全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる!
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。
長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)
まずは問題にチャレンジ!
固定資産の減損とは,資産又は資産グループの( ① )により( ② ) の回収が見込めなくなった状態であり,減損処理とは,そのような場合に,一定の条件の下で( ③ )を反映させるように( ④ )を減額する会計処理である。
問題1
文中の空欄( ① )から( ④ )にあてはまる適切な用語を示しなさい。
問題2
ここでの「資産又は資産グループ」とは何を指すか,説明しなさい。
問題3
減損処理された固定資産は,何によって評価されているか,用語を答えなさい。
解答
問題1
① 収益性の低下
② 投資額
③ 回収可能性
④ 帳簿価額
問題2
企業が保有する固定資産で、他の固定資産から概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位をいう。
問題3
回収可能価額
基本的な考え方
・減損の兆候とは、固定資産に減損が生じている可能性を示す事象である。
・回収可能価額とは、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額をいう。
・減損の兆候がある資産又は資産グループについて、それから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合に減損を認識する。
・減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失とする。
・減損損失は、原則として、特別損失とする。
論述問題にチャレンジ!
正味売却価額とは?
正味売却価額とは、資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される金額をいう。
使用価値とは?
使用価値とは、資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値をいう。
減損処理と臨時償却の違いは何か?
臨時償却が予見することができなかった原因等による耐用年数の短縮や残存価額の修正に基づいて一時に行われる減価償却累計額の修正であるのに対して、減損処理は収益性の低下を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理である。
なぜ減損損失の戻入れは行われないのか?
減損の存在が相当程度確実な場合に限って減損損失を認識及び測定することとしていること、また、戻入れは事務的負担を増大させるおそれがあることなどから。
減損処理を行った資産の貸借対照表表示は?
減損処理前の取得原価から減損損失を直接控除し、控除後の金額をその後の取得原価とする形式で行う。ただし、当該資産に対する減損損失累計額を、取得原価から間接控除する形式で表示することもできる。
〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。
※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。
〈バックナンバー〉
第1回:キャッシュ・フロー計算書
第2回:1株当たり当期純利益
第3回:金融商品会計①
第4回:金融商品会計②
第5回:金融商品会計③
第6回:棚卸資産会計①
第7回:棚卸資産会計②
第8回:収益認識会計
第9回:固定資産会計①