【税理士試験】今年の簿記論はどうだった? 渡邉 圭先生が予想するボーダーラインと学習アドバイス


渡邉 圭(千葉商科大学准教授)

【編集部より】
2026年8月4日(火)〜6日(木)の3日間にわたり、令和8年度(第76回)税理士試験が実施されました。
そこで、本企画では、「簿記論」・「財務諸表論」・「法人税法」・「相続税法」・「消費税法」について、各科目に精通した実務家・講師の方々に本試験の分析と今後の学習アドバイスをご執筆いただきました(掲載順不同)。ぜひ参考にしてください!

全体的な難易度とボーダーライン

<予想ボーダーライン>
第一問 16点
第ニ問 14点
第三問 27~30点
合 計 57~60点

第76回税理士試験の簿記論は、計算問題の分量が多く、各問で難易度の高い論点が出題されました。一方で、基本的な論点も多く含まれていたため、それらをケアレスミスなく確実に得点できたかどうかが合否の分かれ目になったと考えられます。

また、集計に時間を要する問題も含まれていたため、適切な取捨選択を行い、効率よく解答を進める力も求められました。

問題構成は、第一問が本支店会計(在外支店)、第二問が有形固定資産、第三問が閉鎖残高、損益勘定、キャッシュ・フロー計算書およびリサイクリングの処理を扱う総合問題でした。

第一問の本支店会計は解答に時間を要する内容であったため、ここで時間をかけすぎると、第二問、第三問の解答時間が不足するおそれがあります。そのため、第一問に充てる時間をあらかじめ決めたうえで解答を進めることが重要であったと考えます。

以上を踏まえて、全体的な難易度B、ボーダーライン予想5760点以上、合格確実ライン予想68点以上と予想します。この点数以外に、各専門学校が公表する解答速報も参考に自己採点をしてください。

税理士試験は日商簿記検定の試験範囲外の論点も出題されます。簿記論・財務諸表論は理論などの考え方が問われます。例えば、過去問には商品売買の記帳方法の1つである分記法、小売棚卸法や特殊仕訳帳が出題されました。現行の会計基準上、削除された論点であっても、企業会計原則や連続意見書といった伝統的な会計諸原則が存在しているため、これらを踏まえて学習することをオススメします。

・本記事は問題の難易度について次のような基準を設定します。
 難しい:A 普通:B 易しい:C

〔第一問〕本支店会計(支店・本店の損益勘定と総合損益勘定の作成)

・難易度:B ボーダーライン予想16点以上、合格確実ライン予想18点以上

第一問では、本支店会計における決算整理仕訳および決算振替仕訳が出題されました。

決算整理については、支店では期末商品棚卸高、貸倒引当金、減価償却、満期保有目的債券、前払営業費が、本店では期末商品棚卸高、貸倒引当金、減価償却、社債、未払営業費が問われました。

また、支店(在外支店)の損益勘定はドル建てで解答することが求められていたため、円で解答しないよう注意が必要です。

時間配分を考慮すると、支店の残高勘定における本店勘定の金額、本店の損益勘定における社債利息および社債償還益、残高勘定における社債、繰越利益剰余金、支店勘定、さらに総合損益勘定における支店の利益額については、解答できなくてもよいと考えます。

本問は全25問で構成されているため、配点は1問1点と予想します。

上記の内容を踏まえて、ボーダーラインは16点以上と予想します。18点以上正答できていれば合格確実ラインと考えます。

〔第二問〕有形固定資産

・難易度:B ボーダーライン予想14点以上、合格確実ライン予想17点以上

本問は、有形固定資産に関する問題です。耐用年数の延長に伴う資本的支出・収益的支出の判定、総合償却、建物の取り壊し、土地の造成、建築費の計算、車両の下取り、株式と土地の交換、固定資産の減損が問われました。

時間配分を考慮すると、総合償却(平均耐用年数および減価償却費)、土地の金額、級数法による減価償却費については、解答できなくてもよいと考えます。

また、固定資産の減損については、のれんを期末帳簿価額に基づいて配分する方法は、時間配分の関係から解けなくてもよいでしょう。また、計算上別解が生じる問題も見受けられますが、解答した金額に該当した場合は正答扱いしてください。

上記の内容を踏まえて、ボーダーラインは14点以上と予想します。17点以上正答できていれば合格確実ラインと考えます。

〔第三問〕閉鎖残高・損益勘定・キャッシュ・フロー計算書の作成、リサイクリング(総合問題)

・難易度:A ボーダーライン予想2730点以上、合格確実ライン予想33点以上

本問は、閉鎖残高、損益勘定、キャッシュ・フロー計算書およびリサイクリングに関する総合問題です。普通預金、商品売買(輸出を含む)、為替予約、期末商品の評価、貸倒引当金、有形固定資産、セール・アンド・リースバック取引、その他有価証券、子会社株式、賞与、長期貸付金、人件費及び支払家賃が出題されました。

本問では、閉鎖残高および普通預金に関する資料を読み取り、各問で求められる収益および費用の金額を算定して解答する必要がありました。

時間配分を考慮すると、売上原価相当額、人件費(従業員賞与・役員報酬及び給料手当)、その他営業費、為替差損益、法人税等、法人税等調整額、国内売上、キャッシュ・フロー計算書およびリサイクリングの論点については、解答できなくてもよいと考えます。

また、第一問は時間を要する内容であったため、第三問では時間不足となり、ケアレスミスをしてしまった受験生も多かったと思われます。

上記の内容を踏まえて、ボーダーラインは27~30点以上と予想します。33点以上正答できていれば合格確実ラインと考えます。

以上のことから、全体のボーダーラインは57~60点以上、合格確実ラインは68点以上と予想します。

次回の税理士試験に向けて

ボーダーラインまたは合格確実ラインを超えていれば、「次の科目」へ
ボーダーラインまたは合格確実ラインを下回る場合は、受験科目の「復習」

自己採点の結果に応じて、9月以降の学習方針は異なります。各専門学校が公表しているボーダーラインまたは合格確実ラインを上回っている場合は、9月から開講される講座を受講し、来年度の試験に向けた学習を進めましょう。

一方、ボーダーラインまたは合格確実ラインを下回る場合は、合格発表まで応用問題集などを活用して復習を行い、習得した知識を維持することが大切です。応用問題集は、月に1冊程度のペースで取り組めば十分でしょう。また、財務諸表論をまだ学習していない方は、9月から講座を受講し、簿記論の復習と並行して学習を進めるのも効果的です。

財務諸表論は簿記論とは異なり、理論学習が必要な科目です。理論問題集は、5月のゴールデンウィークまでに一通り学習を終えることを目標に進めてください。5月以降は直前予想問題集や各専門学校の模試・答練が始まります。模試では初めて出題される論点も多いため、理論問題集が未完成のままだと学習負担が大きくなるデメリットがあります。

理論学習では、自分に合った学習環境を整えることも重要です。私も今年、消費税法を受験しました(結果はまだわかりませんが(笑))。税法の理論学習では、「経過した」と「経過する」のような文言の違いで得点が左右されます。そのため、条文を正確に暗記し、理解を深めるには、継続して学習できる時間と場所を確保することが必要でした。

私は1日10,000歩を目標にウォーキングを行い、その時間を暗記学習に充てました。10,000歩を歩くには約110~120分かかるため、毎日約2時間の暗記時間を確保できます。これを1ヵ月に換算すると約60時間、1年間では約720時間の学習時間になります。

このように、理論学習に適した環境は、受験生それぞれの仕事や生活スタイルによって異なります。合格体験記を読むと、合格者の多くが自分に合った学習方法や学習環境を確立しています。ぜひ、それらを参考にしながら、自身の仕事や生活スタイルに合わせて無理なく継続できる学習環境を整えてください。

次回の受験科目が税法科目である場合は、学習量を考慮すると、9月から講座を受講して学習を開始することをおすすめします。自己採点の結果だけで今後の学習方針を判断するのは難しいかもしれませんが、本記事がその判断材料の参考になれば幸いです。

さいごに

本試験の受験、本当にお疲れ様でした。自己採点をしてボーダーラインの方は過去の自分を褒めてあげてください。次の受験科目を受験される方は、今回の本試験で活用した学習計画を活かして、さらにステップアップをしましょう!

ボーダーライン以下の方も、合格発表まで結果はわかりません。上記の講評はあくまで参考資料ですので一喜一憂せず、過去の自分を振り返り、学習過程の反省点があれば改善策を練りましょう。私が簿記論に合格した時は、本試験で余裕がなく自己採点をするための資料を作成できませんでした。本試験中は基本的な論点が出題されたら確実に正答するように心掛けて解答を作成しました。後で振り返ると、その姿勢が良い結果をもたらしてくれたのかなと思います。

また、家庭、仕事、学業と両立しながらの受験勉強は大変だったと思います。また、猛暑も続いていますので体調を崩されないようにご自愛ください。勉強で遊びの誘いも断ってきたと思いますので、ご家族、友人とお付き合いをする時間も大切にしながら余暇をお過ごしください。!(^^)!

【執筆者紹介】
渡邉 圭(わたなべ・けい)
千葉商科大学商経学部准教授、博士(政策研究)。2012年4月から会計教育研究所(現・会計教育センター「瑞穂会」)に所属し、日商簿記検定対策3級〜1級講座、税理士試験講座(簿記論・財務諸表論)を担当。2019年4月からは基盤教育機構に所属し、上記の対策講座も兼務、2025年4月より現職。これまでに、日商簿記1級合格者190名、簿記論70名、財務諸表論45名以上(いずれも所属期間の累計者数)の合格者輩出に貢献している。


関連記事

ページ上部へ戻る