会計の専門家としての矜持をもとう!


高橋 賢

1 コロナ禍で「自称専門家」が増えている

 最近,テレビをはじめとしたメディアは,新型コロナウイルスの話題一色です。
 感染症の専門家を名乗る大学教授,政府・自治体の政策に詳しいと自称する政治評論家などが,連日ワイドショーに出演していろんなコメントをしています。

 彼らの発するコメントには,「なぜその立場でそういうことが気安く言えるんだろう?」と首をかしげたくなるものも少なくありません。
 本当の専門家でもない有象無象の無責任な発言が,必要以上にパニックを煽っていることも否定できないでしょう。

 新型コロナウイルスの正体がまだよくわかっていないため,「専門家」といえる資格のハードルがずいぶん低くなっているように感じます。

2 今、「職業会計人」は会計の専門家として何をすべきか? 

 会計の世界には,「職業会計人」という人たちがいます。
 資格試験に合格したことで,「専門家」としてのライセンスを与えられた人たちです。
 また,会計の世界には,知識の習得度を表す検定試験もあります。
 「専門家」を名乗るための要件は比較的明確にあるようです(もちろん,資格試験や検定試験だけが会計の世界で専門家を名乗るための要件ではありません。念のため)。

 では,会計人は「専門家」としてこの国難とも言える状況で何ができるのでしょうか?
 それは,会計の専門的知識をもって,企業の状況を正確に把握・記録し,測定し,分析・解釈し,企業の経営状態改善のための処方箋を書くことでしょう。

 たとえば,現状喫緊の問題は,企業の資金繰りでしょう。
 資金繰り表・資金計画の見直しが必要です。
 
 また,コロナショックによって,テレワークに代表されるような働き方の変化が起きています。
 これは中長期的に見ると,業績管理会計の変革を引き起こすと予想されます。
 コロナ騒動が収束してからの方がより一層問題になるかも知れません。
 何をどう評価するのか,報酬制度はどのように設計すべきか,ということが問題になってきます。
 今までとは違う業績管理会計の考え方が生まれるかも知れません。

 会計人は,今ここにある危機の回避と,危機が去ってからの世界の変化に対応するために,会計の「専門家」として企業経営に有用な処方箋を提供しなければなりません。
 このような状況だからこそ,会計の「専門家」としてのスキルを磨いておく必要があるのです。

マンドリンを演奏する高橋先生(写真:2019年11月24日、新大久保にて)

<執筆者紹介>
高橋 賢
(たかはし・まさる)
横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授 博士(商学,一橋大学)
1968年生まれ(長崎県諫早市出身)。1991年一橋大学商学部卒業,1996年一橋大学大学院商学研究科博士後期課程単位修得退学。同年千葉大学法経学部講師,1998年同助教授、2000年横浜国立大学経営学部助教授,2004年ポワチエ大学外国人招聘助教授,2011年横浜国立大学大学院国際社会科学研究科教授を経て2013年より現職。現在,日本原価計算研究学会常任理事を務める。2005年日本簿記学会学会賞受賞(泉宏之氏,原俊雄氏と共同受賞)。会計検査院特別研究官(2013-2015年)を歴任。
<主要著書>
『直接原価計算論発達史―米国における史的展開と現代的意義』中央経済社,2008年
『テキスト原価会計』中央経済社,第1版:2009年,第2版:2015年
『管理会計の変革―情報ニーズの拡張による理論と実務の進展』共編著,中央経済社,2013年
『地域再生のための経営と会計-産業クラスターの可能性』共編著,中央経済社,2014年
『テキスト会計学講義』共編著,中央経済社,2018年
『管理会計の再構築―本質的機能とメゾ管理会計への展開』中央経済社,2019年
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