長寿企業から学ぶ勉強法


大鹿智基
(早稲田大学商学部教授)

立ち止まることはリスク

新型コロナウィルス感染症の影響で、受験生の皆さんの多くに影響が出ているだろう。しかし、試験が実施されるかぎり、必ず合格者が存在する。現下の状況を嘆いていても解決にならないし、他の受験生が勉強をしている間に立ち止まっていれば置いていかれてしまう。長寿企業やサステナビリティをキーワードとして研究している研究者として、2つのアドバイスをエールとして送りたい。

「守ること」と「変わること」の両立

日本には、世界最古の企業とされる金剛組(578年創業)を筆頭に、数多くの長寿企業が存在している。創業200年以上を「長寿」と定義すると、世界の長寿企業の半数以上は日本の企業である。それらの企業の共通する特徴は、「守るべき伝統は守り、時代に即して変わるところは変わる」に尽きる。
 
公認会計士試験については試験の日程変更が、税理士試験についても受験票の郵送延期が発表されていて(2020年6月14日現在)、今後どうなるかわからない。将来的には、試験の実施方法が変わるかもしれない(世界の大学ではオンライン試験の導入が相次いでいる)。しかし、出題者が「試験で問いたいこと」の本質に変化はないはずである。その軸を見失わず、小手先のテクニックではない勉強を続けてほしい。「暗記する」のではなく、「理解する」ことが肝要と思われる。

「試験合格」をゴールにしない

新型コロナウィルス感染症の影響で、私たちの生活の仕方は大きく変わろうとしている。公認会計士や税理士についても、在宅勤務の増加や、ITへの依存度を高めた業務処理プロセスへと、仕事の仕方が変わっていくだろう。この流れを止めることはできないし、止めるべきではない。
 
サステナビリティを維持している企業は、将来に対する視点を有している。ここ数年の研究成果として、企業の租税回避行動が長期のサステナビリティに結びついていないことが示唆されている。租税回避行動は、短期的には、税引後利益を高くするが、将来にわたっての中長期的な利益の持続性は維持できていないようである。すなわち、近視眼的な行動は実を結ばないのである。受験生の皆さんにとって、試験合格が大切であることは言うまでもないが、そこをゴールにするのではなく、中長期的なキャリアプランをイメージしながら、将来への投資になるような学習をしてほしい。


事態の一刻も早い収束と、皆さんのご健闘を祈念しています。

<執筆者紹介>
大鹿 智基
(おおしか・ともき)
早稲田大学商学部教授
1976年東京生まれ。1998年早稲田大学商学部卒業、2000年同大学院商学研究科修士課程修了、2001-2002年シカゴ大学経営大学院留学、2004年早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得。2000年早稲田大学メディアネットワークセンター助手、2004年早稲田大学商学部専任講師、2007年同准教授、2014年より現職。現在、日本会計研究学会評議員、日本管理会計学会常務理事・学会誌常任編集委員、日本経済会計学会理事・学会誌編集委員等を務める。
主な論文に、「CO2排出量の株価説明力と情報開示の影響」共著、『会計プログレス』第12号、2011年(日本会計研究学会賞受賞)、Visualization of Tax Avoidance and Tax Rate Convergence, Meditari Accountancy Research, Vol.27, No.5, pp.695-724,2019年10月(with C. Saka, and M. Jimichi),Does Tax Avoidance Diminish Firms’ Sustainability?,Journal Global Policy and Governance, Vol.8, No.2, pp.95-114,2019年12月(with C. Saka, and M. Jimichi)ほか多数。


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