税理士・税理士受験生の就職/転職/独立はどうしてる? -気になる年収も【インタビュー】


この記事は、『会計人コース』2020年4月号の特別企画「未来をイメージする 税理士のキャリアプラン」を編集部にて再編集したものです。

税理士の資格取得をめざして学習に励んでいる読者のみなさん、「自分はどんな税理士になりたいか」を考えていますか? 

学習を始めたときには何かしらの将来像を描いていたことでしょう。ただ、実際にキャリアを積んでいくとどのようなことが課題となるかについて、想像することも難しいのかもしれません。

そこで、イメージする将来像を実現するためにどのようなキャリアプランを考えればよいのか、人材紹介のプロであるジャスネットコミュニケーションズ株式会社の小山満也氏にアドバイスをうかがいました。


税理士業界の求人状況は?
~特に若い税理士に門戸は広い


-税理士業界の求人の状況を教えてください
小山さん:受験生や合格者が減っていますが、企業の数が激減しているわけではないことを考えると、求人数自体は高止まりしている感じです。中小でも税理士法人化している事務所数は10年前に比べるとかなり増えていて、大手でなくても上場会社を扱っていたりM&Aや国際税務をしていたりなど、やっている仕事は大手と比べても遜色がないようになってきています。
そのことから中小でもビッグ4の大手と変わらない年収の求人は増えています。どういう仕事をしたいのか、どういうお客様を相手にしたいのか、ということと、それに見合う経験値があれば、比較的希望するところへ行きやすい売り手市場の状況だと思います。税理士の方にとっては転職しやすい、選びやすい状況ですね。

-転職にあたって求められるものは、やはり経験でしょうか。
小山さん:年齢とのバランスによりますが、科目合格者を含めて20代の税理士は少ないので、20代であれば未経験でも就職しやすいです。
30代でも、スタッフクラスであれば以前に何をしていたのかということはあまり問われません。中小規模・零細規模の企業相手の一般的な税務であっても、数年の経験があれば門戸は広いですね。
20代、30代であれば、かなり道は開かれています。40代、50代となってくると、例えばM&Aや上場会社の税務などの経験が求められてきます。マネージャークラスの求人では、そういう目は厳しくなりますね。


税理士に求められるもの
~事業会社で働くことの理想と現実


-税理士に求められるもののトレンドはありますか。
小山さん:税理士法人や会計事務所の求人は常に一定数以上ある一方で、事業会社でも税務の専門家を求める声が増えてきました。
以前は事業を海外展開しているのは大企業だけでしたが、今はネット等を活用して小さい企業でも簡単にグローバルに展開できますので、企業規模が小さくても海外の売上比率が高い会社もあります。そうすると移転価格税制とか、BEPSとか、国際税務に対する社内ニーズが高くなります。
税理士法人と相談しながらやることもできますが、業務内容も複雑化・専門化していますし、金額も大きくなりますから、そういうリスクがわかる人材が社内にほしいということがあると思います。
それと英語ができる税理士も求められています。税理士さんで英語の得意な方は少ないので、企業からは引手あまたになりやすいですね。

-企業の中で税務の専門家へのニーズはなかったのですか。
小山さん:あるとしたら大企業で経理部門の中の税務担当、というイメージだったでしょうね。最近は数人の経理の中でも税務のわかる人がほしいというニーズは増えています。税務だけでなく会計もやることにはなりますが。


-税理士の側では企業の中で働くことについて、どう受け止めているのでしょうか。
小山さん:「行きたい」という方は多いですよ。会計事務所で働いていたけど、腰を据えて事業会社で働きたいというご相談はけっこう受けます。
早い段階でのキャリアチェンジであれば選択肢は多いですが、20代から会計事務所で働いていて40代で事業会社へとなると、難しくなりますね。長年その企業で働いている人たちをマネジメントするという経験値がないですから、資格があっても経験のない税理士が上司になると部内のバランスが崩れてしまいます。
ですから、マネージャーや管理職として入るよりも、スタッフとして入って知識や経験を活かして早く昇進する、というステップがいい流れでしょうね。企業側にもそうなってほしいという期待があるんだと思います。
そういう意味でも20代、30代を想定した求人が多いですね。こういう状況なので、経験豊富な方は事業会社への転職を希望していても、税理士法人や会計事務所への転職に切り替えることが多くなっています。


税理士の転職成功率は高い
~高い意識があれば働き方は多様


-ご相談に来られる方の年齢層は。
小山さん:ほんとに幅広いですよ。20代後半の方から、60代の方もいらっしゃいます。会計事務所から税理士法人などへ移る方もいれば、事業会社での経験はあるけど違う経験をしたいという方、あるいは独立してやっていても経済的に安定しないので就職したいという方もいます。
逆に今までは勤務していたけど独立したいので非常勤としてスポットで仕事しながらお客さんを増やしていきたいという方もいらっしゃるなど、内容も年齢も多岐にわたります。


-非正規の求人はどれくらいあるのですか。
小山さん:あるクライアントに対してM&Aなどの大きなプロジェクトが生じた場合に、その間だけ手伝ってほしい、というようなケースはあります。ただ、そうなると経験のある人にしか声がかからなくはなりますね。
転職とは離れますが、独立と並行して収入を得ながら働く派遣という道を選ぶ方もいらっしゃいます。ただ申告業務などは派遣ではできませんので、あくまで経理のお手伝いという形になります。


-税理士が転職する場合の年収や待遇の相場は。
小山さん:ピンキリですが、一般的に大手の税理士法人のマネージャークラスで1,000万、シニアで600万から700万、スタッフで500万あたりだと思います。中堅法人でも高い顧問料が取れるようなところは同じくらいですし、税理士法人の業界では極端に差はつきません。
事業会社では、CFOなら1,000万を超えるような求人もありますし、未経験のスタッフなら400万くらいからになります。経験者であればスタッフでも500万から700万くらいの求人はけっこうあります。若くてもそれなりの年収が得られる環境にあるといえると思います。
税理士というと小さい事務所で徒弟制度のように低い給料でこき使われるというイメージがあるかもしれませんが、そのような所は人が採れませんから、全体的に年収の相場は上がっています。過度な残業があったり極端に忙しい事務所も敬遠されますから、働きやすさは改善されていますね。
かつては、残業が多すぎる、人間的な生活がしたい、給料が低すぎる、というのが、退職理由の上位を占めていました。最近はそういう理由は減ってきましたね。


-辞める理由が前向きになってきたということでしょうか。
小山さん:そうですね。いやだから辞めるというのではなく、もっと大きいお客様を担当したいとか、コンサルティングに力を入れているところでやりたいとか、こうしたいから辞める、という人が増えています。しかも、求人はたくさんありますので、それが実現しやすい環境でもあります。
AIの影響などがいわれていますが、入力や記帳代行だけをやっているのではなくて、税理士としての付加価値をつけたいと考える人は増えていますし、そういう意識を持っている人の仕事はなくならないと思います。お客様に対して相談や提案ができたり、単純業務ではないところが税理士に期待されているからこそ、高い年収も得られるのでしょう。
AIに取って代わられるかのようにいわれることが、税理士の受験生の減少につながっているのかもしれません。でも、ご相談を受けて転職が成功している率でいうと、税理士の方が会計士より高いです。ですから資格の人気が陰っていることと、世の中で求められていることとの間にギャップがあるように感じます。


-税理士が求められるのは税務に詳しいからでしょうか。
小山さん:例えば中小零細企業で経理は税金を納めるためだけにしていて、どれが交際費になるのかとか、そういうことだけやっているのであれば、そんなに専門性はなくてもいいですよね。
求められるのは、一定規模以上の会社で、海外との取引があるとか、M&Aがあるとか、複雑化した取引の税務処理や解釈といったところです。


本誌ではこのほかに、地方の状況や税理士法人/個人事務所/事業会社ではたらくことのメリットや、実際に転職する際の留意点、成功する人に共通する特徴などを伺っています。ご購入はこちらから。

【お話を伺った人】
小山満也
ジャスネットコミュニケーションズ株式会社 紹介事業部長
公認会計士試験の受験勉強中に、創業者であり当時の社長であった公認会計士と出会い入社。人材派遣を経て人材紹介部門で1,000人を超える求職者との面談を通じ、支援を行う。


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