2 金子宏『租税法』をどう読んでいけばよい?
―税法のテキストとして、多くの大学院生が手にする金子宏先生の『租税法』(弘文堂)は、まさに大学院生のバイブルといわれていますが、1200頁以上あり、相当ボリュームがありますよね。これをどう読んで研究に活かしていけばよいでしょうか?
金子 院生は修士論文を仕上げることが1つの大きな目標になりますので、個別のテーマにすぐに飛びついてしまう傾向にあります。
そうすると、法令・通達はこう規定されている、判例・裁決例はこう判断されている、文献等はこう主張しているで終わってしまいがち。
しかし、これでは研究といえるほど深い議論にはなりません。
そこで、私は修士1年生の前期は金子宏先生の『租税法』(弘文堂)、水野忠恒先生の『体系租税法』(中央経済社)等の総論部分を徹底的に読み込んで、実体法を解釈する際の土台となる基本原理を理解してもらうことに注力します。
金子『租税法』でいえば、「第1編 租税法序説」と「第2編 租税実体法」の「第1章 序説」「第2章 課税要件総論」になります。
もちろん金子『租税法』や水野『体系租税法』の解釈がすべて正しいというわけではありませんが、ここが議論の出発点になり、またこれを理解しておくと各実体法の理解も深まると思いますので、まずはこの総論部分を徹底的に理解するとよいと思います。
3 修士論文のテーマはどう選ぶ?
―最終的には、修士論文を仕上げなければいけませんが、そのテーマはどのように選べばよいでしょうか?
金子 修士論文は、テーマの選定がすべてといってよいくらい重要だと思います。
テーマの良し悪しで論文の出来も左右されるといってよいでしょう。
なお、せっかく修士論文を仕上げても、国税審議会の審査をパスしなければ意味がありません。
国税庁「改正税理士法の「学位による試験科目免除」制度のQ&A」の「税法に属する科目等」の学問領域についてを参照して、自分の選定したテーマが要件にあたるかは、指導教授と十分に相談しながら決めた方がよいでしょう。
最近では、国税審議会の審査が今まで以上に厳格になってきているとの話も聞きますので、2年間の成果を無にしないためにも、慎重にテーマを選定する必要があります。