【『財務会計講義』を読もう!】第2回:自己株式


長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)

【編集部より】

税理士試験の財務諸表論、公認会計士試験の財務会計論。
「計算は得意だけど理論はニガテ」という受験生の方は多いですよね。

理論が得意になるためには、個々の論点をただ暗記するのではなく、隣り合った論点を「総合的かつ横断的」に理解することが大事です! 
その1つの学習方法が、基本書を使って、キーワードをもとにさまざまな箇所で解説されている内容を横断的に押さえること。

本連載では、長島正浩先生(茨城キリスト教大学経営学部教授)に、代表的な基本書である『財務会計講義』(桜井久勝著)の索引を手がかりに、「総合的かつ横断的」な理解に不可欠な論点を解説していただきます。

ぜひ理論の得点アップにお役に立てください!

専門用語について考えてみる

第2回のテーマは、「自己株式」 。

えー、2回目にしてもう難しい言葉が出てきた! ここで難しいと感じるのは、日常的にあまり聞いたり読んだりしていないから。すなわち馴染みのない言葉が出てくると、われわれはそう思うのである。

たしかに経済新聞を見てても「自己株式」って出てこないんだよね。一応、その新聞のウェブ記事検索で「自己株式」を調べてみたところ、1,933件ヒットしたが、ほとんどが「ただし、自己株式を除く」ということで、直接的な「自己株式」の記事は見当たらなかった。

そこで、中学時代の悪友Aの勤めている会社が従業員持株制度を実施していることを思い出したので、Aに電話して聞いてみた(この年齢になってもオマエ・オレで呼び合う仲)。

今度は「自社株」で検索してみた。10,594件のヒット。その多くが「自社株買い」として使っている。このように、会計の専門用語(自己株式)が、必ずしも新聞などで使われる業界用語(自社株)と一致するとは限らないのである。

しかし、われわれは『財務会計講義』を毎日読み、会計の専門知識を身につけ、税理士試験・公認会計士試験の会計学に関する専門的な問題に対して、専門用語を使いこなして解答し、合格点をいただくことが重要なのである。

それでは、今月も連載のコンセプトに沿って、『財務会計講義』で「自己株式」とある部分を抜粋してみよう。

索引を見てみよう

第1回と同様、お手元に『財務会計講義』がある人は、該当ページを確認していただき、今は手元にないという人は、学習ポイントだけでも眺めていただければ十分である。

索引を見てみると、「自己株式」は、p.95、p.262の2箇所のみにあった。

p.95

【内容】
会社がいったん発行した自社の株式を取得して保有しているとき、その株式を自己株式または金庫株という。自己株式は資金調達時に発行した株式の買戻しであり、資本の減少を意味するから資産とせず、貸借対照表の株主資本から控除する形式で記載する。

【学習ポイント】
なぜ、第3節「有価証券」のところで自己株式が登場するのか。自己株式は有価証券ではないのか。金庫株と呼ばれるのはなぜか。

p.262

【内容】
自己株式の取得は、資本調達のために発行した株式の払戻しと同様の効果を生じ、資本充実に反して債権者の権利を害する等の理由で、日本では長らく原則として禁止されてきた。

自己株式の本質については、資産説と資本減少説(資本控除説ともいう)があるが、会社計算規則(76条2項)も自己株式に関する会計基準(7項)も、これを貸借対照表の株主資本からの控除項目としており、資本減少説に立脚している。

【学習ポイント】
企業会計基準第1号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準」の規定を学ぶ。資産説と資本減少説、それぞれに立脚した会計処理を押さえる。

次ページ「自己株式とは何か?」


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