東京レインボータウンFMのラジオ番組やC Channelが運営するママ向け動画マガジン「mamatas」に出演。

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