【「並木流」会計用語辞典】第3回:企業会計原則の誕生



「会計人コースWeb」でおなじみの並木秀明先生が、会計用語や勘定科目について、多様な視点を踏まえて、ゆるりと解説する連載です。


並木秀明
(千葉経済大学短期大学部教授)

企業会計原則の誕生

まず企業会計原則が生まれる前、昭和23年(1948)に証券取引法(現在の金融商品取引法)が制定された。そこでは、「貸借対照表、損益計算書その他……は……一般に公正妥当であると認められるところに従って内閣府令で定める用語、様式及び作成方法により、これを作成しなければならない。」という規定がなされた。

その後、昭和24年(1949)に企業会計原則が「企業会計の実務の中に慣習として発達したものの中から、一般に公正妥当であると認められたところを要約したもの」として誕生した。下線部は、今後会計を学ぶのであれば覚えておこう。

続いて昭和25年(1950)、企業会計原則に従って処理(仕訳)された結果をどのような形式(様式)で貸借対照表や損益計算書として報告するべきかという表示面を規定する「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則~財務諸表等規則」が定められた。

ただし試験で出題されるのは、処理面を規定した「企業会計原則」である。この企業会計原則は、「本文」規定「注解」規定からなり、さらに本文規定は一般原則損益計算書原則および貸借対照表原則からなる。

一般原則~初学者に一番難しいといわれる理論

一般原則は企業会計原則の全体理解にかかわる基本的な原則であり、7つの原則(真実性の原則、正規の簿記の原則、資本取引・損益取引区分の原則、明瞭性の原則、継続性の原則、保守主義の原則、単一性の原則)で構成されている。

この一般原則を読むと、「解説などいらない当たり前の内容が規定」されている。当たり前のことというのは、「頭では理解できるが書けない(言葉にできない)」ものである。とはいうものの説明できないと試験に対応できない。そこで今回は、全体を統括する一般原則のうち真実性の原則をみていこう。

真実性の原則

企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。

財政状態は貸借対照表により、経営成績は損益計算書により報告される。その報告は「真実」でなければならない。当たり前のことを規定している。これは説明の仕様がないと感じれば常人であろう。

真実性の原則を理解するためには仕訳が適当である。たとえば、以下の備品を取得した。

取得原価 10,000(単位省略)
耐用年数 5年
残存価額 0千円
定額法の償却率 0.2
定率法の償却率 0.4

定額法の仕訳

(借) 減価償却費 2,000 (貸) 減価償却累計額 2,000

定率法の仕訳

(借) 減価償却費 4,000 (貸) 減価償却累計額 4,000

このように定額法と定率法では、貸借対照表の備品の表示金額も損益計算書の減価償却費も異なる結果になる。それでは、どちらの結果が「真実」なのか。両方とも「真実」である。

「企業会計原則注解」では、減価償却の方法を以下のように規定している。

定額法
固定資産の耐用期間中、毎期均等額の減価償却費を計上する方法

定率法
固定資産の耐用期間中、毎期期首未償却残高に一定率を乗じた減価償却費を計上する方法

級数法
固定資産の耐用期間中、毎期一定の額を算術級数的に逓減した減価償却費を計上する方法

生産高比例法
固定資産の耐用期間中、毎期当該資産による生産又は用役の提供の度合に比例した減価償却費を計上する方法

定額法、定率法、級数法、生産高比例法のすべてが「企業会計の実務の中に慣習として発達したものの中から、一般に公正妥当であると認められたところを要約したもの」に該当する。

真実性の原則でいう「真実」とは、神のみぞ知る唯一の真実(絶対的真実)ではなく、一般に公正妥当と認められた方法を採用した結果であれば、すべて真実(相対的真実)とされるのである。

商品の評価も、個別法に先入先出法、平均法など、公正妥当な方法が複数あり、減価償却費の計算も、上記のように4つの公正妥当な方法がある。これらの組み合わせの数だけ「真実」な財務諸表が作成されるのである。

経理自由の原則

真実性の原則と合わせて、経理自由の原則も覚えておくといい。一般に公正妥当と認められた方法であれば、企業にその会計処理の自由が認められている。業種、会社の規模、会社の方針など、その企業にとって最適な方法が存在するはずであるから、複数の代替的な方法が認められているのである。

<執筆者紹介>
並木 秀明
(なみき・ひであき)
千葉経済大学短期大学部教授
中央大学商学部会計学科卒業。千葉経済大学短期大学部教授。東京リーガルマインド講師。企業研修講師((株)伊勢丹、(株)JTB、経済産業省など)。青山学院大学専門職大学院会計プロフェッション研究科元助手。主な著書に『はじめての会計基準〈第2版〉』『日商簿記3級をゆっくりていねいに学ぶ本』『簿記論の集中講義30』『財務諸表論の集中講義30』(いずれも中央経済社)、『世界一わかりやすい財務諸表の授業』(サンマーク出版) などがある。

バックナンバー
第1回:日本の会計の始まりとカオス
第2回:会計用語の始まりは会計公準?


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