中国から見たコロナウイルスの進展


2 自宅隔離モードの旧正月にも宅配は普通に機能

自宅隔離モードの中で最も感心したのは、上海人以外が皆地元に帰省してしまう旧正月中、宅配便が通常通り機能していたことです。普段であれば、宅配を担う上海以外の人々のいない旧正月には、宅配機能は大幅に低下し、さらに、ウィルス感染への恐怖から、宅配を行う人がいなくなってしまうものと思っていました。しかしながら、ほぼすべての飲食店が閉鎖を受け、それ以外の百貨店やスポーツジムなどで働いていた人も含め、上海の人々が瞬時に宅配業務に移動し、同時に、2メートル間隔受渡し等の手法を編み出しながら、普段にもまして機能していたことに驚嘆しました。

先日日本でも宅配の需要が急速に伸び、人材募集を行っていること、さらに求職人数も増加してきているとの報道を目にしました。これらの背景には、キャッシュレスだけでなく、人材募集、宅配業務遂行等アプリの整備、基礎となるスマートフォンプラットフォームの普及があることは間違いありません。

3 この経験をどう活かすか―デジタル化と国際化に親しむ

今回のウィルス封じ込め成功後も、このデジタルプラットフォーム活用の流れは止まらず、人材の急速な流動化を推し進め、加えて、国際的な人の移動制限の長期化により、デジタル世界での国際交流も日常的なものになるでしょう。これにより、日本において長らく進まなかった外国人労働者活用という問題の解決に向けた環境整備に繋がるのではと感じています。

これらの変化に適応するためには、我々は、当面続くと予想される期間を利用して、デジタル化、国際化といった環境に慣れ親しんでおくことが重要と思われます。具体的には、テレコミュートへの心理的抵抗感を減らすことや、e-learningやwebinarへ参加を通じ世界各国の生の状況に触れておくことは、コロナウィルス終息後の社会への適用を容易してくれるものといえ、今、そのために使うことができる時間は普段よりも多めに確保されているといえるのではないでしょうか。

4 会計士受験生の皆さんへ―自分の能力を明確に示せる試験を楽しもう!

新型コロナウィルスとの戦いのなか、皆さんは会計士試験を迎えます。漠然とした不安によるストレスのもとでの学習は本当につらく、身を置いたものでしか理解できないと思いつつも、私の試験感についてつづってみたいと思います。

皆さんは、国際性豊かな会計士業界に進み、今後もGMAT等試験を受けなければならないかもしれません。ただ、一般に社会に出た後は試験というものはほぼなく、その中で自身の能力を社会に示していかなければなりません。逆に考えれば、試験ほどはっきりと自分の実力を示せる場面はほぼなくなってしまうでしょう。

従って、社会的試験とは、得点の多寡ではなく、むしろ、ある目標に対して、準備し、遂行、完了することが求めらる、ミスや体調不良等の事態にも十分に備え、これを完了(合格)するものといえるでしょう。そう考えれば、本当にやむを得ない理由でテストを受けることができなくとも、その姿勢は必ず社会のどこかで役立つでしょうし、それはテストに合格するよりもはるかに有意義であると信じています。

是非、やってきたことを信じて、公認会計士試験という自身の能力を誰の目にも明らかに伝えられる数少ない機会を楽しんでください。

<Profile>
望月 一央
(もちづき かずひさ)
MAZARS パートナー 公認会計士
1990年代より,25年以上にわたり中国上海を拠点として,日本,ヨーロッパ及びアジアの企業に対して,監査,税務,移転価格,リストラクチュアリング,M&Aアドバイザリー関連サービスを提供している。2013年に80年の歴史を有するフランス系国際会計事務所MAZARSに日本人初のグローバルパートナーとして参画し,各国における日系企業業務の統括に奮闘中。ワシントン・セントルイス大学MBA。日本公認会計士協会 租税調査会 国際租税専門委員会副委員長。
主な著書に『BEPS〈ベップス〉―動き出した国際税務基準』中央経済社、2017年がある。


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