12月18日に令和2年(第70回)税理士試験結果が公表されました。
簿記論は、受験者数10,757人、合格者数2,429人で、合格率は22.6%(昨年は17.4%)と大幅に合格率がUPしました。
とはいえ、令和3年(第71回)の試験に再チャレンジされる方も多いと思われます。
そこで、会計人コースWebでおなじみの穂坂治宏先生(税理士)に、来年の試験に向けた勉強のヒントをお伺いいたしました。
令和2年(第70回)の出題内容と合格率
――今年は、ずいぶん合格率がアップしましたね。この数字について、先生はどのような印象をもたれていますか?
合格率、高かったですね~。
簿記論では、過去最高じゃないでしょうか。
これまでの試験では、試験問題の難易度と合格率は必ずしもリンクしていなかったように思います。
つまり、難易度が高くても、合格率が高かったり、その逆も多い印象があります。
でも、今年の本試験は問題も比較的解きやすく、そして合格率も高かったですね。
これは後ほどお話ししますが、基礎的な学習を重視すべきという勉強の基本方針が明確になったと思います。
令和3年(第71回)に向けて、当面どのように勉強すべき?
――では、令和3年(第71回)の試験に挑む受験生は、当面どのように勉強していけばよいでしょうか?
以前は、第1問・第2問について、非常にクセのある問題をよく見かけました。
しかし、近年は非常にオーソドックスな問題になっています。
それだけに、多くの受験生が解ける基礎力が合否を分けると思います。
つまり、「徹底して基礎を固めて、解く精度を上げる」ことがより重要になりますね。
すでに公表されている第70回(令和2年)の「出題のポイント」でも、第3問に「基礎的な仕訳並びに計算技術の達成度を問うている」とあるように、試験委員も基礎を重視していることは明らかです。
では、その「基礎」とは具体的にはどのレベルかが問題ですが、これはテキストの例題レベルを1つの目安にしてみましょう。
ここに穴がないか3月、遅くとも4月頃までに、もう一度仕訳レベルから徹底的に見直すとよいと思います。
――その際に注意すべき点はありますか?
税理士試験の受験生は、詰め込み型の勉強をされる方も多いですが、詰め込み型の勉強は忘れるのが非常に早いです。
なぜすぐ忘れるか?
それは、理解していないことが原因ですね。
問題を解くことはもちろん重要です。
でも、これも「出題のポイント」に「……の理解を問うものである」という表現が多数みられるように、単に仕訳ができる・問題が解けるようになればよいのではなく、なぜそうなるかきちんと理解することが大事。
問題を解くのも、その理解を確認するためであって、問題を解けるようにするためではありません。
本試験以外のすべての問題は、理解確認用の素材にすぎないのです。
「間違えたら、なぜ間違えたのか、そしてどうすれば間違えないようになるか考える」というスタンスで問題を解くようにしましょう。
そうすれば、簡単に忘れませんね。
――これから年末年始を迎えますが、アドバイスをいただけますか?
例年の年末年始は、帰省や初詣などのイベントもあって、勉強に身が入らない場合も多いので、勉強場所を確保するなどの工夫が必要でしたが、今度の年末年始は、幸か不幸かコロナ禍で外出しないで家にこもる方も多いでしょう。
仕事をしながら受験される方は、まとまった勉強が集中的にできるのは年末年始とGWぐらいしかないですよね。
ましてや、会計事務所や経理部などにお勤めの方々は、確定申告や3月決算でますます忙しくなると思います。
この年末年始をぜひ有効に活用して、令和3年(第71回)の本試験に向けてスタートダッシュを切ってください。
――お忙しい中、どうもありがとうございました。
<お話を聞いた人>
穂坂 治宏(ほさか・はるひろ)
税理士 受験指導に情熱を燃やすカリスマ講師
これまで簿記論・財務諸表論の合格者を多数輩出。主な著書に『新なるほど合格塾 日商簿記3級』、『同・2級商業簿記』、『同・2級工業簿記』(中央経済社)、『税理士財務諸表論 穂坂式つながる会計理論』(ネットスクール)などがある。