【税理士法人山田&パートナーズ社員インタビュー】File1:安岡 喜大「次の世代を担う人たちへ 税理士の仕事はこれからも社会に求められる」


税理士法人山田&パートナーズ(YP)に入社して13年目の安岡さん。2014年に「ソリューション事業部」の立ち上げに関わり、現在そのトップを務めていらっしゃいます。大学卒業後は保険会社に8年間勤め、そこから税理士を目指されたそうです。仕事のことはもちろん、長くこの業界で働いてきたからこそ感じている魅力や、人材育成で心がけていることなど、経験豊富な視点でお話しいただきました。会計業界とはどんな世界なのか、これからどうなるのかが知りたいすべての受験生に必見の内容です。

【目次】
現在のお仕事について聞いてみよう!
働き方の変化について聞いてみよう!
これまでのキャリアについて聞いてみよう!
求める人材と組織の魅力について聞いてみよう!
今後の展望について聞いてみよう!

現在のお仕事について聞いてみよう!

――現在は、どのようなお仕事をされていますか?

安岡さん ソリューション事業部は、個人や法人、国内・国外問わず、税務に関するさまざまな仕事をしている部署です。最近多い案件としては、「事業承継」です。

事業承継というのは、中堅企業のオーナーさんが持つ自社株を、次の世代の方、たとえば2代目や3代目の方のような親族の中で引き継ぐこと。あるいは、親族にふさわしい方がいなければ、外部に事業自体を売却するケースもあります。

他にも、血が繋がっていないけれども社内にいる役員の方などに会社自体を任せるということもあります。そのような場面を、税務的に、会計的にお手伝いをするといった業務です。

――クライアントには個人も法人もいらっしゃるとのことですが、たとえば、1つの会社に対しては何人くらいで担当されるのですか?

安岡さん そうですね、基本的に1人ということはまずありません。複数名で対応することが原則になっています。あとは、その案件の性質によって、メンバーを決めていくことになります。

たとえば、大規模な法人であればメンバーは3人、4人、5人と増えていきますし、個人の相続のお客様であれば2人といったようなかたちで、チームを組んで動いています。

また、法人の業務は、大きく2つに分けることができます。1つが、いわゆる顧問契約ですね。「税務顧問」と我々は言いますが、常にお客様との契約があるなかで、税務の相談を受けたり会計のチェックをしたりします。そして、最終的には決算書を作ったり、 税務申告書を作ったりして、申告するというのが1つの側面です。

もう1つが、「スポット業務」と呼ぶもので、たとえば組織再編やM&Aのような大きなイベントがあるときに、その業務が終わるまでの期間限定でプロジェクトをお手伝いします。これは、平均すると半年から1年くらいのプロジェクトが多いですね。

――事業承継といった用語が出てくると、受験生としては「相続税法に合格している必要があるのかな」と気になるかと思いますが…。

安岡さん そうですね、受かってなくてもかまいませんが、勉強はすべきだと思いますよ。

働き方の変化について聞いてみよう!

――ここ1〜2年、あらゆる業界で働き方が一気に変わりました。安岡さんとしては、どのような変化がありましたか?

安岡さん ウェブでのミーティングが増えましたね。最近は特に、会社でも、会計業界でも、「デジタル格差」が顕著に現れているような気がします。

というのも、領収書などの原始資料等はPDF等にしたものを送ってもらう、あるいはデータにしたものを送ってもらうのが当たり前となってきています。

一方で、「資料は紙でしか渡せません」といった会社も、当然世の中にはたくさんあります。しかし、資料が紙でしか出せないとなってくると、効率が悪くなることが想定されます。

もちろん、これまでどおり対応されている会計事務所もあるので、資料を紙でもらって加工して、申告書を作って届けますといった、少し効率的でない業務を継続する会計事務所と、そうじゃない層の二極化がますます顕著になるのかなと思います。

――ということは、貴社のような大手法人だと、デジタルに対応している会社がクライアントになるということでしょうか。

安岡さん そういうわけではありません。そのような対応ができるように我々から働きかけることで、業務体制を見直してもらうこともあります。

――業界によってはコロナの影響が大きくあります。クライアントの状況はいかがでしょうか?

安岡さん 一部の業界は厳しい環境でした。残念ながら、ある会社のお客様は事業譲渡をすることになりましたし、清算の手続きを開始している会社もあります。そのような顧問先には、まず、補助金の申請や固定資産の減免、コロナ延長などといった国の政策を極力使えるようにご提案をしてきました。

ただ、全体としては状況の厳しい会社は思ったよりも増えていない気がします。業界によりますね。一部の業界以外の会社は決算の数字もそんなに悪くないような状況です。

――ウェブでのミーティングが増えたということですが、一方で対面のよさもありますよね。クライアントとの関係では、どのように使い分けられていますか。

安岡さん ウェブは便利なもので、状況に応じてウェブで済ませようとすることもありますが、お客様によっては「ちょっとウェブミーティングだけで済ませるのは・・・」という方もいらっしゃいます。

特に、「コンサルティングを半年や1年で終わらせます」というようなスポット案件の場合は、おそらくウェブだけという仕事の進め方はあまりなく、対面で話す機会が多いですね。細かい要望や空気感、反応をお互いに感じるためにも、対面でのほうがスムーズな場合が多いです。

一方で、顧問契約の場合は、お互いの関係性ができていて、しかも毎月やることが決まっているので、今は訪問しないでウェブミーティングでやり取りしている会社のほうが多いと思います。

この流れは、もともと徐々に変わりつつあったなかで、コロナを契機に加速したという印象です。今後も、また以前のやり方に戻るというわけではなく、ウェブも対面も両方とも必要なので、並存していく方向です。

これまでのキャリアについて聞いてみよう!

――ところで、安岡さんが会計業界で働くことになったきっかけは何ですか?

安岡さん 新卒で就職活動をするときは何も考えず、「とりあえず大きいところに」と考えて大手保険会社に入社したのですが、入ってみたら、自分の専門性に疑問を感じました。はじめは人事部に配属されて新人研修や支社の事務を担当し、その後、個人営業を都内や地方で3年くらい担当し、いろいろな部署に配属されるので「自分の将来像をイメージできない」と感じたんです。

50代の自分が何をやっているかがわからなくなって、「自分に専門性を身につけたほうがいいんじゃないか」と思い、「じゃあ、何をするか?」と考えました。保険会社だったので、保険と税は必ず絡みますし、中小企業のオーナー様のところへ営業に行けば、「じゃあ、税理士に確認する」と言われることが必ずあるんですね。

そういう経験を通して、「税理士というのはオーナーさんからとても信頼される立場の人なのだ」ということがわかってきて、「そっちサイドに自分も行ってみよう」と思ったことがきっかけです。

新卒のときには、「税理士」という名前ぐらいは知っていたかなという感じだったと思いますが、選択肢にはまったくありませんでした。保険会社に勤めていた当時は、ファイナンシャルプランナー(FP)の資格ができた頃で、会社から言われてFPの勉強をして、「こういう勉強もあるんだ」という流れできちんと認識したように思います。

――資格のことを知るきっかけは本当に人それぞれですよね。

安岡さん そうですね。保険会社に8年勤めて、税理士を目指すことになったので、スタートが遅いんです。だから、「もっと早く知っておけばよかったな」と思うこともありますよ。

私の場合、保険会社に勤めているときに、働きながら勉強を始めて、会社を辞めて退路を絶って税理士試験に挑戦しました。会計業界の経験がゼロで、他業界からの転職という経験があるので、個人的には、採用のときなどにも他業界からチャレンジする人も、積極的に応援してあげたいと思います。

求める人材と組織の魅力について聞いてみよう!

――特に注目されている業界の出身者はいらっしゃいますか。

安岡さん やっぱりITに強い方ですね。我々も、システム面を強化しなくてはいけないということで、「情報システム部」という部署ができました。実は、この分野は数年前まで派遣の方が何人かいらっしゃるという程度だったのですが、今や10人弱程度のメンバーによる組織ができあがるほどになっています。

この部署のメンバーは、税務の勉強をしている人や税理士ではなく、完全にシステム専門の方ですが、流れとしてはそういう状況なので、やはり我々税理士もITリテラシーが低いとだめですね。

特に、これだけコロナで在宅勤務やペーパーレス、AIやIoT、DX(デジタルトランスフォーメーション)といった言葉が飛び交うと、それに対応できない人は、今はまだ大丈夫ですが、あと数年でいらない人になってしまうのではないかと思います。

我々税理士もITリテラシーが求められるようになってきているので、ITやシステムの知識があり、税務の知識もある方であれば、かなり重宝がられるのではないかと思います。

――人材育成で心がけていることはありますか?

安岡さん 「自分の若い頃と一緒に考えてはいけない」ということを考えています。

私の若い頃は叱られて成長するということがありましたが、今はパワハラといったこともあり、叱るということ自体がタブーになっている感じがします。

今は、「どうすればその人のよいところが表に出て、よいところが伸びるのか」といった視点で、個人個人の能力をいかに伸ばすかを考え、実際に自分の目で見て、助言やマネジメントをするようにしています。

また、部長の席というと大抵の場合、いわゆるお誕生日席になっていますよね。コロナによって、ただでさえ職場での日常会話がままならないのに「コミュニケーションが取れていないのではないか」という危機感があって、メンバーと同じ席に座って仕事をするようにしました。普段のメンバーがどういうことを思って、何を考えて仕事をしているのかというのを、近くで知りたいなというのがあるので。

やはり、普段の会話が聞こえてくる、自分の隣で同僚同士の会話が聞こえてくる、というのは大きいですね。メンバー同士が何をしゃべっているかわからないのは、何事にもよくないと思います。上司の立場としては、聞こえているほうがいいですよ。

――「長く働ける組織」としての山田&パートナーズの魅力は何ですか?

安岡さん 入社して13年目になりますが、「組織が大きい」というのは、長く働ける要素の1つだと個人的には感じています。

やっぱりメンバーも多いですし、それだけ多様なメンバーとの接点が持てるということです。弁護士法人がありますから、弁護士とすぐ会話ができて、問題解決ができるということもあります。他にも、公認会計士もいますし、専門業務に特化したメンバーもいます。幅広いメンバーがいれば刺激にもなるので、まだまだ自分が成長しなくてはいけないなと日々実感できる部分があります。

あとは、業務がそれだけ幅広くあるということです。大きな案件でも、チームワークを通して仕事をすることができます。日々、自分が経験したことのない案件が出てくるというのは、やはり大きな組織ならではだと思います。

山田&パートナーズのよいところは、しがらみがないことですね。わりと自由です。創業40年目と歴史がわりと浅いので、日々いかようにでも変わっていくことのできる組織です。長く働く人にとっても働きがいのある職場ですし、成長意欲のある新しい人にとっても活躍できる風土があります。お互いがそれぞれうまく融合している環境だと思います。

特に、最近は働き方も多様化しています。時短や時差出勤、在宅勤務などといった働き方にも当然対応しています。個人事務所とは違って、最後この人が決断するという人がいないので、その意味では変化に対応しやすいのではないかなと思いますよ。

今後の展望について聞いてみよう!

――これからの会計業界をどのように見ていらっしゃいますか?

安岡さん 税理士法人ですから、社会からの「適正な申告を行う」という要請に対して、きちんと責務を果たす必要があります。

これだけ変化が激しい時代なので、今後も「もっと早く効率的に申告、決算業務ができないか」といったようなあらゆる要望を、業界としても、また法人としても、受けるでしょう。

そんななか、私が1つ懸念しているのは「人材の不足」ですね。これだけ税理士試験を受ける人数が減っているというのは将来的に不安です。

以前、『だから、会計業界はおもしろい!』(山田淳一郎編著、中央経済社)という書籍を出したときに、当社創業者である山田淳一郎は「会計業界に魅力がないと見られているから、みんな試験を受けないのではないか」といったことを言っていました。

山田&パートナーズの仕事はこれからも増えると思いますし、やり方によってはもっと大きなことにも挑戦できるでしょう。

ただ、一方で、私個人としては、会計や税務は「個人や法人の経済活動を支える立場なので、会計業界だけが成長することはない」のですから、個人や法人が発展・成長していくことが前提のうえで、我々は成り立っていることを忘れてはならないと思います。

そして、社会からの要請である「適正な申告業務を行う」という税理士の原点に返れば、この制度を次の世代の人たちにもきちんと引き継いでいきたい。そうすれば、知識を活かして、もっと世の中の役に立つことができます。ですが、今それを担ってくれる人たちが少なくなっているのではないかという感覚を受けています。

会計業界に身を置くものとしては、この業界の魅力を伝えていかないといけないなと、危機感とともに責任も感じています。

〈お話を伺った人〉
安岡 喜大(やすおか よしひろ)
税理士法人山田&パートナーズ ソリューション事業部部長・パートナー・税理士
1997年、大手生命保険会社に入社。約8年間にわたり、人事部、営業所長等の職を務める。その後、2005年に会計事務所に転職。2009年に税理士法人山田&パートナーズに入社。2014年にソリューション事業部を立ち上げ。2019年よりパートナー就任。


【税理士法人山田&パートナーズ社員インタビュー】
File1:安岡 喜大「次の世代を担う人たちへ 税理士の仕事はこれからも社会に求められる」
File2:川村理重子「専業主婦から税理士へ! たくさんの仲間に支えられた働きながらの受験と大学院生活」
File3:井上 弘美「在宅勤務で子育てと両立! 税理士の資格は「長く働き続ける仕事」が魅力」
File4:土田 裕規「証券マンから会計業界へ! 公認会計士が「税理士法人」を選んだ理由」
File5:岩﨑 理恵「ロサンゼルスオフィスで奮闘した4年間! 帰国後も、税理士として日米の架け橋になる」
File6:山田 知佳「新卒で会計業界へ! 神戸⇄東京の「部門間交流」で得た経験を後輩たちにも伝えたい」
File7:阿部 佑大「自分の3本柱を意識! 地元・仙台で”お客様の近くにいる”存在になりたい」
File8:松田紗貴子「将来は海外で働きたい! 働きながらの受験生が活躍できる業界・組織の魅力」



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